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第162話 人狼対元人狼

真琴「やあみんな、朝倉真琴よ。忘れちゃた人も多いかもしれないけど、私は現職の情報将校、今も異世界での情報収集を続けているの」

舞「真琴さん、ワイバーンの動画撮影に成功しました」

真琴「有難う、舞。どれどれ見せてみて」

舞「はい、これです」

真琴「ぶっ、これ、竜太の水浴びシーンじゃない!」

舞「はわわ、間違えちゃった。それじゃあ、『魔法修行者の救国戦記』スタートです!」


真琴「舞ちゃん、わかってるわよね?」

舞「は、はいっ。動画送りますです」

暗闇の向こうで気配も魔力も感じさせず佇む分体ども。正確な数はわからないが20〜30はいるだろうか。単純な数だけならばこちらが優位にあるが、問題はあの加速、今までの分体になかったコンビネーション。あの分体どもは元黒狼族の人狼であるという事。



こいつらを相手取るにこの暗闇環境は俺達にとって著しく不利だ。俺はエーリカとフレデリカに光魔法で辺りを照らすよう念話で要請した。


すると二人が上空に浮かべた光球によって照らし出される分体群。微動だにしない奴らに俺は躊躇なく熱線を浴びせかけた。最も手前にいる分体は俺が放った熱線に胸を貫かれ、熱線はその後ろにいた分体をも貫く。二体の分体はその直後に高熱によって全身が燃焼して崩れ落ちた。


その直後、危険と判断したのか分体は密集態勢から分散し始めるも、俺は更に二体の分体を熱線で燃え上がらせた。エーリカとフレデリカの光魔法もそう長くは保てない。殲滅するなら今の内だろう。


「リュータ様、お待ち下さい」


輪陣形から抜け出たギュンターが声を上げた。


「どうした?」


「はい、あれらの分体。元は黒狼族の人狼です。あの加速が出来るのは人狼以外にはいません。同族の始末は同族でつけさせてください、お願いします」


人狼vs元人狼の分体。


分体の加速は人狼と変わらなかった。ただ、分体の方が膂力に勝り、回復力は桁違い。しかも分体は感情が無いから互いの蟠りも無く、恐れ知らずでチームワークもバッチリだ。


これに対して黒狼族は分体よりも数で勝るのが唯一のアドバンテージと言える。


「わかった。その代わり危なくなったら介入するからな?」


「了解です」



黒狼族の人狼達は輪陣形から出ると、その数は50人。魔法組が分体の動きを牽制して、ギュンターとバールを中心とした横隊を組み、分体群と対峙する。


「聞け、魔王により姿変えられた同胞達よ。お前達の無念、怒り、恨みはこの黒狼族族長の息子ギュンターが全て引き受け、必ずや晴らしてみせよう。今、この手でお前達に引導を渡す故、泉下で待つが良い」


毅然とギュンターは分体どもに宣言する。無論、分体どもからは何のリアクションも無い。自我が奪われ、魂すら変質させられているのだからそれも当然だ。もしかしたら、既に分体の中には魂も無いのかもしれない。だが、それでもギュンターは分体にされた同胞達にそう言わずにはいられなかったのだろう。


黒々とした人狼達は身体強化の魔法で全身から淡く光を放ち、更に一回り身体が大きくなったようにも見える。


「かかれ!」


ギュンターのかけ声で人狼達は加速に加速をかけた重加速で一斉に分体どもに襲いかかり、両者の戦いの幕が切って落とされた。



キン! ガキンッ! ビシッ! ドゴッ!


俺達の前で繰り広げられる人狼と元人狼の分体との戦い。双方が爪で牙で切り結び、あちこちで火花が散る。


だがしかし、動きが早すぎて全く見えないんだよね、これが。


「魔法で動体視力を強化してもよく見えませんね、先輩」

「そうだな。こう早いと下手に援護も出来ないな」


戦っている黒狼族の人狼以外である俺達は彼等の戦いを傍観するしかない。だが、次第に戦況がわかってきた。黒狼族が徐々に分体どもを押し始めたのだ。


それはどういう事かというと、


ドカン!


今、俺達の前に全身にかなりな深傷を負わされた一体の分体が飛ばされて来た。


分体は頚部を切断、頭部や心臓を破壊するか、全身を高温で燃やすなどしなければ殺す事が出来ない。なので、このまま放置すればこの深傷を負った分体も外傷が回復して戦列に復帰してしまうだろう。


「アミッド、止めを刺せ!」

「了解、兄貴」


アミッドは素早く目の前に倒れている分体に近付くや、その頚部を抜刀して刎ねた。


このように負傷して戦列を離れた分体に魔法組や獣人達が次々と止めを刺す。勿論、黒狼族の人狼にも負傷者が続出したが、すかさず回復魔法で治療する。余程重症でなければ彼等は回復と同時に戦列に戻るため、次々と個体数を減らしてゆく分体どもを黒狼族が圧倒。そして黒狼族の人狼達は遂に残った分体どもを包囲すると、一体も残さず殲滅した。


流石に黒狼族の人狼の能力を引き継いだ分体の戦闘力は凄まじいものがあった。黒狼族の人狼でなければ対処が難しかっただろう。だが、数で劣勢だったとはいえ、人狼だった分体は人狼の能力に分体の膂力に回復力が加わり、単体では人狼よりも戦闘力が上回るように思えるのだが、果たしてギュンター達の勝因はどこにあったのだろう。


俺は分体との戦いを終えて凱旋したギュンター達黒狼族を労うと、ギュンターに勝因について尋ねてみた。


「確かに人狼の能力を引き継いでいたので分体は強力でした。ですが、戦いが始まると、彼等が行動に移る際に一瞬の間が空く事に気付いたのです。この一瞬の間は加速した高速戦では致命的になります。それがわかったので、その間を突けば容易に倒す事が出来ました」


これを聞いた斉藤曰く、


「脳の機能に角が介入する事によって正常な機能が阻害され、認知、判断、行動の流れの何処か、もしくは全てに抵抗が発生しているのではないか?」


との事だった。


俺はそう事もあるだろうなと思いつつも、宿主となった者が角によって身体も魂も変えられながらどこかで必死に魔神の支配に抗っているのではないかと思ったりした。勿論、根拠なんて何も無いが。


全滅した分体達は元はギュンターの部民であり、黒狼族の皆にとっては同胞だった者達だ。姿形が変わり誰にも元の姿をそこに見出す事は出来ないが、どれかが誰かの家族、親戚、友人、知人だったかもしれない。


更に地下5階の奥へ進む前に、俺達は分体達の亡骸を魔法陣の中心に集め、それらに火魔法で炎を放って荼毘に付すと、全員で彼等の冥福を祈って黙祷を捧げた。




いつも『魔法修行者の救国戦記』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。


それでは次話もお楽しみ!


「今日は、副師団長はじめイタリア人帰国者の送別会。イタリア人は日本人が好きで、何かあるたびに招かれます。アルコールも入ってきて上機嫌になると過去の同盟ネタになることも。「今度も一緒にやろうぜ。」と言われ、笑いながら心の中で「No」と答える。」


『自衛隊イラク日報』より


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