第50話 魔法研究所(仮)の戦術魔法教官②
身分というと、俺も斉藤も去年は若松大学の4年生だったが、モンスターアタックに遭遇して以来こうして秩父にいるため大学には通えていない。当然ながら単位も足りていないし、卒論も提出出来ていないので卒業していない。どころか留年したとしても、斉藤家は兎も角、俺は学費を払っていないので除籍になっているかもしれない。要は現時点の俺はと言えば、大学中退の無職男という訳だった。
聞きたいような、知りたくないような、だが、勇気を出して竹内中尉に尋ねてみる。
「俺と斉藤は、今どうなってますか?」
竹内中尉はもったいぶっていはるのか、「ん〜」と顎に人差し指を当てて考えている。この人はなんだな、見た目通りSっ気が強いようだ。
「良い知らせと悪い知らせ、どっちから知りたい?」
「じゃあ、良い知らせから。」
「では、良い知らせから。土方さんと斉藤さんはモンスターアタックに関する特別措置法により大学卒業扱いとなりました。おめでとうございます。」
なんと、そんな法律出来ていたとは知らなかった。まあ、俺は卒論はもう書き上げていて、後は提出するだけだったが。だが、それなりに勉強して入る事が出来た大学だ。やはり、無事(?)に卒業出来た事は素直に嬉しい。
「先輩、おめでとうございます。」
「大学卒業出来たの?おめでとうリュータ。」
「竜太君、おめでとう。」
傍で聞いていた舞とエーリカ、それに真琴も俺の大学卒業を祝福してくれた。
「有難う、みんな。」
確かにそれは良い知らせだった。次は悪い方、あまり良くない方か。
「で、もう一つの方は?」
「悪い知らせの方ですね。土方さん、あなたは予備士官養成課程を履修して国防省から奨学金を受けていましたね?」
「ええ、確かに。」
「予備士官養成課程を履修し、国防省から奨学金を受けている大学は大学卒業後、短期現役士官として2年間の軍務に就き、以後は予備役士官とならなければならない訳ですが、」
竹内中尉はそこで一旦言葉を切った。俺の反応を楽しんでいるのか。まあ、確かに俺にとってあまりいい内容ではない。要は借金の取りたてだ。
「土方さんの場合は大学を卒業出来ても、特殊な事情で通常の軍務に就けないと国防省は判断しました。ですので土方さんが魔法研修生に魔法を教えて下さるという事ですので、特例として国防軍は土方さんの為に戦術魔法教官という職を用意しました。土方さんには2年間の現役士官として軍務の替わりに、満峰神社で戦術魔法教官として魔法の先生をして欲しい、との事です。」
「…」
これは確かに良い知らせではない。しかし悪い知らせという訳でもない。
予備士官養成課程を履修して国防省から奨学金を受けていながら軍務に就かなかったらどうなるのか?奨学金の返済を求められたり、最悪の場合は起訴されて裁判から逮捕という事もありえるのだ。今回の措置で俺には奨学金の返済義務がなくなり、逮捕される事もなくなった。俺は満峰神社で中尉の戦術魔法教官とやらを2年間務めればいいという、実質今までと同じだ。
ただ、良い知らせではないのは何故かといえば、2年間の短期現役士官となる事は、俺が正式に国防軍の指揮系統下に入る事を意味し、しっかりガッチリと国防軍の軛がかけられてしまうという事だ。
「一応、さっきの神田中佐が系列上の上司になるわ。」
駐屯地幕僚の神田中佐が上司という事は、今後何かと依頼がありそうだ。
「わかりました。まあ、2年間頑張りますよ。」
物事は考え方次第でもある。自分に国防軍という後ろ盾が出来たという解釈もあり得るのだから。気持ちを切り替えていこう。
「あの、竜太君。」
すると、真琴が遠慮がちに声を掛けてきた。
「戦時や準戦時状態では予備士官でも現役期間は必要に応じて延長されるからね。」
あぁ、そうだった。という事は、少なくともこのモンスターアタックが終息するまで俺には国防軍の軛がかかったままなのかもしれないのか?
まあ、頑張ろうぜ、俺。
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