第54話 イカヅーチ カムヒヤ!
「えっ?作戦?先輩、これは単なる襲撃じゃなくて、計画された作戦という事ですか?」
「おそらく。あの魔物の陣容と行動を見ると、これはもう魔王国軍が立案して指揮を執っている軍事作戦としか思えない。」
どこのどいつか知らないが、そいつはオーガなど人型・大型魔物の他に蟲型魔物も操っている。そうした能力持ちなのだろうか?
俺の言葉に皆一様に黙り込む。それはそうだ。このままでは、ここもいずれ蟲型魔物に襲われるかもしれないのだ。
「大将、俺達どうしたらいいんですか?」
ガーライルは縋るような目で俺見ている。アーニャも不安そうだが、アラン兄さんは普段と変わらない。
「無論対処する。だが、ここは国防軍の管轄下だから俺達が勝手な事は出来ない。何をするにせよ、まずは新村司令達と接触して話を通さなければならない。」
「はあ、」
ガーライルはなおも不安げだ。なので、安心させるようにガーライルとアーニャの肩を叩く。
「大丈夫だ。いざとなれば俺達全員が脱出するくらいは出来る。」
続いて行動に移るため、俺は皆に指示を出した。
「真琴は引続き内線で駐屯地司令部と連絡を取ってくれ。誰にも連絡着かなかったら直接戦闘指揮所へ行こう。その際は案内してくれ。」
「わかりました。」
「ラミッド、アミッド。」
「「はいっ。」」
「二人は何があっでも黒沢さんから離れるな。守り切れ。」
「はいっ。」
「でも兄貴、俺達何も武器が無いぜ?」
アミッドの言う通り、俺達はVTOL機に搭乗する際に武器の類は全て置いて来ている。エーリカとアラン兄さんの帯剣だけは民族衣装として押し通した。
「よし、そいつは任せとけ。」
俺はこんな事もあろうかと、この駐屯地の資器材庫を先程遠目で物色して大振りのサバイバルナイフを見つけておいたのだ。
「アポーツ!」
そして、早速ナイフを拝借すべく、物体引寄せの術を使って四振りのサバイバルナイフを手にした。まあ、これは魔法というよりはESPというべきだが。
「「おおーっ!」」
「「凄え、兄貴!」」
取り寄せたナイフをラミッド、アミッド、ガーライル、アーニャに配った。更にアーポツを用いて、満峰神社に置いてきた愛刀雷丸を引寄せた。
「雷丸、カムヒヤ!」
と、虚空に現れた愛刀を手に取る。
俺の元に来た雷丸に軽く魔力を通すと、雷丸は嬉しそうに震えだす。この野太刀は偶然に古い農家の蔵で見つけ、それ以来愛用している。手にした時から妙に馴染み、魔力を通して使っているうちに、この刀から意思のようなものを感じるようになったのだ。今だって細かな振動が手に伝わって来ていて、俺の頭の中には柴犬が嬉しそうにブンブンと尻尾を振っているイメージが浮かんでいる。
「やっと援助が入る事になった矢先に、この要塞が陥とされたら全部水の泡になってしまうんだ。国防軍と協力して、山にいるみんなの為にも何としてもこの要塞を守り切るぞ!」
「「おおーっ!」」
結局、真琴が掛けた内線は何処にも繋がらず、俺達は会議室を出て自力で戦闘指揮所へ向かう事となった。
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