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第144話 死霊の腹は空(から)

竜太「やあみんな、土方竜太だ」

真琴「やあみんな、朝倉真琴よ。ねえ、竜太、映画とかで二作目が一作目よりヒットする作品と残念な結果になる作品に分かれる理由って何かしらね?」

竜太「何だろ?ストーリーの面白さとか、製作側の熱意と予算かな?後は一作目が低予算で成功したとか?」

真琴「じゃあ、逆に残念な結果になった原因は?」

竜太「う〜ん、一作目で風呂敷を広げすぎちゃって二作目で縮んじゃうとか、スタッフや役者が変わって何か違うとなってしまったとかかな。例えば「デルタフォー、もごもご」

トッド「おっと、チャック・ノリスの悪口はそこまでにしろ。『魔法修行者の救国戦記』スタートだ!」


斉藤「ファン、なのか?」

トッド「まあ、な」

式神で偵察した雪枝からの報告を聞いて、俺は斉藤と舞、エーリカとで千体にも及ぼうという竜牙兵について疑問に思うところを話し合った。どうしてその存在に気付かなかったのだろうかと。


満峰神社から来た俺達は皆、魔法で魔力を探知する事が出来る。一定以上の魔力を持つ、放つ存在を察知する事可能なのだ。ならば、千体もの竜牙兵が数百メートル先という間近に存在していれば大量の魔力を必要とするはずであり、大量の魔力に俺達は気付かない筈が無いのだ。しかし、実際には目と鼻の先といっても過言では無い場所に竜牙兵はズラリと並べられていて、俺達は雪枝が式神で探るまでまるで気付く事が無かった。アルメウス公爵は俺達の間抜けっぷりがさぞ可笑しかった事だろう。


それについて、斉藤が立てた仮説は悍ましいもので、俺は聞いていて胸糞が悪くなってしまった。


エーリカが言うには、竜牙兵の触媒となるのは竜の牙。歯や骨でもよいらしく、更に言えば竜ではなくても巨人や巨鳥などでもいいようだ。


そうした触媒に魔力を与えて式神のようにしたものが竜牙兵、と思いきや、そうではないと。術者が触媒に与えるのは魔力ではなく、別の"力"を与える事で竜の牙、歯、骨は竜牙兵となる。


そして、その"力"とは斉藤曰く、


「怨霊、死霊の類いだな」


「えっ、竜牙兵ってそうなの?」


「吸血鬼は死霊術師だろ?」


「まぁ、そうだけど」


死霊や怨霊となるのは理不尽に生を奪われた者達の魂。それらが自分達を死に至らしめた者、現実、世の中などを怨み、生ある者を妬む。そうした死霊や怨霊が死霊術者の術に呼び寄せられ、仮初の身体を与えられて操られる。それが竜牙兵であると。


「死体を使ったものがゾンビで、ゾンビに魔力付与して強化したのがアンデットウォリアーだな。多分、触媒は人形や別の物でもいいんだろうが、竜の牙なんかはより強力に出来るんだろう」


「じゃあ、その死霊や怨霊はどこから引っ張って来たんですかね?」


「それは…」


舞の疑問にエーリカが口籠もって言い淀んだので俺が引き継いだ。


「ここは戦場で、虐殺の起きた場所だ。死霊なんて幾らでも呼び寄せられるはずだ」


確かにサラクーダ市はその周辺も含めて魔王国軍と有志連合軍との戦場になり、その後は魔王国軍による市民達や避難民達の虐殺の場となっている。


「じゃ、じゃあ、魔王国軍によって理不尽に殺された人達の彷徨える霊達が、死して尚も魔王国軍に利用されてるって事ですか?」


舞はそう言うと口を両手で押さえて絶句し、エーリカは口元を歪めて俯いている。酷い話だぜ、全く。


「飽くまで仮説だ。本当のとこれはわからない」


いや、斉藤よ、そうは言っても今更だぞ?


