第154話 謎解きはディナーの最中に①
アラン「やあみんな、ほんと久しぶり。キャストン侯爵の腹心やってる竜人のアランだ。俺の事ちゃんと憶えてるか?」
リドリー「やあみんな、久しぶり。有志連合軍サラクーダ派遣隊の隊長副官をやってやってるリドリーよ」
アラン「実は俺達兄妹なんだよな」
リドリー「まあ事実ね、残念ながら」
アラン「まさかお前が登場するなんて思わなかったぞ」
リドリー「そりゃあ兄さんがちょっととはいえ出番があったのだから、私だって出なければね」
アラン「まあ、そのうち再会シーンもあるだろうな」
リドリー「ちょっと兄さん、それネタバレよ?って事で『魔法修行者の救国戦記』スタートよ!」
アーニャ「あなた達仲悪いの?」
アラン「普通だよ」
リドリー「普通ね」
朝から竜牙兵軍団と戦い、次いでアルメウス公爵からあまり知りたくもない話を聞かされてからの死闘。まあ、濃すぎた一日だったな。
ここに至ってサラクーダ市完全攻略まで後一歩。だが、もう日が暮れて辺りは夜の帷が下りようとしている。ここまで飲まず食わずの状態であり、このまま真っ暗な中を魔術師や分体がいる第2キャンパスの地下を攻めるとか、流石に無理があるだろう。俺は大丈夫でも他のみんなが保たない。
という訳で、第2キャンパス攻略は明日に先送りして、今日はこのまま野営する事となった。勿論、魔術師共が逃げださいように見張りを配置して、だ。
夕餉はいつもの大麦の粥、ではなく、何とスープにパン。このサラクーダ市をほぼ占領したパレンナ神聖同盟軍は残されていた食糧や物資を徴発して使い放題だ。俺が戦っている間に元サラクーダ市自衛軍の中隊長だったザックさんが主計部隊を結成して市の食糧庫から大量の食糧を運び出していたのだった。
「リュータさんがアルメウス公爵に勝つ事はわかっていましたから。ならば、自分に出来る事をやっておこうと思いましてね」
「いや、仕事が早くてとても助かります」
俺が労いに行くと、幾つもあるスープが煮えている大鍋の一つを大きな木ベラで掻き混ぜながらザックさんはそう言った。
スープの中には大麦は勿論の事、大豆、乾燥野菜やきのこ、干し肉が沢山入っていて具沢山。ちょっと味見をさせて貰ったが、具材の出汁と塩、ニンニクっぽい何かと生姜っぽい何かが利いていてなかなか美味しい。そこにカチカチに焼き締めたパンを浸して柔らかくして食べるのだという。
俺は保存食とはいえ何年も前に焼いたパンなんて食べて大丈夫なのかと内心不安に思ったが、試食して全く問題なく美味しく食べられた。固くて塩っぱくはあったけど。
「何気にこの世界の食糧保存技術は凄いものがあるよな」
その後、俺はみんなと大鍋を囲み、夕餉に舌鼓を打ちながら先程のザックさんを労った際の感想を述べた。
「そうよ、何と言っても魔法があるからね。食材から水魔法で水分を一気に飛ばしたり、乾燥させた食材に状態保存の魔法を使ったりすれば何年でも保存出来るわ」
エーリカは少しドヤ顔をしながらも説明してくれた。
「それ、いいわね。保存料や防腐剤を一切使わないから体にいいし」
「真琴さん、後で詳しい人にやり方とか教えて貰いましょうよ」
真琴と舞も話に加わり、いつの間にか女子達はワイワイとこの世界の食についての話題で盛り上がっていた。
そのような雰囲気の中、斉藤が徐に俺に尋ねた。
「で、アルメウス公爵はお前に何を話したんだ?」
すると、今までめいめいにお喋りしながら食事に勤しんでいた周囲のみんながピタッと口を閉じ、途端に辺りは静寂に包まれた。
シーン、からのじー
皆からの視線が俺に突き刺さる。
「何か言えないような内容だったのか?」
「いや、そういう訳じゃない。アルメウス公爵に色々と言われても、この世界の事は俺にはわからない事ばかりだし、皆からも色々と教えて貰いたかったから遅かれ早かれ言うつもりだった。情報の共有も図りたかったしな。ただ、長くなるし、飯食いながらする話でもないだろう?」
「俺は飯食いながらでも全く構わないぞ?」
