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第150話 アルメウス公爵はこう言った②

竜太「やあみんな、土方竜太だ」

雪枝「ねえお兄ちゃん、前に主題歌や主役メカの交代ってやったけど、主人公が途中で代わるとかっていう作品ってあるのかな?」

竜太「そうだな、俺の知る限りだと『太陽戦隊サンバルカン』のバルイーグルが唐突に別の俳優と代わったし、『仮面ライダー』も藤岡弘さんが撮影中のバイク事故で2号ライダーに交代している。アメリカだと『エアウルフ』の主人公が後半から弟から兄に代わっているし、」

雪枝「ストップ、お兄ちゃん、もういいよ。主人公の交替が結構あるって事で、『魔法修行者の救国戦記』スタート!」


畠山「主人公が悪堕ちして悪役として再登場するパターンもあるぞい」

魔法が作り出した静寂の中、俺とアルメウス公爵の話し合いは続く。周りから見れば一体何をしているのか、何の話をしているのか甚だ疑問に思う事だろう。斯く言う俺自身も何やってんだろうかと思っている。何で俺、こんな所で異世界の重すぎる話を聞かなくちゃいけないのだろうかと。


そんな俺の内心などお構いなしにアルメウス公爵の話は続く。


「だが、魔王の思惑を早い内から察知して、密かに同志を募って一人でも多くの魔族を救うべく動いておられる方がいる」


「魔王国も一枚岩じゃないという事か?」


「そうだ。そこでだ、ヒジカタ君」


何か面倒な案件を持ちかけられる気がしてならないのだが。


「もうあまり時間が無い。北方連合が魔王によって魔王国として統一された頃から、どこからともなく一つの噂が流れ出した。それは、いつの日か魔神の封印が解かれる時、異世界の勇者が再び魔神を地の底へ封じ込めるであろう、という物だった。噂は幾代にも渡って語り継がれていつしか言い伝えとなり、魔神の復活が間近となった今は魔族の縋る一条の光ともなっている。そして、私の前にはこの森の民を率いた異世界から来た強大な力を持つ男がいる。私が君を勇者と呼んだのはそういう訳だ」


「そいつは過大評価だと思うけどな」


「いや、私はそうは思わない。君からは魔王ですら凌駕する魔力を感じている。君がこの世界に、エルム大森林に現れる事は北の精霊樹のお告げでわかっていた。だから、ここでこうして余人を交えず君と二人だけで話が出来るよう図らせて貰った」


おそらくアルメウス公爵はそのために全てを利用したのだ。魔王国軍のエルム大森林への侵攻からサラクーダ市攻略、市民達の大虐殺や人体実験まで。アルメウス公爵は俺との話し合いの機会を作り出すために。おそらくサラクーダ市に魔王国軍が少なかったのもそのためだ。余計な者を少なくするために。しかし、


「それだけのために自分と家臣達の命をも代償にするのか?」


「一族と部民、魔王国の多くの魔族達の命運がかかっているのだ。そのためならば私とここにいる家臣達の命など惜しい物ではないさ」


その覚悟は吸血鬼の王として実に見事なものだと思う。


魔族にも事情が様々とあり、反魔王派が存在している事もわかった。だが、アルメウス公爵の思惑、魔族の事情を知ったからといって同情は出来ない。今更ここにいるアルメウス公爵を始めとした吸血鬼達を赦すのか?逃がすのか?と問われれば、それは有り得ないと答えるしかない。


このエルム大森林では、そしてサラクーダ市では魔王国軍によって数万の命が奪われている。アルメウス公爵の言った事が本当だとしたら数万の命が魔神復活の贄とされている。戦兎族はどうか知らないが、有志連合軍は言ってみれば生き残った大森林の民やサラクーダ市民達だ。彼等の全てを奪われた怒り、恨み、悲しみは復讐を欲している。それを俺から「こいつらにも事情があるっていうから許してやろうぜ?」なんてとても言えない。第一、サキも孤児院の先生や共に育った友達を、アーニャは父祖が築いて自身も生まれ育った領地を失っている。


だからアルメウス公爵達を逃す事は出来ない。まぁ、本人達もそれは望まないだろうが。ただ、彼等が俺に話を聞かすため自らの命をかけてまでこの場を、この状況を作り出した事に関しては無視していい事ではない。


