第156話 地下室のデスメロディ①
竜太「やあみんな、土方竜太だ」
アーニャ「やあみんな、アーニャ・キャストンよ」
竜太「アーニャの地元キャストン侯爵領は名物料理とかどんなものがあるんだ?」
アーニャ「…そうね、領都は湖畔にあるからレマレード湖で獲れるマスと、ノービス川の川蟹を使った料理が名物ね。私は秋に獲れたマスが脂が乗っていて本当に好き」
竜太 (アーニャがマスを咥えてにっこりしている姿が思い浮かぶ)
アーニャ「…リュータ、今何考えてた?」
竜太「いや、何も?それじゃあ『魔法修行者の救国戦記』スタートだ!」
その日の夕食は皆で食事しながらの主に魔神についての謎解きに終始した。この世界と俺が生まれたあっちの世界、双方の知識を投入してわかった事も多かったが、結局魔王が魔神を復活させる目的やら、魔神は何処から来たのかなど、そうした根本的な謎の解明までには至らなかった。情報が足りないのだから仕方のない事ではあるが。
そもそも、魔王国の公爵からして魔王や魔神については知らない事があるのだ。
魔神が太古に何処からかこの世界に現れ、どうしてかこの世界の神々と戦いになった。魔神は神々との戦いに敗れはしたものの地下深くに封印されるに留まり、今に至るまで神々の監視下にある。そして、その間も魔神は封印を解くべく策動していて、魔王を操って(多分)この世界から魂を集めて復活の糧にしようとしている。
たった2時間足らずに夕食の間でこれだけの仮説が立てられれば上出来だろう。
〜・〜・〜
明くる朝、神聖パレンナ同盟軍はサラクーダ市に僅かに残った魔王国軍の篭るサラクーダ大学第2キャンパス攻略に取り掛かった。
昨夜、第2キャンパス周辺に飛ばして貼り付けた式神は特に何ら異常を告げる事は無かった。魔王国軍とサラクーダ大学の魔術師どもは未だ第2キャンパスの地下に篭っている事だろう。サクッと皆殺しにしてこの戦いも終わりにしよう。
簡単な朝食を済ませ、全戦力が配置に着く。有志連合軍と戦兎族は第2キャンパス外周とキャンパスが建つ河岸段丘の崖下を決して誰一人として逃さないように固めた。
第2キャンパス突入はギュンターたっての願いで黒狼族に任せる事にした。彼等黒狼族にしてみれば地下には彼等の同胞が捕らえられているかも知れず、ならば自らの手で早急に救い出したいと思うのは当然だろう。
第2キャンパス自体の見た目は第1キャンパスとほぼ同じだが、一階の最奥に地下室への入り口がある。そのキャンパスの地上階を黒狼族の人狼達と戦兎族から派遣されたコマンドの女戦士達が検索、制圧する。
「リュータ様、建物地上階は無人でした」
ギュンターの伝令から報告を受けた俺は、彼を労うと共に有志連合軍の兵と交替して1階に再集合しるよう指示を出した。
〜・〜・〜
第2キャンパスの最奥に地下空間へ続く入口はその口をぽっかりと開けていた。それは一辺が30mほどの正方形を成し、岩盤を削って作った階段が螺旋状に地下へと続いていて、少しヒヤッとした空気の流れが感じられた。
まずは雪枝の式神とフレデリカの千里眼で内部に探りを入れて貰うと、この地下構造は意外と深くて広い事がわかった。全部で5層からなり、各階には分体や捕らえられた者達がいて、雪枝とフレデリカによれば内部が暗い事あり、誰が誰だかは判別つかないと言っていた。つまり、一層一層を攻略して分体を倒し、救出すべき者達を救出するという時間と労力を要求される戦いをしなければならない。
「はぁ、」
思わずついた溜息を聞き、エーリカ、真琴、サキが励ましてくれた。
「まぁまぁ、地道に行こうよ。リュータが全部責任を負う事じゃないんだからさ」
「そうよ、別に期限がある訳でもないんだから」
「そうですよ、食糧だって一杯あるんですから」
確かにみんなの言う通り、黒狼族の事は基本黒狼族が負うべき事だ。俺は彼等の手に余った時にフォローすればいい。
俺は三人に礼を言って地下空間攻略に取り掛かった。
〜・〜・〜
