第155話 謎解きはディナーの最中に②
竜太「やあみんな、土方竜太だ」
雪枝「ねえお兄ちゃん、『鬼滅の刃』って人気じゃない?もし私が鬼になっちゃったらどうする?」
竜太「そうだな。非情に徹して合理的に処置して、然るのち仇を討つ、かな?」
雪枝「非情に、合理的にって、要するに滅殺しちゃうんでしょ?酷っ。でもお兄ちゃんらしいというか、仇を討ってくれるだけいいか」
竜太「じゃあ、俺が鬼になったら?」
雪枝「そんなの逃げるに決まってるよ!って事で『魔法修行者の救国戦記』スタートです」
真琴「竜太が鬼になったら戦術核を撃ち込んでもどうかしらね」
「悪神の中でも魔神は別格というのはどうしてなんですか?」
斉藤はエーリカには丁寧な口調で尋ねる。きっとユーリカの姉=近い将来の義姉、みたいに考えての事だろう。まぁ、別にいいのだけど、そうすると俺と斉藤は近い将来は義理の兄弟になるって事か?何か複雑な気分だ。
「それは私達エルフの伝承によると、魔神は突然どこからともなく現れてこの世界の神々に戦いを挑んだから、って事なんだけど、」
「私達獣人の間でもエルフの伝承と一緒よね?」
「はい、そうですね」
エーリカの話をアーニャが継いで、サキが同意する。
「戦兎族の伝承はちょっと違うのよね?」
「ね」
ケリィとユリィによれば、戦兎族では魔神が突然この世界に現れて神々に戦いを挑んだところまでは同じ。でも、その後が違っていた。
「理由は伝わっていないけど、魔神はこの世界の全ての命を刈り取ろうとしたって伝えられているの」
ユリィの話に雪枝が反応する。
「ねえ、それって魔王がこの世界でしようとしている事と一緒じゃない?やっぱり魔王の目的は魔神の復活という事なのね」
魔王は魔神がこの世界に現れた時にやろうとしていた事をやろうとしているのは
どうしてか?ユリィが言った事によれば全ての命には魔王自身も含まれるのではないだろうか?自らを犠牲にしてまで魔神を復活させる、その目的は何なのか?
「あと、こんな話もあるよ」
ケリィは月にまつわる伝説を語った。
「ラーマとソーマ、二つの月が同じ空に現れないのはどうして?っていう伝説でね?」
俺はエーリカをチラ見する。以前満月を二人で眺めた時にこの伝説をエーリカが語ってくれたんだ。エーリカは俺と視線が合うと嬉しそうに少し微笑み、すぐに表情を引き締めた。
「よく知られているのは、二つの月の姉妹がティタンっていう男の悪星に騙されて仲違いしたからって奴なんだけど、戦兎族にある別の話では、実はこのティタンっていう男の悪星の行いに神々が怒り、ティタンをこの世界のどこかに封じ込めた。それでも神々はティタンが再び出て来ないように昼は太陽が、夜は二つの月がそれぞれ交代で地表を見張るようにした。だからラースとソーマは同じ空に現れなくなった」
同じ神話や伝説、伝承でも伝えられている地方や集団によって内容は微妙に違っていたりする。
まるっきり変わっていたりする事も珍しくない。日本でだって浦島伝説は結構あちこちにあるけど内容は違うし、桃太郎もそう。七夕なんて大陸の伝説とは全くの別物になっている。
二つの月の伝説について、一般に流布している説と戦兎族に伝わっている異説。どちらが真実に近いのか。ただ、こうした伝説はよく発祥の地に異説が残っている事がしばしばあったりする。ならば戦兎族は伝説の発祥地、若しくはそこに極めて近い位置に代々暮らしていた、という事になるだろうか。
「そうすると、魔神と月の伝説って似通ってますよね?魔神も悪星ティタンも突然どこからともなく現れているし、またどちらも神々と戦って敗れ、どこかに封じ込められている。これは魔神=悪星ティタンと考えていいのではないかと思います。どうでしょう?」
「そうだな、俺もこの二者は同一の存在と考えていいと思う。そうすると、この地上のどこかに魔神は封じ込められいる訳だが、どこか思い当たる土地はあるのか?」
舞の考察を肯定した斉藤は、魔神が封じ込められた場所についてこの世界出身者に尋ねた。しかし、それについては「どこと言われてもねぇ」と明確な答えは出ない。
「そうか。だったら太陽と二つの月が見張っているという伝説から、それらとこの星の軌道などを計算して、常に太陽と二つの月のどれかが見られる地点を探せばそこが魔神の封印地と言えるかもしれない。またこの星の地軸の傾きと自転速度と、」
