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第43話 強襲対強襲、そして仲裁

翌朝。ヘリポートとなる神社の駐車場にイーザローン要塞へ行くメンバーと見送りが集まった。要塞からの事前連絡では、ヘリの到着は午前10時頃という事になっている。


待機中の皆は其処彼処で会話の花を咲かせ、しばしの別れを惜しんでいる。


「ねぇラミッド、無理しないでね。」

「大丈夫だよミア。俺がいない間に浮気するなよ?」

「する訳ないよ、ばか!」


この二人の何という甘酸っぱさ。なんか、横で聞いているこっちが恥ずかしくなる。


「アミッド、お前も早く彼女が出来るといいな?」

「兄貴、そんな事より今度杖道っていうの教えてくれよ。」


アミッドは兄と違って色恋にはまだ興味が無いようだった。兄弟といえど、それぞれという事だな。



結局、神社側からは権禰宜の黒沢さんが同行してくれる事となった。俺は禰宜の畠山さんが来てくれるものかと思っていたので意外だった。


「別にこの役目は押し付けられた訳じゃないから心配しなくていいよ。畠山さんは何というか専門馬鹿っていうか、こういう事には向いてないからね。神社を代表する立場の者が3人しかいない中での消去法で僕に決まっただけだよ。それと僕自身も外の様子を見てみたかったから、丁度良かったんだ。」


「そうですか、だったらいいんですけど。」


俺が黒沢さんとそんな会話を交わしていると、黒沢さんの傍らにいた巫女の渋谷綾音さんが、何故か俺に食ってかかってきた。


「だったらいいんですけどね、じゃあありません。黒沢君に何かあったら許しませんからね!」


恋人の身を案じる気持ちは良くわかるにしても、この人なんでかいつも俺には当たりが強いんだよな。


特に嫌われるような事をした覚えは無く、そもそもあまり絡むような事も無くて、話をした事も殆ど無いのだが。


「やめなよお姉ちゃん。土方さんが居なかったら私達みんなあの時オークに殺されていたよ。言ってみれば命の恩人じゃない?どうしてそう辛く当たるの?」


巫女姉妹の妹・渋谷香菜さんが綾音さんを諌めてくれた。だか、しかし。香菜さん言っていた事は要するに、好かない奴だけど命の恩人なのだから最低限の礼儀はわきまえよう、という事だ。


「それはわかっているけど、ああいう女たらしはどうも許せないのよ。」


まあ、客観的に見れば、俺は複数の女の子と同時に付き合っている女たらしの最低野郎という事になる。我ながら反論し辛い。それがこの世界、少なくとも西側先進国の常識、倫理観だ。生まれも育ちも現代日本の彼女達なら嫌悪感を抱くのも当然だ。


しかし、だ。気がつけば俺の周りは異世界からの転移者ばかりであり、今や彼等の保護者であり、代弁者という立場てなっている。そして、俺に好意を抱く女の子達みんなの気持ちを受け入れてとエーリカから言われて以来、俺の考え方も随分と異世界のものに染まった感があるのも、また事実。


神々から加護を授けられ、魔法や異世界と深く関わっている俺は、最早この世界の常識人とは隔たりが出来ているのかもしれない。


そんな風に一人で考えて(現実逃避とも言う)いると、綾音さんを詰める雪枝の声で現実に引き戻された。


「ちょっと、私の兄が女たらしとか聞き捨てならないんですけど。取り消して下さい。」


妹よ、兄ちゃん嬉しいぞ。


「そうです。先輩には私達から告白して恋人にしてもらったんですから。」


「リュータさんはとても優しくて、強くて、誠実な方です。女たらしなんかじゃありません。」


「これは私達とリュータの問題なんだから、関係ない人に何を言われる筋合いは無いわね。」


「別に何をどのように思おうがその人の自由だけど、綾音さんも大人なんだから、口にしていい事と悪い事の区別くらいつけましょう?」


「ぐぬぬ」


雪枝達に非難され、詰められり綾音さんだったが、怯んだのは一瞬、すぐに反撃に出た。その反撃の内容はほぼ俺の悪口と「あなた達の倫理観は間違っている」というエーリカ達への説教とも説得ともつかない内容だ。


「いやあ、土方さん愛されてますね。流石は世界線を超えたハーレムキングというところでしょうか?」


そう言って香菜さんが話しかけて来たが、随分と棘があるような?


「こういうのは自分の本意ではないのですが、皆が慕ってくれて、こうした形でも構わないと言ってくれるものですから。まあ、こういう運命(さだめ)なのだと思うようにしてますよ。」


「土方さんは火属性が強いのでしたっけ?」


「そうですが?」


「まさに。"炎のさだめ"という訳ですね?」


凄くキラキラした目で見てますが、この女性(ヒト)、案外そういうの好きな人か?俺は師匠のDVDコレクションにあった昔々のリアルロボットアニメを思い出した。


「まあ、地獄を見ないように気を付けます。」


俺がそう返すと、香菜さんは可笑しそうに笑った。


「じゃあ、せっかくなのでお近づきの印にあっちのキャットファイトを仲裁してきますね。貸し一つですよ?」


それって俺への貸しになるのか?いや、この人も綺麗で可愛い顔して結構いい性格してるよな。だが、そのまま放置も出来ない。貸しの取り立てに恐いものを感じつつも、俺は香菜さんにエーリカ達と綾音さんとの口論の仲裁を頼む。


「じゃあお願いします、香菜さん。」

「ふふ、任されました。」


香菜さんは口論中の女性達の間に割って入り、何やら語りかけると、途端に口論は収まった。聴覚を強くすれば香菜さんが何を言っていたのか聞き取る事が出来たが、世の中には知らない方が良い事も多いので、俺はあまりそれはしないように心掛けている。


すると、エーリカ達が渋谷姉妹から離れて俺の元に集まって来る。


「ゴメンねリュータ。リュータが侮辱されてカッとしちゃった。」

「リュータさん、はしたないマネしてごめんなさい。」

「先輩、ごめんなさい。もうしませんから。」

「竜太君、ごめんなさい。止めなきゃいけない立場なのに。」

「お兄ちゃんごめんね。お兄ちゃんがじっと耐えていたのに、私が余計な事言っちゃって。」


どうしたのだろう?香菜さんがエーリカ達と綾音さんに何を言ったのか気になるところだ。綾音さんも黒沢さんの元でしゅんとしている。


不思議に思い、香菜さんに視線を向けると、俺の視線に気づいた香菜さんにウィンクされてしまった。


「ハーレムキングも大変だな?」


斉藤が可笑しそうにそう言うと、俺の肩をポンと叩いた。


「その呼び方止めろ。次言ったらこんがりアフロヘアにしてやるからな?」

「じゃあ、口から粉吹いてズッコケてやるよ。」


その後、斉藤が小声で教えてくれたが、香菜さんは口論する双方に「そんな姿を見せると、恋人に恐がられて嫌われちゃうよ?」と言ったのだそうだ。その効果は抜群で、流石は歴史と伝統を誇る齋党だ。その豊富な人材に、俺はこの組織の実力の一端を垣間見た気がした。




お読み下さり有難う御座います。

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