第164話 青い炎
竜太「やあみんな、土方竜太だ」
アーニャ「ねぇリュータ、最近私「婚約破棄」ものにハマってるんだけど、あの婚約破棄って法的に有効なの?」
竜太「う〜ん、王子と公爵家の令嬢との婚約がよくあるパターンだけど、この場合、王家と公爵家との契約になるから、当事者とはいえ王子には何の権限も無い。仮に王子が文章にすれば令旨という命令書になるけど、その上の勅令で婚約しているから効力は無いだろう」
サキ「という事はこうした場合の「婚約破棄」って、単なる王子の「婚約破棄してやるからな!」っていう宣言に過ぎないんですね?」
竜太「そういう事」
アーニャ「じゃあ、公爵家令嬢は「そう伝えておきます」って帰ればいいの?」
竜太「そうだね。まぁ、その令嬢もそんな王子と結婚したくないだろうけどね、って事で『魔法修行者の救国戦記』スタートだ!」
サキ(ふふっ、私がNTRざまぁにハマっているとは、リュータもまさか思ってないでしょ)
「リュータ様、僕が父の、あの分体の相手をします。その隙に魔術師を殺って下さい」
極めて強力な分体の存在にちょっとした手詰まりとなっていた俺にとり、このギュンターの提案は願ったり叶ったりだ。だが、ギュンターが相手取るのは分体といえどギュンター自身の父親だった分体だ。
分体となったとはいえ、父子を戦わせていいのかという倫理的葛藤がある。また、あの極めて強力な分体とギュンターが戦い、果たしてギュンターに勝目があるのか、という問題もある。
「リュータ様、身内のけじめは身内でつけます。分体に身を落としたとしても父は父です。他の誰にも父を討たせたくありませんし、僕でなければ父は討てません」
他の誰にも父を討たせたくない、か。確かにそうかもしれない。目の前で父親が誰かに討たれる。その場合、ギュンターの父は魔王の手先、魔神の贄として討たれる事を意味する。だが、ギュンターならば、実の息子ならば子が父を討つという歴史上割と有る事象となろう。どちらがギュンターの父の名誉を守るかは自明の理だ。
俺は黙ってギュンターの背中に右手を当てると、ギュンターに俺の魔力を流して分け与えた。
「あっ、リュ、リュータ様…、力が漲る感じがします」
「よし、ギュンター、頼んだぞ」
「はい!」
そうして実の父を討つギュンターの戦いが始まった。
〜・〜・〜
☆ギュンター視点ー
父は必ず僕の手で討たなければならない。そうでなければ父は魔王の分体として魔物同様な存在に成り果ててしまう。誇り高く、最強の黒狼族の戦士であった父がそのような最期を迎えるなど、僕には到底許せるものではない。
僕の願いを聞いてリュータ様は逡巡していたけど、僕の思いは通じたみたい。黙って背中からご自身の魔力を分け与えてくれた。
それは燃えるように熱くて、痺れるような魔力。忽ち下腹の辺りがカッと熱くなると、グルグルと回って全身に力が漲った。
「よし。ギュンター、頼んだぞ」
僕はリュータ様の期待に応えるべく、大きく「はい」と返事をした。
〜・〜・〜
僕の父は只々大きく強い人狼だった。その巨躯と加速力に魔法で更に強化した膂力を生かした力技は凄まじい破壊力を発揮し、肉弾戦ならば魔王にも勝るといわれていた。
その父が今は魔王の分体にされてしまっている。父ほどの戦士が鬼族如きに遅れを取るとは思えず、きっと部族自体を質に取られて脅迫されての結果なのだ。その犠牲の上に今の僕達がある。僕は魔王を憎む。その存在自体が許せないくらいに。
だから、自らを犠牲とする事により、例え僅かであっても黒狼族が生き残る道をつけた父をこのまま分体として誰かに討たせる訳には出来ない。息子である僕の手で父を討ち、矛盾しているようだけど、父をこの手で討つ事によって父の仇を討ちたいのだ。
リュータ様の魔力を得て僕の全身に力が漲る。父との思い出も感傷も振り切り、今、僕は男として、次の族長として挑む。
「父上、ギュンターが参ります。お覚悟を!」
〜・〜・〜
僕の覚悟に勿論父は無反応だ。だけど、リュータ様達より前に出た僕を敵対者と認識したようだ。父は左足をずいと一歩前に出して前傾に構えると、ショルダーアタックを仕掛ける態勢をとる。人狼であった父ならば、今この瞬間にも僕は父のショルダーアタックを食らって吹っ飛んでいるはずだ。そこが人狼の父と分体にされた父との違いだ。
僕は父が構えて動き出すまでの一瞬の間に加速すると、父の右下腿に足払いをかける。ショルダーアタックを仕掛けようと左足に体重を乗せていたため、父は前のめりに転倒。すかさず僕は父の後頚部を踏み抜いた。
これで普通の生き物なら終わりだ。頸椎が折られたら死ぬか、死なないまでも動く事は出来なくなる。だけど今の父は分体だ。頸椎を折られて動けなくなったのも束の間、すぐに起き上がると裏肘打ちで僕を薙ぎ払おうと右腕を振るった。でも僕は既に後方に退避していて、難なくその斬撃を躱す。そして空いた腹部に魔力を込めた右手の貫手を突き刺した。
