第192話 エーリカ救出作戦①
竜太「やあみんな、久しぶり。土方竜太だ。今回からの「エーリカ救出作戦」は「マチルダ救出作戦」に因んでいるようだぜ」
エーリカ「え?じゃあ、私は黒い三連星的な敵に…」
竜太「いやいや、そんな訳ないでしょ!」
雪枝「次回、「エーリカ 救出作戦②」だチュン!」
竜太「って、ゼンカイジャーかよ!という事で『魔法修行者の救国戦記』スタートだ!」
その一報は舞から俺の携帯にかかってきた。
「先輩、大変です。エーリカさんがアメリカ軍に拉致されてヘリコプターで連れ去られてしまいました」
舞によればトッドがビクトルを人質に取り、その際に何と山本少尉がトッドに協力してエーリカに拳銃を突き付けたそうだ。そしてトッドは米軍ヘリを呼び寄せ、ヘリから降下した特殊部隊がエーリカを拘束して連れ去ったのだという。
「駐屯地への連絡は?」
「はい、大沢軍曹が既に通報済みです」
「オスカーとフレデリカの2人はどうしている?」
「2人ともとても驚いていて、全く知らないし関与していないと言っています。一応、見張りを付けて2人とも別々に個室で待機して貰っています」
「うん。2人に関してはそれでいい」
おそらく、オスカーもフレデリカもエーリカ拉致には関わっていないだろう。
「そっちにすぐに戻る。皆を集めていてくれ」
「はい、先輩。お気を付けて」
通話の内容は聞こえていたようで、真琴もアーニャも心配そうに俺を見ていた。
「聞いての通りだ。エーリカとビクトルがアメリカ軍に拐われた。俺はこれから満峰山に戻る。真琴は駐屯地との連絡を確保して情報収集を頼む。アーニャはアルベルトさんにこの事を知らせてくれ」
「「はい」」
〜・〜・〜
ここまで乗って来た車で満峰山まで戻ろうかと思ったが、返って遅くなりそうなので魔法力を全力全開にして直線距離を駆けてジャンプして戻った。残念ながら魔法が使えても俺は空を飛んだり瞬間移動したりは出来ないのだ。それでもアースラ諸族連合の庁舎がある秩父盆地から30分程で満峰山に到着する事が出来た。
神社の境内にある宿坊には斉藤を始めとする俺達満峰集団の主だったメンバーが揃っていた。
「リュウ、すまない。俺が山にいながらみすみすエーリカを奪われた」
斉藤が頭を下げて謝罪の言葉を口にする。
「いや、タケのせいじゃない。おそらくトッドはこのためにアメリカから送り込まれ、虎視眈々と機会を狙っていた筈だ」
「リュータ、どうしますか?これから」
サキが俺にどうするのかと俺の意志を問う。まるで俺の覚悟そのものを問うているかのように。
「無論、エーリカを奪還する。最悪、アメリカ軍を敵に回してもだ!」
クソッタレのアメ公どもめ。俺からエーリカを奪おうとは。もしエーリカに何かあってみろ、アメリカ合衆国を中国同様に過去の存在に変えてやる。
「リュウ、落ち着け。今はエーリカの奪還を最優先に考えろ」
「タケ、俺は大丈夫だ。大沢軍曹、米軍ヘリの行き先はわかったか?」
「いえ、駐屯地に何度かその件を問い合わせましたが、不明としか回答しません」
大沢軍曹は困惑気味にそう答えた。
米軍ヘリは日本側に飛行計画を提出していないだろうから、日本側も米軍ヘリの無許可飛行と害特封地上空への無断侵入をレーダーや無線交信傍受で当然知っているはずだ。
同盟国とはいえこれほどの主権侵害をされて日本政府は黙っているのだろうか?もう在日米軍の暴虐無人な行動に日本側が泣き寝入りする時代ではないのだが。
という事は山本少尉がトッドに協力していた事実と合わせて考えるならば一つの可能性が惹起する。
「まさか祖国に裏切られているのか?」
以前にも各省庁に渡って存在した売国集団がエーリカ達の身柄を押さえようとした事があった。あの集団はその後当局の摘発を受けて壊滅したと説明されたが、トカゲの尻尾切りのように生き残りがいるのかもしれない。
全く、散々国と国民のために魔物と戦い、魔法研修でも協力してきたというのに、その見返りがこれか?
