第33話 あれから6か月… ①
この世界に魔物が出現して、所謂モンスターアタックがあってから6ヶ月が経過した。
自分を取り巻く環境や人間関係は基本的に変わっていない。友人である斉藤とは当然友人である。しかし、互いの役割分担は進んでいて、俺はパーティを率いて害獣出現特別封鎖地区(害獣特区)のあちこちへ偵察や魔物狩りに出る事が主な活動になっているが、斉藤はというと、満峰神社に残っての魔法の研究や新しい魔法の開発が主な活動になっている。
そこから発展的に斉藤が代表者となり、宿坊の一室を借りて「満峰山魔法研究所(仮)」が設立された。研究所のメンバーは斉藤の他にはユーリカとアックスの二人。そこに禰宜の畠山さんと舞が外部から協力者している。
研究所といっても、斉藤達も研究ばかりしている訳ではない。何と言っても慢性的な人手不足なのだ。普段は俺達と一緒に魔物狩りをしたり、神社の雑用をこなしつつ、その合間に魔法の研究をしている。
斉藤とユーリカはというと、いい仲になっている。俺とエーリカが恋人同士になるのに紆余曲折あったというのに、この二人はいつの間にそんな仲になっていたのだろう。斉藤の奴はユーリカには一目惚れだった訳だけど、ユーリカは斉藤の何が良かったのだろうか?まあ、今度その事をエーリカに聞いてみようと思う。
狐獣人のアックスは、今や秀才の誉れ高く、斉藤の一番弟子だ。アックスも獣人なので身体能力が高く、虎兄弟には及ばないものの徒手格闘や剣術も訓練して、魔物狩りでも十分戦力となっていた。だが、アックス自身は学問が好きなようで、斉藤からこの世界の科学、ユーリカから魔法を教わっている時が実に楽しそうだった。なので、適材適所というか、それぞれ好きな道へ行くべきとアックスは斉藤預かりとなった。そして、将来の研究者、もしくは賢者への道を歩む事となったのだった。
ラミッド、アミッドの虎兄弟。食事も十分で栄養素の摂取も良いからか、この6ヶ月で身長が伸び、体格も随分と良くなった。獣人族はミドルティーンの頃に身体の成長が著しいらしい。実の弟と縁が無かった俺にとって、虎兄弟は今や弟のような存在だ。
この二人は虎獣人だからか、兎に角 "戦う" という事が好きで、俺が魔法、徒手格闘術、剣術などを教えるとすぐに身につけて、今では俺達のパーティにとって重要な戦力となっている。
兄であるラミッドは、獣人の子供達の中では最年長で人間でいうと高校1年生くらいになる。サキが言うには、そのラミッドを猫獣人のミアはどうも好きらしい。では、ラミッドの方はというと、俺が「ミアって可愛いよな?」とちょっとカマをかけたところ、「そっ、そうですね。」と下を向いて照れていたので、実にわかりやすかった。
弟のアミッドはラミッドより一つ年下の中学3年生くらい。奴は見事に次男を体現したやんちゃな性格で、身体も大きくなり強くはなったが、精神的にはまだ子供っぽい。ラミッドが女の子を意識し出しているが、アミッドは「嫁はいらねぇ、俺には戦いあるのみさ。」と実に厨二っぽい。まだまだ成長の過程にある、という事だろうか。
後輩の北川さんと俺の妹の雪枝は、現在も満峰神社に残り俺達と行動を共にしている。現実問題として、二人とも、もう帰せなくなってしまったのだ。何故ならば、国防軍の一部すら動かせた、あの謎の組織を二人とも知ってしまった上、おそらくはあの組織も二人の事を魔法が使える者として知ってしまっている可能性が高いからだった。
つまり、そんな状態で二人を満峰山から家に帰したらどうなるか。あの謎の組織に証拠隠滅と魔法能力者確保を兼ねて拉致される恐れがあり、もしそうなったとしたら、女の子である二人が一体どのような目に遭わされるか。北川さんのご両親には大変申し訳ないのだが、それを考えると二人を帰すのは危険と判断したのだ。まあ、二人が満峰山への残留を極めて強く希望した、という事もあった訳だけど。
因みに満峰山頂は携帯電話の使用は可能なので、北川さんも、雪枝も実家とは定期的に連絡を取っていて、そうした事情も説明して一応の理解を得ているそうだ。そして、雪枝は通信制の高校に、北川さんも通っている大学の通信制にそれぞれ編入している。
二人がモンスターアタックの際に満峰神社に居た事は飽くまで偶然であり、二人を危機から救う事が出来たのは幸いだったが、それも偶然の巡り合わせ。だから俺としては、そうした事は自分にとっては不可抗力であり、二人の命を魔物から守りこそすれ、何ら責任を感じる必要は無い筈ではある。しかし、魔法を巡る陰謀めいた事態に二人は巻き込まれてしまい、結果的にそれが彼女達の人生を変えてしまった訳で、俺は二人に対してその責任の一端は感じていたのだ。だから、二人が通信制とはいえ復学出来た事に安堵したし、心から喜ばしく思った。
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