第177話 故郷とは遠くにあるとやっぱり帰りたくなるもの
成り行き上というか、真琴が上手くそういう流れに持って行ったというか。俺が恋人達全員にプロポーズした後、夜が明けてから俺は斉藤に昨晩の出来事について話した。
「そうか、おめでとう。で、式はいつなんだ?」
「流石に花嫁が7人もいるから、あまり大々的にするとなんだか刺されそうだな。まぁ、みんなにはウェディングドレスとか着てもらって身内だけの式を考えてる、ってそうじゃないだろ!」
「わかっている、冗談だ。だが、おめでとうは本当だぞ?」
「あ、あぁ、そのなんだ、ありがとう」
何だかやり辛いな。斉藤の奴、揶揄いやがって。
「で、何者かがリュウの意識に侵入して来たという事だったな?」
「そうだ」
斉藤は床几に座ったまま「ふむ」と言って腕を組む。
「だが、リュウ。お前はそいつが何者かと見当が付いているのだろう?」
斉藤の指摘に俺は頷いた。
「まぁな。俺の話を聞いてタケはどうだ?」
「俺も当たりは付くな。いっそ、お互い掌に答えを書いて見せ合うか?」
「それって水滸伝だっけか?」
「いや、三国志だ」
いや、まあ、どっちでもいいのだが。
「ぶっちゃけ、魔神だろうな」
「だろうな」
このエルム大森林の地下深くに名も知らぬ魔神が封じ込められている。そんな場所で俺の意識に接触して侵入出来る存在なんて魔神しかいない。
「それで魔神(仮)が帰りたいと言っていた、と?」
「あぁ。そうだ(仮なんだ)」
「他にはどうだった?」
他にか?う〜ん…
「理不尽に追放されたとか、愛する者を奪われたとか、それはもういいから故郷に帰りたいとか言っていたな。あとは景色が見えたよ」
俺は斉藤にあの時見た蒼空に白い雲、海鳥飛び交う島々に緑の大地について語った。
「その光景は一瞬であったような、もっと長かったような。だが今も脳裏について離れない。何というか、人間なんかまだいない太古の世界って感じだったな。飽くまで印象だが」
「リュウ、お前、その魔神(仮)にシンパシーを感じてるんじゃないのか?」
「シンパシーかどうかはわからないが、一人元の世界に帰りたいと思っていた時だったからな。お互いの思いが同調したというか、共鳴したとかは思っているよ」
「そうか。だが、今回リュウと魔神(仮)が同調でも共鳴でもして、双方にパスが繋がったかもしれないぞ?」
魔神(仮)との間にパスが出来る。それが何を意味するのか。そのパスから俺の精神が魔神(仮)によって侵蝕を受ける可能性を斉藤は指摘する。だが、それについては俺は特に懸念してはいない。
「まっ、大丈夫だろう。多分」
「何故そう言える?根拠でもあるのか?」
身内の恥を晒すようであまり言いたくないのだが。
「俺はそもそも物心つく頃から人を操る異能持ちの父親から精神攻撃を受けて育ったようなものだからな。そうした耐性は出来ているさ。それに、」
「それに?」
「俺は多分色々な存在に守られている。日本の神々から与えられた加護もそう。お前は俺をハーレムと揶揄うが、エーリカ達や雪枝にも俺は守られている。先程俺が恋人達にプロポーズする流れを真琴が作ったのも、恐らく真琴は何かを感じ、そうする事が必要と判断したからだと思う。根拠も何も無いが、そんなところだ」
斉藤は「そうか」と呟くと、組んでいた腕を解いて肩の凝りをほぐすように頚を左右に傾げた。
「お前がそう言うのなら大丈夫なんだろな、多分」
「多分な」
「多分か」
多分多分と繰り返し、久しぶりに俺達は笑い合った。
〜・〜・〜
この事は極秘事項、という訳ではないが斉藤と真琴と3人で話し合って知る者を限定させる事とした。この集団でなまじっか情報を漏らせば忽ち「あの神使とかいう奴、魔王と繋がってるってよ」くらいの尾鰭がついて広まりかねないからだった。
俺の仲間や、今や俺の配下のようになっている黒狼族は言うまでも無く、ある程度信頼関係を築くに至っている戦兎族や有志連合のアンドリュー達ならそんな心配する必要など無い。だが、北の精霊樹の近くまで来て急激に膨張したこの集団に於いて俺達や彼等も少数派になってしまっている。だったら、今や名実共に黒狼族の族長となったギュンター、戦兎族のグレンダ女王、有志連合のアンドリューと信頼出来る者達だけで共有するに留めておいた方が良いという判断だ。
だが、そうした事は実は大した問題ではない。俺にとってはこの膨れ上がった集団をどうすべきかの方が大きな悩みの種となっている。
そもそも、俺がこの北の精霊樹(の近く)まで来たのも「北の精霊樹まで森の民を導いて来い」という北の大精霊から俺宛のお告げがグレンダ女王にあったからだ。お告げがあったからといってそれをやる義務も義理も本来は俺にはない。だが、成り行きと何もしないと事態が進まない事もあったため、大汗かいてサラクーダ市を攻略してお望み通り森の民を率いてここまで来てみれば当の大精霊様は黙んまりで何か起きる兆しも無い。
しかも、知っていた事とはいえ北の精霊樹の周りには魔王国軍の大規模な戦力が守備隊として駐屯している。
「全く、どうしろってんだよ」
俺は意図的に愚痴を吐いた。エーリカ達に悩みや不満は溜めず、責任を感じすぎるなと言われて今更ながら俺も学習しているのだ。
「そうそう、その方がいいわよ(笑)」
そんな俺を見て真琴は満足気だ。
確かに悩みを口にすれば誰かしら手を貸してくれようとするものだ。
「リュウ、俺にその悩みを解決する妙案があるが聞くか?」
いつも『魔法修行者の救国戦記』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。
それでは次話もお楽しみに!