「待って下さい、中尉。その結論は早計に過ぎます。山本の件は自分も全く知りませんでしたから。彼女の意識が回復したら尋問します」
武田少尉が焦ったように取りなす。まぁ疑えばキリがないし、時間も無いからひとまず裏切り者探しは今は止めておく。
「まずはエーリカを拐った米軍ヘリの行先がどこかだが。国内の米軍施設でヘリの離発着が出来、尚且つ直ぐに国外に移動出来るという要件で考えると、」
「横田か厚木か?国内の協力者も考慮すると入間と百里という線もありか」
斉藤の推論を継いで俺が続ける。これはエーリカを拐ったヘリが着陸し、そのまま輸送機に乗せ替えて離日する場合だ。
「でも、お兄ちゃんが奪還して来る事を警戒して時間がかかっても原子力潜水艦を使うという手段もあるんじゃない?」
雪枝のその考えもあり得る。トッドは異世界での戦いで俺の能力を間近で見ている。アメリカ側の工作員であるとは言え、トッドはスリーパーではないだろうから当然その事を上に報告している筈だ。
「これは手っ取り早く赤坂に乗り込んで米国大使を人質にするか?」
「んな無茶な…」
呆れたように武田少尉が呟くが、俺は結構本気だ。
するとユリィがフレデリカを連れて来た。
「リッキーがリュータに話があるって言うから連れて来たわ」
フレデリカは一応アメリカ軍関係者だから軟禁中なんだけどな。と言っても俺はフレデリカとオスカーをトッドと同様な工作員であるとは思っていないけどな。
ユリィに連れられたフレデリカは、事が事だけにやや憔悴した様子が窺えた。彼女はトッドがしでかした事について謝罪すると、次いでエーリカ奪還についての協力を申し出た。
「リュータ教官、私ならエーリカがどこにいるのか千里眼でわかります」
なるほど!その手があったか。
「リッキー、エーリカはどこにいるのが見える?」
「リュータ教官、私の事、信用してくれるんですか?」
「当たり前じゃないか。そんな事、言うまでもない」
真っ直ぐに俺を見つめるリッキーの今にも泣きそうだった表情がパァッと笑顔に変わる。
「はい!日本国内の米空軍基地です。滑走路には大型の輸送機が駐機しています。戦闘機は見えません。基地を貫いて国道と線路があります」
ここまでで横須賀と厚木、入間と百里は消えた。三沢はそもそも無いだろう。となると、リッキーが見た基地の風景からすると、
「正門には「ヨコタ」とあります」
俺と斉藤は互いに顔を見合わせる。
「リュウ、やっぱり横田基地のようだな」
「だな」
さて、リッキーのお陰でエーリカが連れ去られた先はわかった。リッキーはエーリカが「どこにいるのか千里眼でわかります」と言ったのだから、エーリカはまだ横田基地にいるのだ。問題はどのようにしてここから横田基地まで行くのか、だ。
残念ながら国防省は当てにならない。走って行っても時間がかかる。ならば、非常の手段を使うしかない。そして、俺には頼りになる友達がいるのだ。
俺は魔力を最大出力にして念話を送る。
"バーン、わかるか?リュータだ。エーリカが拐われたんだ。力を貸して欲しい"
満峰山の中心から山梨の広瀬湖まで火竜のバーンに(念話で)助けを叫ぶ。
すぐに返答は無く、俺は何度か同様に念話を発し、バーンからの反応を待った。
そして待つ事暫し。膨大な魔力と炎龍の眷属の気配が感じられると、陽光を遮って黒い巨大な火竜、バーンが満峰山の上空に飛来した。
"リュータ!かっ飛ばして来たぜ!"
バーンからの念話が伝わると同時に満峰山の上空から周辺にバーンの咆哮が轟いた。
いつも『魔法修行者の救国戦記』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。
それでは次話もお楽しみに!