異様に硬い腹筋を魔力が込められた貫手が貫く。僕はそのまま腹腔内に達した貫手で左に父の腹を掻っ捌いた。
腹圧ではみ出る腸。それでも父の動きに支障は無く、父の右肘が僕の頭に落とされたけど、これも左に転んで避ける。僕はそのまま父の背部に回ると、左の背部から心臓を目掛けて僕のありったけの魔力を込めた貫手を放つ。
〜・〜・〜
言うまでも無い事だけど、僕は父の息子だ。大きくて強い父を見て育ってきた。父は持って生まれた恵まれた体格と能力で、最強の名を欲しいままにしてきた。僕は母に似て人狼の男としては小柄な方だ。だけど、僕は族長の息子として次の世代の黒狼族を率いらなければならず、そして人狼の長には強さが求められる。当然僕の目標は父であり、常に父を倒せるよう弱点を探し研究を続けたのだ。
父の弱点は長所である体格と膂力だ。それは長所の裏返し。父は体が大きく、その分膂力があり加速力もある。逆に僕は小柄で膂力もあまり無いけど加速力があり小回りが利く。
僕は自らの長所を生かし、父の弱点に徹底的に付け入る戦法を考えた。それはどうにか大柄な父の内懐に入り込み、その死角から攻撃して出血を強いて致命傷を与えるというもの。
〜・〜・〜
僕が放った貫手は父の背中の皮膚と筋繊維を割ると、強靭な肋骨を砕き、そして心臓を貫いた。分体となった父はそれでも悲鳴一つ上げない。僕は貫手の指を鉤状に曲げると、その鉤に心臓を引っ掛けるようにして父の体内から右手を引き抜いた。
心臓を切り裂き、破壊した。致命傷のはずだ。それでも父は右に振り向きながら裏拳を食らわそうとした。僕は咄嗟に身を反らして父の腰に前蹴りをし、その反動を利用して後方に倒れて父の裏拳を避けた。
裏拳が空を切り、そのまま後ろに倒れそうになる父であった分体。父は足を踏ん張って体を持ち直すも、心臓を切り裂かれた体ではそこまでだった。僕が貫いた傷口から青い炎が吹き出すと次第に体中が炎に包まれ、父の身体は立ったまま倒れる事も崩れる事も無く燃え尽きていった。
(父上の跡を継いで黒狼族は僕が必ず守ります。泉下で見届けて下さい)
父だった分体を焼き尽くす青い炎を見ながら、僕は父に代わって黒狼族を率いる覚悟を新たにした。
〜・〜・〜
☆リュータ視点ー
ギュンターとギュンターの父だった分体との戦いが始まった。分体による守りを失い無防備となった鬼族の老魔術師。それでも一人で呪文?詠唱?を唱え続ける。
俺は雷を右手から放つと、その直撃を受けた老魔術師はバリバリバリという電撃音とスパークする閃光に包まれた。そして「ガアッ」という呻き声を上げるや全身を硬直させ、そのまま丸太のように倒れると痙攣し、そして動かなくなった。
老魔術師の呪文だか詠唱だかは雷撃によったて途切れた、と思う。俺は一応うつ伏せで床上に転がる黒焦げの老魔術師を蹴って仰向けにする。雷撃を受けて老魔術師の死体の体表は黒く炭化した部分が多く、そうした部分から弾けた筋繊維を晒していた。
(まぁ、死んでるだろ、これは)
俺はそう思って更にこの死体を爪先で突くと、突然死体の両眼がクワっと開き笑い出した。うわっ、気持ち悪っ!
「フッフッフッ、儂はとうに魔神様にこの命捧げておるわ」
自らアンデット化しているという事か。ご苦労な事だな。
「詠唱は最後まで唱えられなかったが、魂送りには支障は無い。これでエルム大森林で集めた10万人に及ぶ魂は魔神様の元へ送られ、復活のための贄となろう。今更儂を殺したとて、もう遅い」
ま、まさかこの俺が、よりによってあんな老魔術師に「もう遅い」されるとは!
いやいや、そうじゃなくて、もう魂送りとらは終わった、という事か?
鬼族の老魔術師、改めアンデット老魔術師は言ってやったといった表情(顔面の皮膚も表情筋もズタボロだが)をしやがった。
すると、魔法陣の上でゆらゆらとたゆたっていた10万人分の魂という青い炎が縦長に伸びて渦を巻きはじめた。そして、下を頂点とする円錐形に形状を変化させると、回転しながら徐々に下降して魔法陣へと吸い込まれて行った。
「おお、魔神様。儂等の「うるせえ!」
俺は何やらほざき始めたアンデット老魔術師の胸に雷丸を突き刺し、刀身に魔力を通してその身体を一瞬で燃やし尽くした。
いつも『魔法修行者の救国戦記』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。
それでは次話もお楽しみに!
『シグナルバイク!ライダー!』
「Let’s 変身!」
『マッハ!』
「追跡、撲滅、いずれも・・・マッハ!! 仮面ライダー~~~マッハ!!」
『仮面ライダードライブ』より




