第167話 ハグレた魔族との接し方
サキ「ねぇリュータ、この時季サクラがとても綺麗で、お花見っていうパーティーをするんでしょ?」
竜太「そうだな。重箱に料理を詰めて、花の下に敷物敷いて料理摘みに酒飲んでって感じかな」
サキ「私達もやりましょうよ?」
竜太「それはいいけど、朝早く寒いうちから場所取りして低体温になったり、酔って暴れる奴と喧嘩になったり、ゲロ吐いたり、吐いたゲロを喉に詰まらせたり、最悪死人が出たりするぞ」
サキ「えぇ、お花見ってそんなに恐ろしいものなんですか?」
雪枝「それは極端な例でしょ?お花見は互いの距離と人数と酒量と常識を弁えて楽しくやれば大丈夫って事で、『魔法修行者の救国戦記』スタートです!」
舞「先輩、サキちゃん脅してどうするんですか!」
竜太「でも、お花見ってそういうものじゃ…」
真琴「それ、どこの体育会よ。今時無いわよ、…多分」
滞在していたノービス川沿いの小さな都市ブレンズマック市から再びノービス街道を北上、遂に俺達はアーニャの故郷キャストン侯爵領は領都キャストンに到着した。
ノービス川の内陸側を通るノービス街道は、日本で言うなら甲州街道といった感じで高台を通っている。そのためノービス街道から見下ろすノービス川からレマレード湖、そして湖に突き出した半島の小山の上に築かれたキャストン城と湖畔の城下町の風景はとても美しく、一幅の絵画のようだ。
「リュータ、あれが私の故郷、キャストン市」
アーニャは約3年ぶりの故郷が嬉しいのだろう。いつもより声が上ずっている。
俺達の仲間にはアーニャの他にもキャストン侯爵領出身者が3人いる。アーニャ付きの猫獣人ソラ、リエ、アイの3人娘だ。その他にも有志連合軍には隊長のアンドリューを始めキャストン侯爵領出身者が多く、何となく全体的にうきうきとした雰囲気が醸し出されている。
と、ここで隊列の先頭を進んでいた有志連合軍のアンドリューから伝令が遣わされて来た。その伝令によれば、有志連合軍の先遣隊がキャストン市で魔族の集団と遭遇したという事だった。
「その魔族の集団は魔王国軍の部隊か?」
「いいえ、幾つもの種族からなる魔族の集団との事です。こちらとの積極的な交戦の意思は無いようで、現在先遣隊と対峙しているとの事です」
魔王国軍ではない魔族の集団。「積極的な」交戦の意思は無いが先遣隊と対峙している以上大人しくこちらの言う事を聞く訳でもない、と。
アンドリューから寄越された伝令は歳の頃は16歳くらいの女性兵士。羊獣人でショートにした少し癖のある金髪から一対の黒く小さな巻角が顔を出している。それととても可愛い。
「伝令さん、ご苦労だがアンドリューに俺が着くまで行動を起こさないで自重するように伝えてくれ」
「ははっ、神使様到着まで自重するよう伝えます」
羊獣人の伝令は片膝を突いたまま復唱すると、「では」と一礼するとアンドリューの元へ戻って行った。
「先輩、その魔族集団ってハグレじゃないでしょうか?」
「ハグレねぇ」
アルメウス公爵の一件からもわかる通り、魔王国も決して一枚岩ではない。歴代魔王を輩出する鬼族による圧迫や、"角"によって族長を支配下に置く事によって各種族の反乱を防止するなどの策が功を奏して表向きには何事も無いように魔族の各種族は魔王に従っている。しかし、その実不満が高まっているようだ。
アンドリュー達有志連合軍によれば、そうした反魔王の不満分子が戦場から隙を見ては離脱して徒党を組んでおり、そうした魔族の集団をハグレと呼んでいるのだそうだ。
「北の精霊樹にはエルム大森林に侵攻した魔王国軍の本隊が駐留しているから、魔王国軍からの脱走兵がいてもおかしくないわね。まして、隠れ住むのに丁度いい城主も住民もいなくなった都市があるしね」
舞と真琴の分析は当を得ている。確認はこれからになるが、多分そうだろう。
さて、ハグレか。キャストン市には厄介な連中が住み着いたものだ。これが単に魔王国軍の部隊だったら話は簡単で、要は殲滅してしまえばよい。だが、ハグレとなるとそうは出来ず、彼等は魔王国軍からの離脱者、脱走兵なので魔王国軍とは言い難い。と言っても彼等も歴とした魔族。
勿論、全ての魔族が敵ではないのも事実だ。現に俺達の中にも元魔王国軍の黒狼族がいるし、サラクーダ市で保護した肌の青いガミラーゼ族という魔族もいる。そもそも、エルム大森林には少数ながら魔族も住んでいて、獣人族やヒト族、エルフ族なんかとも共存していた。
「まぁ、実際に会ってみないと何とも言えないよ。魔族だって色々だろうし」
「そうね、敵対しないのなら放置してもいいんじゃない?」
雪枝とエーリカは穏便に済ませましょうといった感じか。ずっと戦闘続きだったからな。ちょっとした話し合いで済むならそれに越した事はない。
ただ、問題は魔王国軍に故郷を侵され、家族や友人達を虐殺された有志連合軍の兵達だ。伝令は魔族集団と先遣隊は対峙していると言っていたが、そういった憎しみがあると緊張状態からいつ暴発しないとも限らない。ちょっと急がなくてはならないか。
〜・〜・〜
俺はキャストン市へ向かう隊列の真ん中辺りにいたのだが、そうした訳で俺は一足先に先遣隊と合流すべくキャストン市へと急いだ。
キャストン市はアーニャの父であるアルベルトさんが全ての領民を魔王国軍の侵攻に先だってサラクーダ市へ避難させていた。そのため街並みは魔王国軍からの攻撃や焼討ちには遭わずに温存されている。
俺が湖港の広場に到着すると、件のハグレの魔族達と有志連合軍の先遣隊とが睨み合っていた。ハグレの魔族達は50人ほどだろうか、先遣隊とほぼ同数だ。
先遣隊の隊長と睨み合っているのはハグレ魔族のリーダーらしき若い女性の魔族。その女性は一見ヒト族に見えるのは人狼か吸血鬼か。長い黒髪を後ろで束ねた少し大柄のキツめな色白の美人で、ボンキュッボンなダイナマイッなボディだ。
ハグレにはヒト族の姿の魔族やガミラーゼ族に鬼族、ケンタウロスやリザードマンもいる。
「だから何度も言っている。私達は有志連合軍と事を構える気は無い!」
「だったら武装を解除して降伏しろ」
「それは出来ないとも言っている」
ハグレのリーダーと先遣隊の隊長との言い争う声が聞こえる。ハグレが武装解除を拒むのは、その後で皆殺しにされかねない可能性があるからだろう。武装を解除してしまえばそのまま殺されても文句も言えず、縦しんば殺されなくても言いなりになるしかない。それに、どうも先遣隊はハグレに命の保証について何も言っていないようだ。先遣隊にその権限は無いのかもしれないが、そこの保証をしなければ話は進まないだろう。
俺は少し遅れて到着した斉藤にチラリと視線を向けると、斉藤も苦虫を潰したような表情で頷いた。では、一つトラブル解決と行こうか。
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それでは次話もお楽しみに!
オビ=ワン・ケノービ
「フォースを使え、ルーク。使うんだ、ルーク。」
『スターウォーズ エピソード4』より




