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第204話 呼び出されて、人妻?

昔見たSFアニメの挿入歌に「お呼びとあらば星の果て〜♪」なんて歌詞があったな。まぁ、俺達は統合軍に傭われた民間軍事会社じゃないが、世話になっている神様からちょっと顔出せよと呼ばれたら行かなきゃ行けない義理もあるというものだ。ましてや加護なんかも授けられているしな。


こ眷属様の三郎丸と連れ立って斎藤宮司に案内されつつ、俺達は満峰神社の本殿に伺候する。


今回、斎藤宮司は本殿には入らず、その手前で俺に黙礼すると何も言わず引き揚げて行った。


今までにも何度か俺は本殿で満峰神社の女神様に会っている。それは何という事もない世間話で終わる事もあれば、異世界から戻った時のように重要事項の報告であったりといった具合だった。斎藤宮司はそのどれにも立ち会っていたのだが、今回は引き揚げて何も理由は口にしなかった。


俺が去りゆく斎藤宮司の後ろ姿を見送ると、三郎丸が先を促す。


「おい竜太、何をぼーっとしている?主神様を待たせるな」


「わかってるよ、サブちゃん」


俺は三郎丸に応じ、俺の後ろから着いて来ているエーリカ達に視線を向ける。その視線に気付いたエーリカ達は「うん、大丈夫!」とばかりに頷いて見せる。皆、緊張の面持ちだ。本物の神様の顕現に立ち会うのだ。過去に経験が無い者(舞、雪枝、サキ、アーニャ、ユリィ、オスカー)は当然だが、何度か経験のあるある者(エーリカ、真琴)もいつにも増して緊張の度合いが強い。


と言うのも、俺には今回の神託(よびだし)が今までと異なり自分達の未来に、いや、この世界の趨勢に関わる重要な展開に繋がる気がしてならないのだ。皆もそれを何となく察しているのだろう。


俺は一度ゆっくり深呼吸すると、再び振り返って皆を見渡す。


「よし。行くか」


皆、無言のまま一斉に頷いた。


〜・〜・〜


灯明の灯りのみで薄暗い本殿の中には既に床几が並べてあり、三郎丸にさっさと座れと促される。今日の三郎丸は何だか偉ぶって張り切っているな。


すると本殿内の空気がピーンと張り詰め、辺りからピシッピシッと鳴家が聞こえ始めるではないか。


そして神職の装束を纏ったご眷属様達(つまり狼って事)が現れて太鼓を叩くと、


「主神様のご顕現である。一同控えよ!」


と俺達に命じた。


ははぁ〜、と言った感じで俺達は一斉に頭を下げる。一人こういう事に慣れていないオスカーが遅れたが、すかさず雪枝がオスカーの頭を手で強引に下げさせてフォローする。おぉっ、何か既にもう良妻感を出しちゃって。でもな雪枝よ、それは人によっては屈辱を感じて嫌がるからあまりやるなよ。


そして顕現する女神様。顔を伏せていても、その気配でわかる。


「一同の者、面を上げなさい」


女神様の鈴の音のような綺麗な声が本殿に凛と響く。


そう言われたからといってガバッと顔を上げたりなんかはしてはならない。視線を心持ち足元を見るような感じでちょっとだけ上げるのだ。


「こうして会うのは久しぶりね、竜太さん。この度は大変でしたね。でもその後は事代主神と弁財天からも随分と楽しげな旅だったと聞いていますよ?」


事代主神は真鶴の貴船神社で祀られている神様の一柱で、弁財天は言わずと知れた江の島で祀られている神様だ。行った先々で神様に見られているとか、しかも満峰神社の女神様に報告されているなんて、八百万の神ネットワークみたいのがあるのだろうか?あるんだろうな、きっと。


「はい、お陰様で久方振りに命の洗濯が出来ました」


「それは上々。では恋人2人連れて海の美味しい物食べて、温泉入って寛いだのだからきっと心身共に楽になった事でしょう。すぐにもう一仕事出来そうですね?」


この女神様、これから一体何を言い出すのだろうか?恐いのだが…


「ハハ、ご冗談を」


と、無駄な抵抗と知りつつ一応の牽制をしておく。


「冗談ではありません。と言うよりも冗談を言っている暇も無い、というのが正解でしょか」


ゴクリ。俺だけでなく、本殿にいる皆の唾を飲み込む音が聞こえた気がした。


「かの世界に封じ込められていた魔神の復活が叶ったようです」


!! 本殿内に緊張が走った。


あの封印の地、エルム大森林に封じ込められた魔神。その正体は古代ギリシアの男神にしてティターンの一柱であるプロメテウスだ。


主神ゼウスを騙してまで人に味方した英雄。それ故なのか、愛する(ひと)をオリンポスに奪われ、理不尽にも異世界に追放された。


更には追放先でも悪神と見なされ、魔神と呼ばれ異世界の神々とも戦いとなった。しかしその強さと不死性により異世界の神々もプロメテウスを滅する事が出来ず、巨大で地中深い牢獄に閉じ込めるに至る。大掛かりな魔術による封印を施して。


怒りと恨み、そして望郷の念が募り、幾万年の歳月と幾十万もの命を贄として遂に復活を果たしたという。


「率直に言います。竜太さん、あなたには復活なりやがて復讐の念に駆られてこの世界に戻って来る魔神と戦わなければなりません」


はい?


これまた一同を激震が襲う。ちょっと待って欲しい。そりゃあ俺は強大な魔法の力を手にして様々な場所で様々な敵と戦って来ている。しかし所詮は俺だって一人の人間に過ぎない。アメリカ軍と渡り合えても、神話にも登場するティターンの英雄神と戦うなんて幾らなんだって無茶に過ぎる。


「待って下さい。ただの人間に神と戦う事なんて出来ません」


ここで安易に請け合ってはならない。出来ない事は出来ないと声高に主張しないと。俺だけならまだしも、ここにエーリカ達も呼ばれている以上、彼女達も巻き込んでしまう。


と、そこで床几から真琴が立ち上がる。


「竜太、その心配は無用よ!」


そうか、その心配は無用か、って何でだ?って言うか急に立ち上がってどうしたんだ真琴。しかも何かその佇まいに僅かだが神気を纏っているのだが。


「真琴、どういう事だ?」


俺はどこか超然となった真琴に尋ねた。いきなり起きたこの事態に周りの皆も神前であるがギョッとして真琴を見ている。


「竜太、あなたはただの人間じゃない。あなたには、あなたの魂には私の背の君だった倭建命から分けられた魂の欠片が含まれている」


え?私の背の(おっと)?って事はつまり、


「真琴、お前、人妻なのか?」


何故か周りからズコっとした雰囲気が伝わって来た。


「そう人妻、って馬鹿!先輩、気にするのそこですか!」


舞から突っ込みが入った。いや、だって大切な恋人が実は人妻ですとか言い出したんだぞ?


真琴によるいきなりの爆弾発言。静謐だった本殿の雰囲気は女神様も呆れ顔の混沌としたものになってしまっていた。






いつも『魔法修行者の救国戦記』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。


それでは次話もお楽しみに!


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