第52話 ご褒美狂走曲②
窓を震わす砲撃音、爆撃音。魔物の群れがこのイーザローン要塞を襲っている事は確実だ。俺と真琴は階下の会議室にいるエーリカ達と合流すべくホワイエを出て階段を下った。
会議室に戻ると、俺と真琴を除く皆が既に揃っていた。
「リュータ、こんな時にどこ行ってたのよ。魔物の襲撃よ。」
早速エーリカに詰められる。
「ごめん、何かわかった?」
「まだ何もわからないわ。誰も来ないし、何の説明も無いし。」
砲撃音と爆撃音は今も間断無く続いている。国防軍からの説明はその後も無く、忘れているのか、説明の要無しという事なのか、それどころではないのか。俺が会議室に戻ると、全員の視線が俺に注がれる。俺達、私達はどうするのか、と。
「この要塞は国防軍の管轄で、ここには精鋭部隊が駐屯しているから俺達の出る幕は無い。取り敢えず、俺達はこのままここに居よう。真琴は内線使って情報を集めてくれ。皆は廊下と窓の外を警戒してくれ。」
「「「はい。」」」
真琴がどこかに内線をかけたものの、どこも出る事なく、真琴曰く、この駐屯地全体が戦闘配備態勢に入っているという事だった。避難指示が無く、避難場所も無い現状では打つ手無しだ。
ふと視線を感じたので振り返ってみると、舞がジト目で俺を見ている。
「舞、どうかしたのか?」
すると舞は、
「先輩、真琴さんとどこに行っていたんですか?」
と、なじる様に、責める様に尋ねてきた。その醸し出す雰囲気は曖昧さを許すものではないので、俺は事実を淡々と述べた。
「上階のホワイエでコーヒーブレイクだよ。それと真琴が国からの援助のお膳立てをしてくれたから、そのお礼も言いたかったしね。」
そこに一切嘘は含めていない。真琴とキスしたとかを言っていないだけで。
「そうなんですか?」
しかし、舞はその答えに納得せず、更に真琴に確認する。
「ええ、本当よ。私も竜太に援助をについて黙っていた事を謝りたかったし。」
真琴もしれっとそう答えたのだか、
「真琴さん、今先輩の事を竜太って呼びましたね?」
「あっ!たっ、たまたまよ?」
「む〜!」
女の勘って実は魔法か超能力なんじゃないかってくらい鋭い。
「先輩?」
「なっ、何?」
「口紅、付いてますよ?」
「えっ?」
舞に指摘され、俺は慌てて手の甲で口を拭う。
「あー!二人して戻って来たから何かあると思ってカマをかけたら、やっぱり!しかも口って、どういう事ですか?」
この会話を何気に聞いていた皆からの、不審と興味の光を湛えた視線が俺に向けられている。
思わず真琴の方に視線を走らせると、真琴はあちゃーという表情で上を向いている。
「リュータ?どういう事かしら?説明して?」
エーリカに笑っていない笑顔で白状するよう詰められ、俺は観念してホワイエでの出来事を簡潔に説明した。
「う〜、確かに援助を受けられるのも真琴さんのお陰ですけど。先輩!私だって頑張って真琴さんを手伝ったんですから。私にもご褒美下さい!」
俺が答えに窮していると、エーリカと真琴が舞の肩に手を置き、それぞれ舞を宥め始めたのだが、
「舞はまだなの?大丈夫、リュータはきっと舞にもちゃんとご褒美くれるわよ?」
「ごめんね、舞ちゃん。先に竜太とキスしちゃって。」
「何ですか、二人とも、その上から目線は!」
結果的に逆効果になってしまった。
「いゃあ、土方君も大変だね。ハーレムキ「おっと、それ以上は身の為になりませんよ?」おや、誰か来たようだ。」
「いいか、アミッド。強い雄にはああやって雌が群がるんだぞ?」
「兄ちゃんはまだ一人だけだな。」
「俺はミアがいればそれでいいんだよ。」
「う〜ん、大将が羨ましいような、そうじゃないような。」
「若い奴等は元気があっていいねぇ。」
「…頑張れば、ご褒美か…」
みんな好き勝手言っているが、俺的にはアラン兄さんの「見守っててやるぜ?」的な生暖かい励ましが一番恥ずかしかったりした。
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