第188話 オオカミとの休日
どうも、戦兎族のユリィです。いつもご愛読頂きまして有難い御座います。作者からの伝言なんですけど、これからは週一更新で頑張りたいとの事です。それでは、『魔法修行者の救国戦記』スタートです!
元の世界に戻って一週間が過ぎ、俺達にも徐々にそれまでの日常が戻りつつあった。共に異世界から転移して来た森の民達は、アースラ諸族連合に受け入れられ、その協力と害特封地統合統治機構の援助によりこの世界での生活基盤を築くため労働に勤しむ事となった。
森の民の中でもやや特殊な集団、即ち森エルフのシルヴァ支族にバーシュ支族、ダークエルフのダリューク支族とアブリル支族は、人口が多い秩父盆地への移住を拒んだ。まぁ、エルフなら樹々の中で暮らしたいのだろう。
結局、彼等は山梨県側の松姫湖やふかしろ湖周辺の管理と魔物駆除などを統治機構から請負う形で移住する事となった。
俺は彼等の部族長に北の精霊樹の種を渡した。良い地に植えて精霊樹を復活するように頼んで。彼等は失われたと思っていた精霊樹と大精霊が復活出来ると感激し、感謝して部族を挙げて必ず成し遂げると俺に誓い、部族同士で互いに誓い合った。
それと対照的だったのがドワーフ達。彼等はこの世界の技術に魅せられて興味津々、山の中では技術を学べる機会が無いからと移住を拒否した。そのため紆余曲折あった後、流石に害特封地から外には出せないため、彼等ドワーフは旧秩父市エリアで統治機構のインフラ整備補助を請け負ってこの世界の科学技術を学ぶ事となったのだ。
事によったら彼等こそが将来科学と魔法を融合させた新たな文明の基礎を築くのかもしれないのかなと、俺はちょっとだけ思った。
さて、ケンタウロスのキタサンブラ支族。俺はてっきりあいつらは難民として暫くは無為徒食な生活を送るのかと思いきや、然に非ず。どういった手段を弄したものか、ここでも傭兵として警備隊に雇用されたのだ。そして害特封地広しとその機動力を駆使し、統治機構や復興事業参加企業などの護衛に魔物駆除にと人手不足な警備隊の穴を埋めるように大活躍しているのだ。部族長となったラーガイオーは早くもその頭角を現し、将来害特封地の顔訳となる勢いを窺わせた。
〜・〜・〜
俺達はと言うと、再び満峰山へ戻って来た。有難い事に、満峰神社の宿坊至雲閣の部屋は異世界に転移する前のままにして貰えていた。
「いゃあ、戻って来れて良かった。心配していたんだよ」
斎藤宮司と共に迎えに出てくれた権禰宜の黒沢さんはそう言って労ってくれた。
「ご心配をおかけしました。便りの一つも出せなくって申し訳ないです」
俺の異世界ギャグは思いっきり滑ってしまったが、まぁ、場を和らげる事には成功した。多分。
と、迎えに出てくれていた一行からジトっとした視線を感じる。その視線の元を辿ってみると、
(あっ、サブちゃん)
皆の後ろにご眷属様の三郎丸がジト目で俺を見ていた。そして、俺と目が合うとそのままプイッと顔を背けてどこかへ行ってしまったのだ。
「先輩、追いかけた方が良くないですか?」
舞が心配そうに声をかける。
「リュータ、三郎丸様は拗ねちゃってるのかもしれませんね」
「…本当に追いかけた方が良い。リュータ、時間が過ぎるほど仲直りが難しくなる」
サキとアーニャからも追いかけた方が良いと言われる。
そうだよな。三郎丸は俺のもう一人の相棒だもんな。心配かけちまったし。
「タケ、悪い。ここ任せていいか?ちょっと行ってくる」
黙って頷く斉藤にこの場を任せ、俺は三郎丸を追った。
〜・〜・〜
三郎丸がいなくなった、と言っても実は何処に行ったのかわからなくはない。何故ならご眷属様は基本この山からは離れないからだ。しかも、ご眷属様といえばここ!という場所がある。
という事で俺は本殿のそのまた奥にある御仮屋神社の前で三郎丸を発見した。
「サブちゃん、ごめん。心配かけた」
すると俺を見据えていた三郎丸は、再びプイッと横を向く。
"ふんっ。お前の心配なんてしていない"
「えぇ、心配してくれてなかったの?」
俺がちょっと悲しげな口調でそう言うと、三郎丸から焦ったような念話が伝わって来た。
"お、お前の能力なら何があっても、だ、大丈夫だなと思ったから、心配してないといったんだ!''
信頼してくれているのか。でもその慌てぶりとが可笑しくて思わずクスッと笑ってしまった。
"笑うな!何がおかしい!"
「ごめんな、でも嬉しいよ。サブちゃん、俺の事信頼してくれてたんだな」
"俺は真実を言っただけだ"
そっぽを向きながらそんな事を言う三郎丸。俺ほ三郎丸に正面から近付くと両膝を突き、「おすわり」をしている三郎丸に抱き締めた。
「ただいま、サブちゃん」
三郎丸の毛並み、体臭、モフモフ感、暖かさ、全てが当たり前だが転移前と同じ。俺は嬉しくなってそのまま三郎丸に頬擦りする。
"俺は怒っているんだ"
「ごめんな」
"竜太は何で俺を連れて行かなかったのか"
「…それは」
"わかっている。そんな事が出来なかったのは俺だってわかっいる"
三郎丸は苛立たしげに念話を続けた。
"それでも、何故あの時無理にでもお前と一緒に行かなかったのかと。後から付けて行くだって出来ただろうにと後悔したのだ"
"俺が怒っているのは竜太にではない。お前と共にあろうとしていたのに、お前と離れてしまった俺自身にだ!"
三郎丸は抱き締める俺の肩に顎を乗せて僅かに身体を震わせていた。
「サブちゃん。もう離さないからな。これからはずっと一緒だ」
"ふんっ、女子を口説くような事を俺に言うな。気色悪い"
「でも一緒だからな。一緒の部屋で、一緒に寝るか?」
"…竜太がそうしたいならそうしともいい"
そう言うと、三郎丸は俺の頬をベロリと舐めた。
〜・〜・〜
「ねぇ、何でリュータの部屋に三郎丸がいる訳?」
俺の部屋に遊びに来たエーリカが腰に手を当てて抗議の声を上げる。
「いゃあ、サブちゃんに寂しい思いさせちゃったからさ」
三郎丸は畳の上で四肢を投げ出して寝そべっていて、俺は添い寝して頭の匂いを嗅いでいる状態。
"森の娘よ、ここは俺と竜太の部屋だからあまり大きな声を出されても困るな"
三郎丸のエーリカを揶揄うような念話が響く。
仲直りをした俺達。三郎丸はあれからこの部屋に棲みついている。
"ちょっと、リュータ。三郎丸があんな事言ってるわ。どういう事なの?"
俺は憤慨するエーリカに片手で拝むような仕草をしつつ、ごめんという意味を込めてウィンクする。
「もう!」
エーリカは怒って部屋を出て行ってしまった。
申し訳ない、エーリカ。必ずこの埋め合わせはするからな。
俺は三郎丸の匂いとモフモフ感を堪能しながらそう誓ったのであった。
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それでは次話もお楽しみに!




