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第185話 精霊樹の告白

竜太「やあみんな、久しぶり。土方竜太だ。ところでタケ、何聴いてんだ?」

斉藤「藤井風だが?」

竜太「舞は何聴いてるの?」

舞「私はギングヌーです。なんかはまっちゃっちいまして。先輩は最近何を聴いますか?」

竜太「…リエラだけど」

舞「えっ(マジで)?」

サキ「リュータ、好きな音楽聴いていいんですよ?」

リュータ「そうだよな?「TinyStars」とかお勧めだ。っていう事で『魔法修行者の救国戦記』スタートだ!」

礼拝所の磐座に上がった2人の森エルフの族長は、拝跪して何やら大声で呪文を唱え始めた。


俺達は2人の族長が取り仕切る儀式の邪魔にならないよう礼拝所から少し離れているのだが、離れた分だけ族長達が何を言っているかわからない。


「あの呪文にはどんな意味が込められているんだろうか?」


俺が傍のエーリカに尋ねると、エーリカは暫し耳を澄ませ、聞き取れた内容を教えてくれた。


「あれは古いエルフ語ね。全部は聞き取れなかったけど。最初は大精霊様への挨拶って感じで、次に森の民を率いたリュータが来ましたよっていう、要はそういう報告ね」


「なるほど」


すると、礼拝所の前に光の柱が立つ。やがてそれは朧げながら人の形となると、2人の族長に先導されるように俺達に前へと近づいて来る。


「エーリカ、こういう場合ってどうするんだ?」


「えぇ?どうだろう。私も知らないんだけど」


2人でそんな遣り取りをしていると、真琴が一喝!


「大精霊はこっちの神様なんだから、神社で畏むのと同じよ。それぞれの伝統に従って敬意を表せばいいんじゃない?」


「「なるほど」」


言われてみれば真琴の言う通りだ。流石は実家が神社なだけはある。


周りを見渡すと、この世界の人達は皆、両膝地面に着いて頭を垂れ、両手を胸の前で合わせている。


エーリカやサキ達も同じくようにしているし、斉藤や真琴達も然りだ。しかし、俺は釈然としないものがあった。大精霊(こいつ)のせいで俺達この世界に転移させられ、しなくてもいい苦労を背負わされたのだ。それでもここは空気を読んで嘘でも振りでも頭の一つも下げるべきなんだろう。だが、


"ちょっ、リュータ。何してるの!"


"先輩、気持ちはわからなくもないですけど、ここは大人になりましょうよ?"


エーリカと舞から咎めるような念話が送られて来たが、ここは意地を通させて貰う。それで一言でも文句を言ってやるんだ。


「異世界からの皆さん、ここまでお呼びだてして大変申し訳ありません」


って、先に謝られちゃったよ。先手を取られて、振り上げた拳はそおっと下に降ろす。


"向こうの方が一枚上手だったね?"


"大事な場面だからちょっと黙ろうか?"


揶揄うような念話が雪枝から来た。魔力の無駄使いだな、全く。


俺は一人立ったままだったので、自然と北の大精霊と対峙する形となる。


「貴方からの謝罪は受けます。ですが、前置きはいりません。単刀直入にお尋ねします。俺達をこの世界に転移させたのは貴方ですね?」


俺がそう尋ねる頃には朧げに人の形だった光の柱はしっかりか人の輪郭を形成していた。それから急速に人の姿になると、長い緑色の髪に緑色のワンピースのような貫頭衣を纏った色白の美しい女性となった。


「はい。向こうの世界にこの森の民を転移させたのも私です」


「その目的は何ですか?」


なんとなく、なんとなくだけど、北の大精霊が美女の姿になると、今一つ強めに出られないというか。気勢が削がれた感があるな。


「それに答えるには、まずこのエルム大森林の成り立ちから説明しなければなりません」


北の大精霊はそう前置きすると、滔々とこのエルム大森林の歴史を語り出した。


「もうどれくらい前の事か、ある時、この世界に一柱の男神が現れました。彼はこの世界の神々に自らをティーターンのプロメウスと名乗りました。プロメウスは別の世界から追放され、その際に戦いがあったのか体の至る所に傷があったといいます。その姿に恐れ慄いた神々はプロメウスに何が目的で、この世界に来たのか尋ねました。それに対してプロメウスは

「罪を着せられ、愛する者を奪われて追放された」

と答えました。そして更に元の世界に戻りたいので協力して欲しいとも」


「プロメウスの話を聞いた神々は彼を気の毒に思いながらも、彼の帰還を手助けした事により向こうの世界の神々と争いになる事を恐れ、また、プロメウスを元の世界に帰すには膨大なエネルギーが必要とされる事もあり彼の頼みを拒み、この世界からすぐに立ち去るように告げました」


