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第169話 真っ赤な誓い

竜太「やあみんな、土方竜太だ。今回は読者のペンネーム「アナザーアギト」君からの相談だ」


「僕は高2男子で、幼馴染の女の子が好きなんです。朝起こしに来たりなんて流石に無いですが、同じ高校で同じテニス部なので今も登下校を一緒にしています。告白して彼女になって欲しいのですが、フラれたりしたら今までの関係を壊してしまいそうで恐いのです。僕はどうしたら良いでしょうか?」


竜太「君が好きになるくらいだから、他の男子もその子を狙っていると考えるべきだ。傷付くのが恐いのはわかるが、ここは勇気を持って告白する事を勧める。もしフラれたって努力して逆に惚れさせるくらいの男になればいいじゃないか!って事で『魔法修行者の救国戦記』スタート!」

俺はこの事態に対し当事者であるギュンターを念話で早急に呼び出す事にした。


ギュンターは俺からの念話で、その生存を絶望視していた姉が生きて、しかももう目と鼻の先にいると知り、黒狼族全員を引き連れて湖港の広場へやって来た。


「姉上!」


「ギュンちゃ〜ん!」


ギュンターとマチルダは抱き合い、再会と互いの無事を喜ぶ。黒狼族も魔王により部族はバラバラにされ、その多くが最前線で戦死したり、サラクーダ市では分体にされて魔神の贄にされたりと荊の道を歩まされて来た。そんな中での姉弟の再会、しかも2人とも族長の娘であり息子だ。黒狼族のみんなも一陽来復にほっとした事だろう。


と、俺は再会を喜ぶギュンターとマチルダを見てそんな事を思ったのだが、何だか聞いてはいけない系の呟きを耳にしてしまったのだ。


「チッ、あのブラコン姉の奴、生きていやがったか、しぶとい奴め」


驚いて思わず呟きが聞こえた自身の傍に目を向けると、そこにはギュンターの乳兄妹にして幼馴染のレイチェルが親指の爪を噛みながら忌々しそうにマチルダを見ていた。


レイチェルは俺の視線に気付くとパッと表情を柔かなものに変えてニコッと微笑むと、


「マチルダ姉さま〜」


と言いながら姉弟の元へと駆けて行った。


呆気に取られた俺と斉藤は思わず互いに顔を見合わせてしまった。


「あの娘、見かけによらず黒いな」


「あぁ、真っ黒だ」


俺は斉藤の感想に心から同意した。


〜・〜・〜


「マチルダ姉さま、ご無事で本当に良かったです」


レイチェルはギュンターとマチルダの間に満面の笑みを湛えてさりげなく割って入る。


「レイチェル、あなたも無事で良かったわ」


マチルダも微笑みながら割って入って来たレイチェルをナチュラルに押し戻そうとする。


「フフフッ」

「ウフフフッ」


ギュンターを巡り笑顔で牽制し合う彼の姉と幼馴染。きっと将来でも嫁と小姑となって続くのだろう。ギュンター、ドンマイ!


「お前も他人事じゃないんだぞ?」


「俺の所は上手くいってる」


俺の肩に肘を乗せて斉藤が余計な事を言う。俺は奴の肘を払い除けながら、ほんの少しだけ抱いた不安を軽く頭を振って打ち消した。


結局のところ、キャストン市にいたハグレ魔族の集団は有志連合軍が受入を拒否したので、俺達満峰集団が面倒見る事となった。なんといってもギュンターの姉を始め黒狼族の人狼達がいるのだ。それに俺達の中には元々サラクーダ市で保護したガミラーゼ族もいるのだから黒狼族以外はダメよとは今更言えないだろう。まぁ、鬼族にはちょっと引っかかるものはあったが、もし不穏な動きをするようなら人知れず殺してしまえばいいしな。


〜・〜・〜


キャストン市は領民避難時の混乱で建物の破損が幾らか見られ、その後無人となって手入れが無いまま放置されたため街並みは荒れていた。ただ、住み着いたハグレ魔族達が自分達の生活圏内の道路や側溝などのインフラを多少は整備していたからか、ブレンズマック市のように全くのゴーストタウンといった感じは無かった。


その日は昼前になって全員がキャストン市に到着した。そのまま昼の大休止として昼食を摂り、明後日の出発のため市内の破壊の少ない家屋に分宿。俺達はアーニャの希望で彼女の実家でもあるキャストン城に行く事となった。


