第161話 凄く暗い地の底から
雪枝「は〜い、今回は私が仕切ります。みんな、それぞれ種族が違うけど、お兄ちゃんと結婚して赤ちゃん出来たらハーフになるの?」
エーリカ「エルフの場合はハーフになるわね」
サキ「え〜?、私とリュータの赤ちゃん?(てれ)」
アーニャ「(うざっ)…獣人の場合はどっちかね、ヒトか獣人かの」
ユリィ「獣人でも戦兎族からは戦兎族の兎獣人しか生まれないの」
雪枝「みんなやる気満々ですねって事で、『魔法修行者の救国戦記』スタートです!」
舞「そう言う雪枝ちゃんの好きな人は誰かな〜?」
雪枝「内緒」
サラクーダ大学第2キャンパスの5層からなる地下空間。地下1階から4階までは魔術に関する研究室や実験室であったようだ。だが、保護したアンリによれば地下5階は元々がサラクーダ大学の学生にとっても伝説の謎空間で、魔王国軍が進駐する前から立入禁止だったそうだ。
アンリは魔王国軍の魔術師によって角を寄生させられて連中の奴隷にされ、初めて地下5階に入る事が許されたという。
「地下5階はその上層階とは異なり、より深く広く掘削された広大な空間で、まるで何かの儀式を執り行うための神殿のような感じでした。地下5階の中央、縦坑の最底部に当たる部分には見た事の無い魔法陣が描かれています。魔王国軍の魔術師もサラクーダ大学の魔術師も皆そこにいます」
アンリは角によって魔王国軍の奴隷にされて、後に地上と地下の連絡役とされても地下5階では用が済めば早々に追い出されていたそうだ。
「地下5階の魔法陣というのがこの場合の肝だな。タケは何だと思う?」
俺が斉藤に尋ねると、「うむ」と考え込んだ後、飽くまで可能性の一つと前置きして自説を展開した。
「俺が思うに、その魔法陣は角によって変質した魂を集めて魔神に供給する一種の装置なのではないか?」
有り得ると俺も思う。
「そうですね、ここなら魔神に直近、直結ですからねぇ」
「そうね、宙を飛ぶか、地に潜るか。どちらにしても魔神が封印されているという中央山地には近いわね。有り得るかしら」
舞と真琴がうんうんと頷き合う。
「ここで議論していても始まらないわ。どの道、魔術師を締め上げればわかる事なんだし」
「そうそう、ユリィの言う通り。ちゃちゃっとやっちゃおうよ?」
と、戦兎族の2人は焦ったそうだが、確かにここで手をこまねいている訳にもいかない。俺は兎も角地下5階の攻略に取り掛かる事にした。
〜・〜・〜
地下4階から地下5階へと縦坑を降る。
地下5階までは更に深く、螺旋状で岩盤を掘削して作った階段はひたすら距離が長く感じられる。下を覗き込んでも底は見えず、只々暗闇しか目に入らない。
辺りは静寂に包まれ、ザッザッという俺達の足音と、ひゅ〜うという時折吹き付ける風の音しか聞こえない。誰もこの雰囲気に呑まれてか、喋る者はいない。このまま底に着く事無く延々と降り続けるんじゃないかという錯覚に陥りそうだ。
地下5階に降るに際して雪枝は式神を打ち、フレデリカは千里眼で探ってくれたが、結果はそれぞれ芳しいものではなかった。暗くってよくわからなかったという。
そして、漸く地下5階、縦坑の底が見えて来た。どうしてわかったかといえば、例の魔法陣が淡い光を放っていたからだった。
魔法陣の事は良く知らないが、直径10mほどの円の中に六芒星が描かれ、その周囲や中に色々と文字が書き込まれている。
(さぁて、鬼が出るか蛇が出るか)
まぁ、鬼は出るだろうな。蛇は、こちら側に凄いのがいるか。
そんな事を考えていると、先頭を行く俺は地下5階に到着した。
次々と地下5階へと足を踏み入れる俺の仲間達。皆、事前命令で周囲を警戒しつつ、女性陣を守る様に輪陣形となる。
俺は輪陣形の外にあって警戒に当たる。周囲を窺うも魔力探知は阻害されている感じがあり、暗闇の中に何が潜むのかは全くわからない状態だ。
暗闇に目を閉ざされ、魔力探知も阻害されても耳と勘は健在だ。俺は敢えて目を閉じて耳を澄まし、勘を研ぎ澄ます。すると、暗闇の向こうからひたひたと近づく僅かな足音を拾う。
(来る)
俺は声を出す時間も惜しく、念話で全員に敵の接近を警告。
"何か来るぞ。気を付けろ"
と、次の瞬間には何かが音も無く加速して輪陣形に襲いかかった。僅かに発した音、そして空気の揺らぎから恐らく襲撃者は2体。
これに対し、俺も雷丸を抜刀しつつ加速し、すれ違いざまにその内の2体を斬り伏せた。斬った感じだと2体とも胴を払って両断している筈だ。
するとその隙を狙ったか、もう1体が俺に襲いかかり、刀を構える暇さえ無かったため右足に魔力を込めてそいつに横蹴りを喰らわせる。
俺の蹴りを喰らって吹っ飛んだ何かはよろよろと立ち上がる。どうも人型であるようだが、あの蹴りを喰らって立ち上がるとは、正体はお察しだな。
そして俺が火魔法の火炎弾を浴びせかけると、襲撃者である人型は全身が松明のように燃え上がった。その炎は暗黒の地下空間を照らし出し、然して暗闇の向こうには俺達を取り囲むように並び立つ数十に及ぶ分体のシルエットを浮かび上がらせた。
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それでは次話もお楽しみ!
「初めて接する他国の挨拶の風習の中で、最近対応に困っているのが、「ウインク」である。きれいな金髪の女性がウインクしてくれれば、うれしいのだが、残念ながらウインクするのは、額の面積が通常より広いオヤジか、ヒゲヅラのオッサンばかり…」
『自衛隊イラク日報』より




