第55話 とある魔法のヒラリマントV
会議室を出て、真琴が遠目で探した戦闘指揮所へ向かおうとしていたところ、野戦服に鉄帽姿の竹内中尉と出会した。
「ちょっと、あなた達どこへ行く気?」
「戦闘指揮所へ行く途中です。南側から別の群が迫っていますね?とても危険です。新村司令に合わせて下さい。」
「えっ、何でそれを知っているの?」
「魔法で知りました。」
「!」
と、その時、俺は何か俺達に対する強い悪意を感じたのだ。
「みんな、伏せろ!」
すると突然、俺達が先程まで居た会議室の辺りが爆発音を上げて吹き飛んだ。
「「「キャーッ」」」
女の子達が悲鳴を上げてしゃがみ込む。ここで俺は皆を守る為、瞬間的に満峰山魔法研究所(仮)と共同で実験・開発した新たな魔法を使った。
「超電磁バリアー!」
まあ、いちいち口に出さなくてもいいのだけど、言葉にして言霊を術に乗せた方が術の展開が早くなり、威力も強くなるのだ。
俺は爆発が起こった方向に右手を上げて電磁波の壁を発生させ、爆発により俺達の方へ飛んでくる炎や建材の破片を弾き返した。
すると、天井からスプリンクラーの放水が始まり、同時に舞が魔法で会議室へ大量の放水を行った為、火災は瞬く間に鎮圧された。
「これも魔法なの?」
「そうです。」
「初めて見たけど、魔法って凄く便利なのね。」
魔法に対する見方はそれぞれたが、竹内中尉は魔法の便利さを評価する派のようだった。まあ、いいのだけど。
俺が展開した電磁波のバリアーが一瞬早かったため、誰も負傷しなかった。俺は何による爆発なのかと、爆発によって空いた大穴から上空を見ると、3頭のワイバーンが旋回していた。
あのワイバーンのどれかが会議室に火球を放ったのだろう。駐屯地上空の制空権はどうなっているのだろうか。上から狙われると厄介だ。
「大将、あのワイバーンは俺に任せてくれるか?」
アラン兄さんが自信有り気に顎をワイバーンの方へしゃくって言った。たが、初見でアラン兄さんが只ならぬ実力者である事はわかったが、実際に見た訳ではないので安易にうんとは言えない。
「出来るのか、アラン兄さん?」
「俺は出来ない事は口にしない主義でね。」
俺達の中でアラン兄さんを一番知るのはアーニャだ。何と言ってもアラン兄さんとアーニャは共に魔王国軍と戦っていたのだから。俺はアーニャに視線を向けると、アーニャは大丈夫と言うように大きく頷いた。ならば大丈夫だろう。
「わかった。ワイバーンは頼む。」
「ああ、任せなって。」
アラン兄さんは着ていた上着を手早く脱いで上半身裸(これが引き締まった筋肉に白い肌、所々に銀色の鱗がキラキラと輝くのだ)になると、大きく息を吸い込み、体内で魔力を増幅させる。すると、上半身の筋肉が隆起し、更に背中の両翼を一気に広げたのだ。
(デッ、デビルウィング⁉︎)
それまで小さく縮こまっていたアラン兄さんの翼は、広げる程に大きく広がり、片翼の長さが1.5m程になった。そしてアラン兄さんは抜剣し、自分の周りに周囲の気を集めると、上空へと一気に飛翔した。
高速で上昇するアラン兄さんは、忽ちワイバーンが旋回する高度に達し、ワイバーンは自らに比して小さなアラン兄さんを警戒していなかったのか、アラン兄さんは無警戒だった一頭の頸部を擦れ違いざまに剣で切り上げて切断した。
「凄い。竜人が戦う姿を見るのは初めてだわ。」
エーリカが呆気にとられたように呟くのが聞こえた。ぐぬぬ、俺も負けてはいられないが、今はそれどころじゃない。折角、アラン兄さんがワイバーンと戦って俺達が戦闘指揮所へ向かう時間を稼いでくれているのだ。
「みんな、ここはアラン兄さんに任せて俺達は戦闘指揮所へ急ごう。」
竹内中尉は、俺達をまだ戦闘指揮所へ連れて行くとも何とも言っていないのだが、このまま乗りと勢いで押し切ろう。
「こっちよ。」
真琴が更に便乗して戦闘指揮所へと誘導する。竹内中尉は新村司令の命令で俺達を戦闘指揮所とは別の、避難用シェルターへ連れて行くためにここへ来たようだったが、この勢いは止められず、「ああ、もう!」と思うようにならない苛立ちを吐き出しながらも、真琴が先導する俺達を追いかけて来た。
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