俺はラミッドとアミッドの虎獣人兄弟とガーライル達狼獣人チームを連れ、ギュンター率いる黒狼族と共に地下1階へと向かった。縦坑内は第2キャンパスの1階から自然光が取り入れられる構造になっているため思ったよりも暗さはない。また、発光する魔法具が足元を照らすように壁体に嵌め込まれ、歩くにも支障が無かった。
よく見ると縦坑は垂直ではなく、下層へ向かう程徐々に狭まって四角錐を逆さにしたような構造になっていた。これも自然光を取り込むためだろう。
地下1階に到着すると、俺は縦坑の通路から室内に虎の式神を送り込む。すると、潜んでいた分体と忽ち戦闘となり、式神は分体と相討ちとなって消滅した。
「ギュンター、分体が潜んでいる。気をつけて行け」
「リュータ様、心してかかります」
入口から進入した黒狼族の人狼達と分体の戦闘が地下1階で始まった。
「よし、俺達も行くぞ、抜剣!」
おう!という勇ましい返事と共に皆がスラリと鞘から剣を抜き、俺も雷丸を抜き放った。
俺はギュンター達が進入した入口とは別の、縦坑の反対側にある入口から室内へ進入する。室内は発光する魔法具で薄暗い。俺達は身体強化の魔法で暗闇の中でも夜目が効くのでそれで問題無い。
と、殺気と共に鋭い斬撃が先頭を行く俺に襲いかかる。俺は斬撃を難なく躱すと、分体の胴を雷丸で横一文字に薙ぎ払い、分体の胴を真っ二つに断った。続いてその勢いのまま、その奥の分体を下段から斬り上げて右腕ごと頸を刎ねた。
ラミッドとアミッドもそれぞれ1体ずつ、ガーライル達も2体の分体を屠っていた。
更に奥に進むと人狼と遭遇した。
「⁈、リュータ様ですか?びっくりした」
それは比較的小柄な人狼で、声からすると女の子だろうか?見た目は恐ろしげだけど。
「こちらは片付いた。そっちは?」
「はい、こちらも片付きました。私達は負傷者が出たくらいです」
戦死者は出なかったようだ。流石に人狼は強いな。
「そうか、負傷者は後送して治療を受けさせてくれ」
「了解です。やっぱり、リュータ様って若様が言っていたように私達に優しいですね」
え、そう?かな。狼、好きだしな。この娘もなんか凄い尻尾振っているな。顔を舐め回されそうな勢いだ。
〜・〜・〜
地下1階の攻略は順調に進み、この階には分体が30体ほど配置され、黒狼族と俺達で殲滅した。
更に地下2階に歩を進めると、負傷した人狼達と交代するように武田少尉率いる第2陣が合流した。そのメンバーは武田少尉に大澤軍曹、オスカー・ワイルダー軍曹、それにケリィとユリィの戦兎族ペアだ。
じー、からのフンっ!といったいった感じでユリィに睨まれ、目が合うとそっぽを向かれた。何故怒っている?俺、何もしてないのに。
「あ〜、ユリィがゴメンね。あの娘リュータが自分を先陣に入れなかったから拗ねちゃったの」
俺がユリィの態度を解せないでいると、ちょっとだけ申し訳なさそうにケリィがそう説明してくれた。
俺がこの第2キャンパス地下攻略戦にエーリカ達女性陣を加えなかったのには訳があった。地下という暗く限られた空間では魔法はあまり役に立たず、格闘能力が物を言う。彼女達にはそうした条件下での戦闘は無理と判断したからだ。そこはエーリカ達も納得してくれた。
その点で言えば戦兎族の戦士であるユリィは格闘能力も高くて問題は無かった。だが、第2陣のメンバーは武田少尉が率いる、要はTチーム。だったらユリィはバディであるケリィとペアでいた方がが良いだろうと俺は考えたのだが、余計に気を回してユリィの不興を買ってしまったか。
「ユリィ、頼りにしてるよ!」
ユリィにそう声をかけると、ユリィはジロリと俺を一瞥すると、やっぱり「フンっ」とそっぽを向いた。だが俺は見逃さなかった。ユリィがそっぽを向きながらも綻んでいた口元を。
しかし、こんな地下の戦場に来てまでそうした事に気を配らなければいけないとはね。
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それでは次話「地下室のデスメメロディ②」もお楽しみ!
セーラーヴィーナス「仮面の伝説過去のもの、その素顔も美しい! 最後に登場美少女戦士はセーラーヴィーナス」
『美少女戦士セーラームーン』より