斉藤はやれやれ大変だなと呟きながら、早くもその手段に思いを巡らし始めた風だった。だがしかし、
「いや、そんな面倒な事しなくってもわかるぞ?魔神が封じ込められている場所は」
「何?じゃあ、どこなんだ?」
「ここだよ」
「どこだって?」
「だから、魔神はこのエルム大森林の中央山地の地下に封じ込められるんだって」
ええ〜⁉︎
周囲に皆の驚愕の声が響く。
「ちょっ、何でリュータがそんな事知ってるの?」
「何でお兄ちゃんがって、そうか、アルメウス公爵ね?」
雪枝は察しが良いな。俺は鷹揚に頷いた。
俺は皆に魔神がこのエルム大森林の中央山地の地下に封じ込められいる事、エルム大森林の外輪山の北方外側に魔神教団の神殿を築いている事などを伝えた。
「リュウ、お前そういう大事な内容はちゃんと言えよ!」
「いや、話の途中で脱線したからな」
「そうすると、魔神は突然現れて月の軌道まで変えてしまう程の存在だったという事かしらね?」
「そして、この世界の神々ですら封じ込められたけど、倒せはしなかった、と」
真琴と雪枝は俺と斉藤の遣り取りをスルーして頷き合う。
「待って。このエルム大森林って大きな外輪山に囲まれているよね?外輪山という事は巨大なクレーター。クレーターは火山の噴火、若しくは隕石や彗星が落下して地表に衝突して出来た物。魔神は悪星ティタン。じゃあ、エルム大森林って巨大な天体の衝突で出来たクレーターで、じゃあ中央山地は中央丘か」
舞が思考の海深くに沈んでしまったが、斉藤が引き継いだ。
「舞の考察によれば魔神がエルム大森林の中央山地に封じ込められいるというのも理にかなっている。だが、このクレーターを作る程の天体衝突だと、この惑星に生物の大量絶滅が起きているはずだが… そうか、魔神が全ての命を刈り取ろうとしたというのはこの事か」
やっぱり一人よりも二人、三人寄れば文殊の知恵だな。飯食いながらでもどんどん考えが纏まっていく。
「でも、この世界には命が満ちていますよ?」
「魔神は全ての命を"刈り取ろうとした"のであって、"刈り取った"じゃないって事だ。それに満峰神社の女神も世界樹ではそれぞれの世界である枝は近ければ近い程似通った世界であり、枝と枝は所々接する部分も有ると言っていた。これは想像に過ぎないが、この惑星で生物の大量絶滅が起きた後、長い年月の間に別の世界から様々な種族がこの世界に移り住んだのではないかと思う。自ら望んでか、強制的なのかは別として」
サキの疑問に斉藤が応えた。なるほど、そう考えるとこの世界に色々な種族が存在するのも頷ける。
その後はアルメウス公爵に俺が勇者認定された件で一騒動あったものの、俺はアルメウス公爵から聞かされた内容ほぼ全てを皆に伝え終えた。
「リュウが、ゆ、勇者だと?くっくっく、魔王の間違いじゃないのか?」
「お兄ちゃんが、ぷっ、勇者?」
「先輩、高校の時、魔王って渾名でしたよね?」
「確かに竜太は魔王の方がしっくりくるわね。…竜太の魔王なら好きだけど」
「中尉、勇者でハーレムとかテンプレですねって、けっ!」
まぁ、一部にはこういう反応もあったが、異世界組は概ね肯定的だった。
「リュータが勇者ってのも、ありっちゃありかしら?」
「ま、まぁ、私はリュータが勇者っていうのもいいと思うわよ?」
別に俺が自分が勇者だって言い出した訳じゃないんだけどな。どうとでも言ってくれ。
話し終えて、まだパンが残っていたのでスープのおかわりをしようとしたら、すかさずサキが大鍋からアツアツのスープをよそってくれた。
「スープをどうぞ、私の勇者様♡」
そしてアーニャがパンをスープに浸し、ふーふーして口元へ運んでくれた。
「…勇者様、はい、あーんして下さい?」
勇者もそんなに、悪くない、かな?
いつも『魔法修行者の救国戦記』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。
それでは次話もお楽しみ!
はたけカカシ「忍びの世界でルールや掟を守れないやつはクズ呼ばわりされる。けどな仲間を大切にしない奴はそれ以上のクズだ。」
岸本斉史『NARUTO』より




