第53話 蟲の群れ
会議室でそんな遣り取りをしている間も外から響く砲撃音、爆破音は間断無く続いている。依然として駐屯地からは避難指示どころか、何の接触も説明も無い。
そのような訳で、どのような種類の魔物が、どれくらいの規模の群れでこの駐屯地を襲っているのか全くわからず、この状態では対策の取りようもない。まずは周囲を探って情報の入手を試みよう。
「エーリカ、舞、真琴、遠目で外の様子を見てみよう。俺は要塞の北側を見るから、エーリカは南側を頼む。」
「わかったわ。」
「舞は要塞の上空と東側を見てくれ。」
「はい、先輩。」
「真琴は司令部と駐屯地内の様子を探ってくれ。」
「了解。」
俺達四人は目を瞑り、魔力操作で体内の魔力を活性化させ、それぞれに振り分けた場所に意識を飛ばした。
頭の中に風景が見える。要塞を襲っているのは大型で人型の魔物の群れだ。何千というオーガ、トロル、サイクロプス、ミノタウルスなど、月並みな言葉だけど一体どこから湧いて出たんだという規模だ。まあ、異世界からなんだけど。
しかし、群れの前衛は既に駐屯地の前まで達する前に駐屯地からの砲撃で壊滅しており、後続は射程距離外に留まり、砲撃で撃ち漏らした魔物を機動強化歩兵が掃討している。俺が見たところ北側の襲撃は出鼻を挫かれて膠着状態となり、後続の魔物が引き上げれば、取り敢えず終息するのではないかと思うのだが。
「みんな、どうだった?」
「南側は蟲型魔物の大群がアラ川に沿って要塞に迫っているわ!」
「先輩、上空にワイバーンの群れがいて、国防軍の攻撃ヘリと交戦中です。」
「駐屯地司令部は戦闘指揮所に移動して戦闘の指揮を執っているわ。官僚達はシェルターに避難してる。駐屯地内はやっぱり第一戦闘配備態勢になってる。」
俺はエーリカ達に感謝を伝えると、再び遠目で一番の脅威と思われるエーリカの報告にあった南側の群を探す。
すると、確かに荒川に沿って土煙を上げて蟲型魔物の大群が駐屯地へと迫っていた。群れはミニバン並みの大きさがある黒く巨大なダンゴムシのような魔物群を先頭に、その後方には身長2m程もあるカマキリのような魔物、更に見てみるとそこには、
「!!」
その姿を見た俺は、あまりのおぞましさに絶句。丸みを帯びたずんぐりとした体躯、黄土色のまだら模様、長くいかにも高くジャンプしそうな後脚、やたら長い二本の触覚。そう、その魔物の姿は、俺がこの世で最も苦手で、生理的嫌悪感すら抱く昆虫、カマドウマその物だったのだ。
「うぐっ、」
突然驚愕して呻く俺の様子にただならぬものを感じたのか、皆が駆け寄ってくる。
「リュータ、どうしたの?」
「先輩、大丈夫ですか?」
「竜太、何を見たの?」
「兄貴!」
「兄貴、凄え魔物か?」
まさかでっかいカマドウマが気持ち悪いからとも言えない。
「済まない、大丈夫だ。」
俺は内心の動揺を誤魔化すため、すぐにエーリカ、舞、真琴以外の皆に俺達が遠目で見た状況を説明した。そして説明を聞いたアラン兄さんが、その状況、蟲型魔物の群が危険だと訴えた。
「大将、かなりヤバイぞ。」
アラン兄さんによると、蟲型の魔物は他の魔物と違い種族が違っていても連携が取れ、一つの意思の元に行動し、一つの群れが一体の不定形な魔物のようで全滅するまで襲撃が終わらないのだそうだ。
「そいつはかなり厄介だね。」
黒沢さんも自分の考察を述べる。
「恐らくだけど、その陣容だと先頭のダンゴムシが要塞の防御壁にぶつかって重なり、その上を後から来た蟲が乗り越えて要塞に侵入しようとしているように思えるけど、どうだろう?」
つまり、まず第一波の襲撃で要塞の注意と攻撃力を引きつけ、時間差をつけて攻撃力が手薄となった別方向に第ニ波を突っ込ませて一気にこの要塞を落とすという作戦だ、と。
「……」
そのように俺がまとめた見解を話すと、会議室内は沈黙に包まれた。
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