第47話 会議始まった?①
さて、これから国を相手に火花散る丁々発止の遣り取りが始まる、と思いきや、新村司令から発せられた言葉によってそうした全ては否定された。
「早々に結論から言えば、君達への食糧その他必要物資の援助は決定済みだ。安心して貰いたい。」
「…」
う〜ん、それは有り難いのだが、そうすると満峰神社での悲壮感漂うあの話し合いって一体何だったのだろうかと思ってしまう。それに、もう援助してくれるという結論が出ているのなら、これは「交渉」ではなく精々が「話し合い」もしくは「実施細部の打合せ」だ。
"真琴は知ってたの?"
俺は念話で真琴に尋ねる。
"…ごめん。私も上から決定するまで知らせないように指示があったから"
"…"
まあ、真琴は俺と行動を共にし、まだ何もしていないが告白されて俺の恋人の一人にもなっている。しかし、真琴は今も国防省情報本部に籍を置く軍人であり、情報将校だ。真琴が俺と行動を共にしているのは、彼女の任務でもあるのだ。わかっている事ではあったが、いざこうした場面に会うと、別に裏切られた訳じゃない、騙された訳でもないのだが、何とも言えない寂しさ、或いはやるせなさを感じてしまう。
"ごめんなさい、黙っていて"
「そうですか、有難う御座います。これでみんなが飢えずに済みます。」
俺は真琴からの念話には答えず、感情を押し殺して新村司令に感謝を伝える。確かに早々に援助を決めてくれていた事は実に有難い事だ。援助を餌に俺達から利益を引きずり出す事だって出来たはずなのだ。それを考えたら誠意すら感じる。
そして、この後は援助やこちらから提供する魔法情報の開示などの細かな内容の打合せとなった。
その内容(飽くまで非公式だが)は、
・日本国政府は陸軍秩父地方特別駐屯地を通じて満峰神社における異世界からの転移者集団に対し、人道に基づき必要な物資を供給する。
・満峰神社の転移者集団は可及的速やかに自治及び自衛を目的とした組織を発足させる。
・日本国政府は陸軍地方地方特別駐屯地を通じて満峰神社の転移者集団の自治組織と交渉し、人道に基づきその基本的人権を保証する。
・転移者は別に定める迄の間、日本国政府の定める地域内に於いてのみ生活するものとする。
・転移者の存在は当分の間公表しないものとする。
・満峰集団(俺達の事ね)は、国防軍及び厚生労働省からの魔法研修生を受け入れ、同研修生に対し魔法情報を開示し、魔法技術を修得させるものとする。開示する魔法情報は満峰集団の任意とする。
というもの。
と、そこで厚生労働省側から医療・衛生に
関する提案がなされた。
「厚生労働省の瀬谷です。そちらの皆様は異世界から転移されて来た、という事になりますと、向こうの世界の病原体を持ち込む可能性が否定出来ません。また、転移者の皆様がこちらの病原体に感染する可能性も同様です。転移者の皆様の健康管理や感染防止の為に当省より医療スタッフを派遣、常駐させて頂きたい。」
厚生労働省の瀬谷さんはいかにも仕事出来ますといった感じの女性で、30代で課長職というからキャリア組で優秀な人なのだろう。
健康管理、感染防止。これを言われると断り辛い。恐らくは、その「医療スタッフ」は転移者達の検査や治療を名目に彼等の血液などを採取し、持ち帰って研究するのだろう。それ自体は常識の範囲内で、本人の同意があれば仕方の無い事ではあるが。
また、何と言っても現状では満峰山に"医療"は無いに等しい。病気になったり怪我をした場合、回復魔法に頼るしかないのだ。それはそれで効果あるんだけどね。
この提案にはメリットもあればデメリットもある。どうしたものかと思案したいると、舞から念話が送られて来た。
"先輩、心配はわかりますが医療は必要だと思いますよ"
"そうだな、真琴はどう思う?"
"えっ、私?わ、私も必要だと思う。医療スタッフがやらかしたらその都度対処すればいいよ"
"そうか。エーリカは?"
"この国の制度の事はわからないからリュータに任せるよ。私達はこの国にお世話になる訳だから、私的には多少は協力すべきだとは思うし"
医療スタッフの受け入れについて、女性陣は概ね肯定的だ。
「黒沢さんはどう思いますか?」
「医療スタッフがいるのはいいと思う。幸い今までは誰も傷病者が出なかったけど、やっぱり医療従事者がいるいないでは違うからね。」
「わかりました。転移者達の人権に配意するならば、医療スタッフを受け入れます。」
俺の返事を聞いた瀬谷課長は満足げに頷いた。
まあ、医療スタッフが派遣されて来たら、功名心や手柄欲しさに妙な事をしないよう前もって釘を刺しておかないといけないし、もし何かやらかしたらキツイお仕置きをするつもりだ。害特封地では何が起きるかわからないからな、ふはははは。
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