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第178話 思えばここまで来てたもんだ

斉藤には何か腹案があるらしい。


俺と斉藤はそれこそ小学生の頃からつるんでいるが、昔から俺達の間には俺が腕っ節担当、斉藤が頭脳担当という役割分担があった。後に中学高校で斉藤が生徒会長になり、俺が剣道部部長となると、俺達はそれぞれの得意分野と立場による権限を上手く使い、二人で協力して学校での生徒間諸問題を解決したものだった。いじめやら非行なんかのね。


要は二人で何かやる時は、斉藤が作戦を立案し、そいつを俺が実践していた訳だ。モンスターアタック以来、斉藤は参謀役に徹しているが、不慣れなリーダー役の俺は斉藤の助言には現在まで随分と助けられている。


しかも、今の斉藤には自前のIQ、発想力と知識に加えて魔法と予知能力(これも魔法だけど)もある。そんな斉藤が妙案があるというのだから、これを聞かないなどあり得ない。


「よし。聞いてやるから言うがよい」


「あぁ?」


「ごめんなさい、教えて下さい」


おお、怖や。かつて半グレ共を黙らせ、チャラ男共に小便をちびらせた鬼畜眼鏡(せいとかちょう)の眼力は異世界でも健在なようだな。


「なに、そう難しい事じゃない。リュウはそもそも何で北の精霊樹まで来たんだ?」


「何でって、戦兎族の女王が北の大精霊のお告げを受けたから、だが」


正確には、戦兎族のグレンダ女王が異世界から森の民を率いて転移して来た俺を神使として森の民と共に北の精霊樹へ導け、というものだ。


「これは北の大精霊からグレンダ女王が受けたお告げであり、リュウへのお告げではない。リュウに大精霊から何かお告げらしきものはあったか?」


「無いな」


「だから、本来なら俺達はグレンダ女王へのお告げに従う義務も必要も無かった」


斉藤はそう言うと確認を求めるように俺へ視線を向ける。


「まぁそうだな」


しかし、いきなり前振りも何も無くこの世界に転移させられた俺達は、他に動きようも無かった訳で、元の世界へ戻る鍵を求める意味もあってグレンダ女王へのお告げに従った行動をとった。


「だったら今の状況はどうだ?グレンダ女王は自分へのお告げに従って俺達をここまで導いた。俺達はお告げ通りに万難を排して森の民を率いてここまで来た」


「あぁ、そうだな」


そうだなとしか言えない俺も間抜けっぽいが、確かに斉藤の言う通りだ。


「お告げの言う北の精霊樹とは何処から何処迄が北の精霊樹なんだ?その事をお告げは明確に示していない。そしてここはもう北の精霊樹の目と鼻の先と言っていい場所だ」


例えば「富士山へ行く」は富士山頂まで登る事なのか、5合目か?それとも麓や山中湖や本栖湖など富士山を間近に望む場所はどうなのか?それは人によって解釈が分かれ、受け止め方も異なる事だろう。しかし、山中湖へキャンプに行ってお土産を買い、「富士山のお土産だよ」と言って友達に渡してもそれは嘘ではない。


「つまり私達は既にに北の大精霊のお告げをクリアしている、そう言う事かしら?」


真琴が斉藤の言葉を要約すると、斉藤は我意を得たりとばかりに大きく頷いた。


「そうだ。俺達はお告げにあった通りに森の民を率いてここまで来た。グレンダ女王は俺達をここまで導いた。お告げにそれ以上の事が無いのであれば、もう俺達はこれ以上お告げに縛られる理由は無い」


「なるほどな」


そうした解釈も有りか。


「だったらこれからの俺達はフリーハンドを得たという事になるな」


「そうだ」


お告げにある通りの事をしたのだから、これからの俺は俺の仲間達を第一に、元の世界に戻る事を目的に動く事が出来る。この世界の事はこの世界の人々でどうにかすべき事で、そこまで俺が面倒見られない。


思わず顔を見合わせた俺と真琴は頷き合うと、早速次の行動に移った。


「まずは皆を集めてこの事を話し合おう」


「そうね。声かけてくるね」


「頼むよ、真琴」


真琴は「了解」と言うが早いか、元の世界から一緒に来た仲間達を呼び集めるべく、この場から離れて行った。


「流石はタケだな。それでこの後の展開はやはりアレか?」


「そう。元の世界に戻るには俺達の意思で北の大精霊の元へ行かなくてはならない」


まぁ、結局は北の精霊樹にまで行かなくてはならない訳だが、ここで腐っているよりは余程いいだろう。

いつも『魔法修行者の救国戦記』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。


それでは次話もお楽しみに!


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