「俺に何か言いたい事があるのだろう?出来る出来ないは別として、聞くだけは聞こう」


俺がそう言うと、アルメウス公爵は微かにホッとしたような表情を浮かべた。


「有難い。君ならそう言ってくれると思っていたよ。私と家臣達の命を代償にする。まずは私の後ろに控えている鬼族の軍監、彼女の脱出を許して欲しい」  


俺がアルメウス公爵の後ろに視線を向けると、確かに家臣達の中に鬼族の女武者がまじっている。軍監といえば早い話が監視役だ。


「鬼族だぞ。いいのか?」


「彼女は同志の一人だ。彼女には私達が最後までサラクーダ市を守り、全滅するまで戦った事を魔王に報告して貰わなければならない。それがなければ魔王に疑われて領地の一族や部民が皆殺しにされかねないのだ」


なるほど、そういう事もあるだろう。女鬼武者は黒い甲冑を纏ったキツい感じのなかなかの美人だ。アルメウス公爵とは最初から同志なのか、途中から同志になったのか。そこら辺は俺にはどうでも良いが、さっきからずっと俺を睨んでいるな、あの女。


その顔立ちは白く整っていて、頭頂部には左右から控えめな二本の角が顔を覗かせている。長い艶のある黒髪を後ろで束ねてポニーテールのようにしており、鬼とはいっても体格は日本人女性の体育会系女子といったところか。


黒い甲冑を纏い、腰には大小を差している。その姿はまさに女鬼武者。そこは女騎士じゃないのかと突っ込みを入れたくなったが、俺を睨むのはお門違いも甚だしい。文句は魔王に、若しくは魔神とやらに言ってくれ。


「了解した。その鬼女には手を出させない。ただ、サラクーダ市を出た後の事までは責任を持てない」


「それで良い。ああ見えて彼女もなかなかの手練れなのだ。それと、もう一つ」


まだあるのか、というかこっちが本命か。


「君達が元の世界に戻ったならば、カイネル殿下と接触を持って欲しいのだ」


魔王国軍の異世界派遣軍総司令官、だったか?アルメウス公爵はそれ以上の事は言わないが、先に言っていた「魔族を救うべく動いておられる方」とやらがカイネル王子なのだろう。俺は思わず彼の四天王の一人である剛腕のガウォーキ、その憎めない髭オッサン面を思い出した。


「元の世界に戻れるのかわからないが、もし戻る事が出来たならばそうしよう」


元の世界に戻れるものならば戻りたい。俺はエーリカ達がいてくれるのならば正直どっちの世界でもいいのだが、斉藤は愛しのユーリカと離ればなれだし、他の皆もそうだ。武田少尉はケリィといい感じになっているからどうかな?とは思うが。


「安心したまえ、君達は無事に元の世界に戻る事が出来るはずだ。戦兎族と共に北の精霊樹へ行くといい」


「何故そう言い切れるんだ?」


「北の精霊樹のお告げだ。私が言うのもなんだがね」


「そうか、まぁ、話半分に聞いておくよ。戻れたならラッキーってね」


アルメウス公爵は苦笑いして微かに肩を竦めた。


これで話の方は終わりだろう。俺が今まで展開していた風魔法を解除すると、辺りを包んでいた静寂は消え、周囲の喧騒が俺の耳に雪崩れ込んで来た。


「リュータ!」


エーリカ達の俺を呼ぶ声が聞こえ、皆が俺の元へ駆け寄って来ようとしたので押し留めた。


「詳しい話は後で必ずする。鬼族の軍監を見逃す。皆に伝えて徹底してくれ」


話し合いは終わった。これからは殺し合いだ。


「総員、戦闘に備えろ!」


そして、俺はアルメウス公爵とその家臣団を殲滅すべく皆に戦闘準備を命じた。エーリカ達満峰集団は攻撃魔法を放つべく魔力を練る。黒狼族は人狼の姿に変身し、ケリィは槍の形状にしたデュラールを構え、鎌首をもたげるアドランゲを従えたユリィはサーベルを構えた。


それに対してアルメウス公爵は羽織っていた豪華なマントを脱ぐと家臣の一人(昨夜公爵と一緒に現れた執事的な吸血鬼)が後ろから黙って受け取った。


「…」


おおぅ!


一部の女性達からは何やら歓声が上がった。何故ならばアルメウス公爵がマントを脱ぐと、上半身は裸だったからだ。何故に?


アルメウス公爵は黒いレザーパンツに鍛え上げた上半身、顔は渋い美中年。歓声が上がるのも無理からぬものもあろう。


「ザビーナ殿。アルメウス公爵家の戦いを最後まで見届け、そして魔王府へ伝えて貰いたい」


「承知した。ご武運を!」


ザビーナと呼ばれた女鬼武者の軍監は絞り出すような声でそう応えた。




いつも『魔法修行者の救国戦記』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。


それでは次話「アルメウス公爵はこう言った③」もお楽しみ!


コスモ

「こんな甲斐のない生き方なんぞ…俺は認めない…!それが、イデの導きによろうともな…!!」


「劇場版伝説巨人イデオン・発動編」より


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