「リュータ、私も聞きたい」
「私も聞きたいです」
「竜太、私も興味あるわ」
皆が口々に聞きたいと言うので、行儀は悪いが食べながら俺は大講堂でアルメウス公爵が語った内容を話す事にした。
「それじゃあ、そもそも魔王国自体が魔神復活のために建国されたって事なのか?」
「アルメウス公爵はそう言っていたな」
斉藤は腕を組んで何やら考え込んだ。
「何千年もかけて歴代の魔王達は魔神を復活させようとしていたなんて、しかも、そのために世界中の魂を集めるとか、正気じゃないわ」
真琴は恐ろしいとばかりに両腕を抱く。
すると「ちょっといいですか?」と言って舞が手を挙げた。
「この世界の皆さんに訊きたいのですが、魔神ってどんな存在なんですか?」
俺や斉藤、真琴や雪枝を始め、あっちの世界出身者は魔神どころかこの世界の信仰や神話、伝説、伝承などについて何も知らない。その余裕も無かったが。
この世界出身でこの場にいるのはエーリカ、サキ、アーニャ、それにケリィとユリィ。彼女達は互いに顔を見合わせている。それは誰が何から話していいのか、といったところか。やがて皆の視線がエーリカに集まると、エーリカは諦めたように「はぁ」と可愛い溜息を吐いて話し始める。
「この世界には実に多くの神々がいるの。海には海の神様、山には山毎の神様、森には森の神様といった具合にね」
「この世界も日本と同じで多神教という事ね」
舞に頷いてエーリカは話を続ける。
「だから中には悪い神様っていうのも当然いてね、まぁ、それはエルフやヒトや獣人それぞれの立場から見ての悪神って事だから、そうした神様も自分が悪神だと思っている訳じゃない」
「ちょっといいかしら?」
真琴が遠慮がちに手を挙げた。
「エーリカの話を遮っちゃって悪いんだけど、じゃあ、神を善とするなら、その対極となる存在っていうのはこの世界にはあるの?」
つまり神と悪魔って事だな。
「う〜ん、この世界には善と悪という二元的な教義の構造は無いの。人にもいい奴もいれば悪い奴もいるでしょ?でも悪い奴だって案外いいところもあったりして。神々もそんな感じなのよ」
真琴はなるほどと頷き、エーリカは話を続けた。
「だから、悪神と呼ばれる神様にも人々は祈りを捧げて敬うの。どうか暴れないで下さい、鎮まって下さいってね。加護を求める信徒だっているわ」
これは日本での御霊信仰と同じだから日本人にはよく分かる話だ。それに対してキリスト教世界から来たアメリカ組の3人にはこの考えは理解し難いかもしれない。
「悪い神なら滅ぼすべきなんじゃないか?」
なので、トッドのこのような意見も出てくる訳だ。
「それはキリスト教的二元論で、」
「まぁまぁ、ここで宗教論議してもしょうがないので、先に進みましょう」
雪枝の反論を遮ってエーリカに続きを促したのは、意外にもフレデリカだった。
エーリカはフレデリカに軽く頷くと話を進める。
「ただ、悪神も多い中で魔神だけは別格なの。さっきも言ったように、人々は悪神にも祈りを捧げるし、誰も悪神の信徒を差別したり迫害したりしない。でも、魔神は別。魔神はその名を口にするのも憚れるし、祈りを捧げるなんてもってのほか。この世界で魔族がどうして毛嫌いされてるかといえば、色々原因はあるけど、彼等が魔神を崇拝している事に由来するの」
そんな悪神よりも嫌われ、恐れられている存在が、ここから目と鼻の先の地下深くに封印されているなんてな。
何か、話が脱線してしまってアルメウス公爵が語った内容をまだみんなに全部話せていない。だから魔神が封印されている場所についてもまだ言えてないんだけど、この世界の人達なら知っているのだろう、多分。
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それでは次話「謎解きはディナーの最中に②」もお楽しみ!
ボッスン「汚れ仕事ができねーヤツが人助けなんかできねえって」
篠原健太「スケットダンス」より




