第153話 ザビーナ、愛のあと
竜太「やあみんな、土方竜太だ。今回は読者の"くたばれベーチェット"さんからの質問にお答えします」
「初めまして竜太さん。コロナ禍の世の中ですが、感染予防に役立つ小説って何か有りますかね?小説読んで感染予防出来たら最高なんですけど」
竜太「そうだなぁ、俺的には小松左京の『復活の日』なんか好きだけど、感染予防に役立つっていうのなら大石英二の『合衆国封鎖』なんかいいんじゃないかと思うよ。って事で『魔法修行者の救国戦記』スタートだ!」
畠山「儂的には『ワールドウォーZ』と『地球最後の男』を推すぞい」
竜太「それは感染予防じゃなくて、ゾンビウィルスが蔓延した世界でのサバイバルに役立つ小説でしょ」
戦いに敗れたアルメウス公爵は絶命し、自らの青い炎の中に焼かれ、灰となって消えた。
俺の元へエーリカ達が駆け寄ってくる。皆、俺の勝利を信じていたけど、怪我は無いかと案じてくれていた。有難い事である。
さて、と俺は黒い甲冑を纏った女鬼武者に目を向ける。未だアルメウス公爵を失ったショックから脱していないようだが、これから彼女、ザビーナ・ルクレールには魔王国軍の軍監としての役割をしっかりと果たして貰わなくてはならない。でなければ、アルメウス公爵と家臣達の死が無駄になりかねない。
「ザビーナさん」
俺は膝をついて手の中に残るアルメウス公爵に遺灰を握りしめて俯くザビーナに声をかけ、雪枝には一体の式神を出してくれるよう頼む。雪枝は俺の意図を理解したようで、黙って頷くと虎の式神を出した。これは脱出するザビーナの護衛と監視のためだ。
ザビーナは声をかけられても直ちに反応は無く、少しして徐に立ち上がった。
「こんな事があった直ぐで申し訳無いが、速やかにここから出立した欲しい。こちらの兵達にはザビーナさんには手を出さないよう伝えておる。その間の担保としてこの獣をあなたに付けよう」
俺が言い終えると、ザビーナはキッと俺を睨みつけた。
「貴様に言われるまでもないし、貴様等の情など受けない。サウザールの命を奪った貴様を私は絶対に許さない。憶えていろ、サウザールの仇はこの私が必ず討つ」
とんだ八つ当たりの逆恨みだ。だが、俺としては彼女にはさっさとこの場から消えて欲しいと思っている。だから恋人を失ったショックから俺を憎む事でそこから一時的でも立ち直れるというのなら幾らでも恨んで憎んで構いませんよ、といった気分だ。
ただ、俺がそう思ったからといっても、周りのみんながそう思う訳では無い。
「あなたねぇ、私達をあなた達の勝手な都合に巻き込んでおいて何言ってるの?」
「そうですよ!リュータとアルメウス公爵は正々堂々と戦ったんです。リュータが勝ったからって許さないとか仇を討つとか、そんなの、戦ったアルメウス公爵や家来達を侮辱する事になるんじゃないですか?」
エーリカとサキが諭すように反論するも、ザビーナは依然俺を睨んでいるので、残念ながら彼女の心にはエーリカとサキの言葉は届かなかったようだ。感情は理屈では御せない時もあるという事だろう。
すると、その様を見ていたアーニャが突然吠えた。
「逆恨みするなんて、負けた侵略者とはこうも惨めなものなのね!」
「何だと!貴様、獣人の分際で私を侮辱するか!」
ザビーナは激昂して怒気を発するが、アーニャは怯まない。
「お前達がこのエルム大森林で何をしたのか忘れたとは言わせない。お前達は古からの協約を一方的に破ってこの大森林に攻め込んだ。そして何万人もの森の民達を、市民達を騙して虐殺した。私の故郷の町だって、領民達だってお前達に破壊されて殺されたんだ。何が許さないだ!仇を討つだ!それはこっちの台詞だ!リュータとアルメウス公爵の約束で生かしてもらっているくせに勘違いするな!甘えるな!さっさと私達の前から消え失せろ!」
アーニャは祖先から営々と築いてきた故郷の領地を失い、大切に守ってきた領民達の多くを魔王国軍に殺されている。その中には彼女の親戚や友達もいただろう。彼女自身も兄や妹と共に魔王国軍との戦闘で死ぬところだった。