ティーターンのプロメウス。これってギリシャ神話のティターンとプロメテウスの事じゃないのか?ギリシャ神話はあまり詳しくはないから断定は出来ないが。


「プロメウスは満身創痍で、傷が癒えるまで待って欲しいと立ち去りを拒むと、彼に敵意ありとしてこの世界の神々は彼を滅ぼそうと戦いを仕掛けます。プロメウスは手負いであっても強い男神で、戦いは長きに渡って続きました。しかし、多勢に無勢、遂に神々はプロメウスを捕らえる事が出来ましたが、強すぎて滅ぼす事は出来ず、結局このアースラ大陸の地下深くに幽閉して封印するに至ったのです」


「プロメウスという男神が封印されたのが、このエルム大森林という事ですね?」


「そうです」と頷く北の大精霊。


「プロメウスの力を恐れた神々は彼を地下深く封印しただけでは安心出来ず、2つの月の動きもずらして空から交互に監視させます。更に封印の地、エルム大森林にもプロメウスの監視と他者からの介入を防ぐために三本の精霊の樹を植えました。それが精霊樹と呼ばれる私達です」


北の大精霊の役割は、地下深くに封印されたプロメウスの監視と他者による介入の防止。エルム大森林と森の民の守り神ではなかった、と。


「私がこの地に根を下ろし、神々の申し付けを守っているうちにこの地は緑豊かで広大な森となりました。私はこの地を我が物にしようと企てる者達を排除してきましたが、周囲の土地で様々な迫害を受けてこの地に逃れて来た者達までは排除しません。そしていつの間にかこの地は互いに侵す者のいない平和で豊かな地となり、エルム大森林と呼ばれるようになりました。私は森の民となった彼等を見守るようになったのです」


最初は逃げて来た者達をお情けで見逃していた大精霊だったが、彼等に感情移入してしまったと。まぁ、そういう事もあるよな。何気に可愛いところもあるもんだ。


「しかし、その裏で魔神と呼ばれるようになったプロメウスは密かに加護を与えるなど地上の者達に干渉し、魔族と呼ばれる種族を生み出し、彼等を使って少しずつ着々と力を蓄えて来ていました。そしてここに来て魔王をして地上の人々の魂をエネルギーに変えて集めるよう命じたのです」


それが魔王による世界征服戦争という訳だな。うむ、と俺は頷いた。


「私の役目はこの地に封印されたプロメウスの監視と他者からの介入防止です。ですが、永きに渡り見守ってきた森の民達が魔神復活の贄とされる事を許す訳にはまいりませんでした。武力を振るう事が出来ない私は、自らの持てる力を使って出来るだけ多くの者達を魔王に魂を奪われる事が無いよう異世界に転移させる事にしたのです」


うん、そのお陰で俺はエーリカとサキとアーニャと出会う事が出来ました。それは感謝してますよ。


「ですが、私の分身である東と西の精霊樹が魔王の手に落ち、私自身にも魔王が干渉してくると状況は変わりました。魔王があなた達の世界に干渉出来るようになったのです。更に魔王が世界中で集めた魂が膨大なエネルギーに変換され、魔神の復活に足る量となりました。魔神の復活が間近に迫っているのです。私はこの事を伝えるため、まだ残っている森の民を救うため、あなた方にはこの世界に転移して頂きました」


北の大精霊はそこまで言うと口を噤んだ。彼女が何一つ嘘を言っていない事はわかった。たが、言っていない事もあるだろう。


「あなたが魔王の干渉を受けているとはどういう事ですか?」


俺の問いに北の大精霊は少し悲しげな表情となり、徐に口を開く。


「今、私の足が黒くなっているのが見えますね?では、遠目が出来る者に私の本体、その根元を見るように言って下さい」


遠目という事は千里眼でいいのか?俺はフレデリカに振り向くと、フレデリカは無言で頷く。そしてフレデリカは目を瞑って集中して千里眼で北の精霊樹を見る。


「ヒッ!」


するとフレデリカが小さく悲鳴を上げた。


「どうした、リッキー。大丈夫か?何を見たんだ?」


俺がフレデリカの元へ駆け寄ると、フレデリカは雪枝とサキに支えられていた。


「大丈夫です、リュータ教官。私が見た光景を念話で送りますから見て下さい」


俺が頷くと、フレデリカは再び目を瞑り念話の要領で千里眼で見た光景を映像として送ってきた。


目を瞑った俺の目の前にはフレデリカが見た精霊樹が見える。徐々に精霊樹に近付き、幹から根元へと視点が移ると、


「!?」


俺はその異様な光景に目を見張った(いや、目は瞑ったままだけど)。精霊樹の根元は真っ黒に変色していて、更によく見ればその表面には無数の見覚えある"角"が生やされていたのだ。


いつも『魔法修行者の救国戦記』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。


それでは次話もお楽しみに!


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