キャストン城はレマレード湖に突き出た半島上の小山に築かれた城だ。石造りの城壁に四隅に尖塔があり、北の尖塔は一際大きく堅牢な作りで、城壁も湖に向かって突き出て城の中の城といった感じになっている。湖側からこの城を攻めるのはこの世界の技術では困難であり、攻め口は半島の陸側からしか無いので食糧さえ続くなら難攻不落と言っていいだろう。


アルベルトさんが領民を避難させた後、最後に城の留守部隊が後から来る魔王国軍に城内に兵が居ると思わせる措置を施して湖から脱出している。そのため城は魔王国軍から攻撃を受けて城門は破壊されていた。


城は外観こそ城門以外の破壊はあまり見られなかったものの、城内に入ると室内は伏兵を恐れた魔王国軍の兵達により隈なく荒らされていた。アーニャはその光景に目を見張ると、悲しそうな表情となって俯いてしまった。


俺達は言葉もなく見守るしかなかったが、アーニャは気丈にも顔を上げると、俺達をとある部屋へと案内した。


北の尖塔でアーニャが隠し扉を開くと、そこには岩盤を掘削して作った地下階段があった。どうも緊急時の脱出路のようで、階段を下って行くと湖に口を開いた洞窟のような船着場に出た。


「ここは城から舟で脱出する時に使うの。外からも見てもわからないようにカモフラージュされてる」


そして更にアーニャが船着場の奥にある分厚い隠し扉を開くと、そこは広い隠し部屋。


「この部屋は城内で謀叛があったりした場合に隠れる部屋」


アーニャが照明の魔道具で室内を照らすと、調度品の数々が見てとれる。大型のテーブルに幾つもの椅子、ソファー。食糧などが入った樽。壁側に置かれた棚や大型の箪笥状家具。


「所謂セーフハウスって訳ね」


室内を見回しながら真琴が呟くとアーニャは僅かに頷き、棚の抽斗から幾つかの筒状に丸められた紙を取り出した。


「これはエルム大森林北部の詳細な地図と北の精霊樹の見取り図」


アーニャが丸められた地図を開くと、それは確かにエルム大森林北部の詳細な地図と北の精霊樹の見取り図だった。


「この世界の測量技術も製図技術もなかなかだな。この地図の有る無しで行動の幅が大分変わる」


斉藤も地図を見て感嘆の声を上げる。確かに俺達は今まであまりに行き当たりばったりな行動をして来ていた。それは意図せずこの世界に転移させられた上に、お告げだ何だと振り回された結果ではある。しかし、何が待つとも知れない北の精霊樹へ向かうという最終目的を果たさんとする今、味方となっている人達の生命や元の世界への帰還などを考慮すれば、これからの行動にアーニャの地図があるというのはこの上ない強みとなる。


「有難う、アーニャ。助かるよ」


「…うん」


俺が礼を言うと、アーニャは少し照れたように小さく返事をしてそっぽを向いた。くっ、可愛いな、このツンデレさんめ。


それからアーニャは皆にセーフハウス内の武器類を運び出すように頼んだ。


「ここにある武器はいずれも魔剣や業物ばかりだから、このまま放置するには惜しいの。気に入ったり相性が良いのがあったらそのまま自分の物にしていいから」


武器類は壁付の大型箪笥の抽斗を開けていくと、出て来るのはアーニャの言った通りの素晴らしい業物の数々。ざっと見ても運び出せない数ではない。皆手に取っては「おぉ!」とか「これ凄い」など感嘆の声を上げながらテーブルの上にと運び出す。


その中でアーニャが取り出したのは一振りの片手剣と小盾。どちらも強力な魔力を帯びている。片手剣は赤味のある少し厚めな剣身で、その表面には魔術的な紋様が刻まれている。小盾はアーニャの前腕がすっぽり覆われる大きさで、その表面は赤く鏡面のような光沢を放っている。


アーニャが小楯を左腕に、右手に片手剣を構えるとどちらもアーニャの魔力に呼応するかのように淡く赤く輝いた。


おぉーっ!と黙って見ていた皆が歓声を上げる。


「この剣と盾はキャストン侯爵家の家宝でクラデニェッツとクラースナヤロース。リュータ、私、これでもっともっと戦えるから!」


剣と盾の赤く淡い光は、アーニャの言葉が終わるとより強い光を放ち、アーニャの赤い髪にも映えて彼女の全身を赤い光で包み込んだ。





いつも『魔法修行者の救国戦記』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。


それでは次話もお楽しみに!


平賀・キートン・太一

「人間は一生、学び続けるべきです。

人間には好奇心、知る喜びがある。

肩書や、出世して大臣になるために学ぶのではないのです。

では、なぜ学び続けるのでしょう?


…それが人間の使命だからです。」


『MASTERキートン』3巻より


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