第42話 私を要塞に連れてって②
転移者の二人目は有志連合の猫獣人の女の子だ。
「ええと、どうして君になったのかな?」
「何よ、私で文句あるわけ?」
それはバローニの上の妹アーニャだった。
こちらも意外だった。俺はバローニになるかと思っていたし、彼は今やこの世界における有志連合軍(といっても100人くらいなのだが)の最上級指揮官という立場である。俺としてはバローニにこそ来て欲しかったというのが正直なところだった。
そうした内心が表情に出たのか、早速アーニャが文句をつけてきた。
「私じゃ駄目なの?」
「いや、駄目じゃないが、てっきりバローニさんかと思っていたからな。」
俺がそう説明すると、アーニャは下を向いて黙ってしまった。いや、俺別に駄目とか言ってないからね?思ってもいないし。何か悪く伝わってしまったか。
俺が内心めちゃめちゃ焦っていると、アーニャは顔を上げ、キッと俺を睨む。
「兄上は父が亡き後、我が領の後継者であり、父から命じられた部隊指揮官の任があるの。兄上を危険な目に合わせられないから、皆で話し合って私が兄上の代わりにあなたに同行する事になりました。足手まといにはなりません。魔王国軍に殺された両親と領民達の仇を取りたいんです、いけませんか?お願いします。同行を認めて下さい。」
深々と頭を下げるアーニャ。俺は彼女のそうした事情については一切知らない。まともに喋った事もないからな。しかし、今こうして彼女の兄の身を案じる心、亡くなった両親や領民達の無念を晴らそうという思いを知った。
「!!」
俺は思わずアーニャの頭を撫でていた。
「わかった。皆を思う君の決意は立派だ。君の同行に不満なんて無いよ。俺が君を守るから、一緒に行こう。その目で色々と見るといいよ。」
しかし、そう言ってから俺は自分の迂闊さに気付いた。しまったと思った時は既に遅く、アーニャは顔を真っ赤にしてううっと唸って怒っていたのだ。
「リュータ!」
不意に名前を呼ばれ、恐る恐る振り向いて見ると、不機嫌そうなエーリカがこっちへ来いと人差し指をクイックイッとさせて俺を呼んでいた。更にエーリカの後ろにはサキ、雪枝、舞、真琴が同じく不機嫌そうな表情で俺を睨んでいた。
この不穏な空気に、俺は援護欲しさに周囲を見回すも誰一人として目を合わせてくれなかった。ただ一人目を合わせてくれた斉藤は、しかし味方という訳ではなく、なんと顎をエーリカ達の方へとしゃくりやがったのだ。その意味するところは一つだ。それくらい俺にもわかる。俺は諦めてエーリカ達の元に行くと、5人の女の子達から女の子の頭を不用意に撫でるな、触るな、ぽんぽんするなと説教されるハメとなった。
そして同行者の3人目。竜人の若い男性だ。竜人の寿命とかわからないので何とも言えないが、年の頃は25歳くらいで、俺より少し年上に見える。身長は180cmくらいで、体格は引き締まった細身、青く長い髪を後ろで束ねている。瞳(瞳孔は爬虫類のそれだ)も青く、顔は眉が太く、大きな二重の両目には強い目力。高く長い鼻梁に意志の強そうな唇。一見ちょっとクセがありそうだが、ワイルド兄貴系のイケメンと言える。
白い皮膚には所々に銀色の鱗があり、あれのどこかに逆鱗があるのだろうか?前額部からは銀色に輝く円錐形の角、同じく太い銀色の尻尾が生えている。今は茶色のブーツにグレーのズボンを履き、白いシャツに深緑色のコートを纏い、腰にはロングソードを差すその姿は実に決まって見えた。
彼からは強い魔力も感じる。どのような技を使うのか興味深いが、かなりの実力者と言えよう。
「俺はアランだ。見ての通り竜人だ。よろしく頼むぜ大将。」
アランと名乗った竜人はそう言って右手を差し出した。向こうの世界でも握手の習慣があるようだ。
しかし、この人も俺の事を大将と呼ぶか。ガーライルが既にあちこちで俺の事を大将と言って回ったのだろう。まあ、いいけど。
よろしく頼みますと返しながら俺はアランと握手する。
「ところで大将からは龍神様の息吹を感じるが?」
初対面で炎龍の息吹を感じるとか、流石は竜人というところだろうか。
「俺はこの土地を守る炎龍様から加護を授かっているんだ。」
「別の世界とはいえ、龍神様の加護持ちとは大したものだ。」
炎龍様のお陰なのか、竜人のアランとは上手くやっていけそうだ。
明日はいよいよイーザローン要塞から迎えのヘリがやって来る。まだ神社側からは誰が随行してくれるのか知らせは無いものの、このメンバーで交渉に臨む事となる。俺達にエルム大森林からの転移者みんなの明日がかかっている。
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