今までアーニャはそうした思いを表に表す事は無かった。こうして目の前に仇敵たる魔王国軍の、それもこちらから見たら自分達に勝手な恨みを抱いて許さないとか喚いている"女"を見てこれまでの怒りが溢れたのかもしれない。
そうして、アーニャとザビーナは互いに射殺さんばかりに睨み合い、一触即発の状況となった。アーニャの気持ちはよくわかる。誰が悪いって、この戦争、魔王や魔王国軍が文句無し100%で悪く、彼等にしても自分達の開戦理由を正当化出来ないだろう。したいからするんだと言われたらそれまでだが。
とはいえ、俺の立場ではこの状況をこのまま看過する訳にもいかない。
「ザビーナさん、俺はアルメウス公爵と君の身と脱出の安全を約束している。だが、君がこのままこうしていればアルメウス公爵との約束も果たし難くなる。今のでわかっただろうが、魔王国軍はそれだけエルム大森林ではサラクーダ市民にも森の民にも恨まれている」
誰かを説得するとか、俺の柄じゃないのだが、ザビーナはアルメウス公爵の遺灰を握った右手を頬に当てると嗚咽を漏らした。
「お前達さえここに来なければサウザールは死ななかった。私達は一緒にいられたのに」
俺だって来たくて来た訳では無いのだがな。
「わかったいるよ、私にだってそれが勝手な思いだって。それが刹那の夢であり、互いが束の間に抱いた情である事も。それでもサウザールと共に在りたいと思ってしまったのだ」
本来ならば監視する者とされる者とが互いに惹かれ合い、愛し合うようになったのにはどうした経緯があったものか(ちょっと興味無くはないが)。だが、どのような経緯であれ、心寄せる男と共にあるならば、そこに永遠を求めてしまった女を責める気にはなれない。例えお前達さえ来なければ、なんて理不尽に責められようとも。
「サウザールの遺志を継ぐため、今からここを立つ。貴様もサウザールとのもう一つの約束を違えるなよ」
そう言ってザビーナは踵を返して、と思ったら立ち止まり、
「この向こうにある校舎の地下に本国とサラクーダ大学の魔術師どもがいる。囚われて実験体にされている者達もいるから、早いところ行ってやる事だな」
と振り返りもせずに言うと、大講堂から出て行った。式神の虎が付いて行ったのは言うまでもない。
このサラクーダ市を攻めた理由は、市を魔王国軍から奪還して市民達を解放し、と様々あった訳だが、異世界から来た俺にしてみれば利己的ではあっても最終的には俺達の世界に影響を与える魔物や"角"を生み出す魔術師共を皆殺しにする事に尽きる。
そして、いよいよその最終目的に王手をかける訳だけど、その前に絶対にやらなければならない事が俺にはあるのだ。
「アーニャ」
アーニャはザビーナとの応酬で未だ興奮冷めないのか、両手を握り締めて俯き、肩で息をしている。
俺が呼びかけるとアーニャは顔を上げ、その双眸は涙で濡れていた。俺はアーニャを抱きしめてその柔らかな髪を撫でる。恋人のフォローは何より大事だ。
「ごめん、リュータ。取り乱しちゃって」
ぐすぐすと鼻を啜りながら、アーニャは俺の胸に顔を押し付けてくぐもった声でそう言った。
「アーニャの故郷を壊した連中が目の前にいたんだ。無理もないよ」
俺がもう大丈夫か?と尋ねると、アーニャはいつものように頭を俺の胸にグリグリと押しつけて
「まだ。もうちょっと」
と言った。
周りからはいろいろな視線を感じるが、これはしょうがない、よな?
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それでは次話もお楽しみ!
麻宮サキ(2代目)「梁山高校2年B組麻宮サキ、またの名をスケバン刑事!
鉄仮面に顔を奪われ、とおとななとせ、生まれの証しさえ立たんこのあてぇが何の因果かマッポの手先…おまんら、許さんぜよ!」
「スケバン刑事Ⅱ・少女鉄仮面伝説」より