「だが、そう考えると竜牙兵の存在に俺達が気付かなかった事に説明が着く」


これでアルメウス公爵を始めとする吸血鬼や魔王国軍に組みする魔術師どもをぶっ殺さなくてはならない理由が増えたな。



俺は第1キャンパスの正面玄関の扉に風魔法を応用した圧縮空気弾を叩き込む。すると、分厚く黒々としたマホガニーのような木製の扉は周りの外壁ごと木っ端微塵に吹き飛んだ。


室内の魔力を探るもの、魔力の反応は察知出来なかった。とはいえ、竜牙兵は死霊術という非魔法によるものだ。魔法による罠の類いも無さそうだが、罠は魔法によるものとは限らない。油断は出来ないという事だ。


という事で、ここは当然の事斥候を出す。


「ラミッド、アミッド、頼めるか?」


「了解だ、兄貴」

「任せてくれよ、兄貴」


二つ返事で引き受ける二人。今や実力を備え、二人は実に頼りになる戦士になった。


ラミッドとアミッドの兄弟は虎獣人だけに、このような音を消し、気配も消して敵を探ったり、殺したりといった忍びの任務も得意だ。しかも、仲の良い兄弟なので息もぴったり合っていて、こうした任務に最適と言える。



破壊した玄関から音も無く室内に忍び込む二人。やがてアミッドから念話によって内部の状況が伝えられる。


"兄貴、罠の類いは無いようだけど、一階の奥には竜牙兵がいるみたいだ。何か、嫌な気配がするよ"


"わかった。これから本隊が進入する。二人はそのまま待機していてくれ"


"了解"



俺は第1キャンパスの正面玄関だった破壊孔から背後に控える制圧隊を振り返ると、右手を挙げてハンドサインで進入を指示する。


第1キャンパスの1階はここで学生同士が交流を持ったり、外部との折衝をしたりするのだろう、広いホールになっていて、ソファが幾つも置かれるなど日本の大学とそう作りは変わらなかった。ただ大きく異なる点は、日本の大学には剣と盾を構える骸骨の兵隊なんていないって事だ。


進入した俺達に反応したものか、薄暗い室内に窓から差す陽の光を浴びた竜牙兵の群れがホールの奥から骨のものなのか装備のものなのか、ガチャガチャと音を立てて現れた。


「ギュンター」

「了解です、リュータ様」


ギュンターは俺の意を正確に汲んで皆まで言わせず、竜牙兵が隊列を組む前に人狼達を突撃させた。今日の戦闘に際し、既に人狼の姿となっていた黒狼族の戦士達は、ギュンターの下命により加速して竜牙兵に襲いかかると、忽ち20体もの竜牙兵を倒した。


制圧隊によりそのまま第1キャンパスの1階を制圧して室内の安全を確保すると、俺はエーリカに率いさせた射撃隊を進入させた。更に時計塔のある奥の別棟に向かうべく制圧隊を前進させる。


第1キャンパスの建物同士を繋ぐ一階の渡り廊下を進んで別棟に至ると、先程と同じようにその入口の扉を周りの壁ごと圧縮空気弾で破壊する。


この別棟は、竜牙兵ひしめく中庭に面しているせいか、室内で待構える竜牙兵が多く、斥候を出すまでも無く竜牙兵が襲いかかって来た。


人狼達やラミッド達獣人達が直ちに応戦する。


「CATニャルコーシス、行くよ!」

「「「シャー!」」」


アーニャが部下の猫娘達を率いて果敢に竜牙兵に撃って出ると、ガーライルも負けじと配下の狼獣人達と共に竜牙兵の前に躍り出た。


「猫に負けるな!「舞狼奴」突撃!」

「「「ワォー!」」」


だが、兎に角竜牙兵が多く、忽ち乱戦の様相となり、俺も応戦に加わるが敵味方入り乱れる中で広範囲に及ぶ魔法は使えない。


最早愛刀雷丸も抜けず、俺は両手両足に魔力を込めた徒手格闘で一体、また一体と竜牙兵を倒す。正面から斬りつけて来る竜牙兵の剣を左に半身を切って躱すと、正拳突きで胸骨を砕く。竜牙兵は胸骨を破壊されると動きを止め、次の瞬間には忽ち全身が灰のようになって崩れるのだ。これはおそらく、竜牙兵の触媒となった竜の牙などが竜牙兵の胸骨にあるのだろう。


そして、後ろから2体の竜牙兵が迫ると、俺は手前の1体に左上段回し蹴り見舞う。魔力が込められて真紅に輝く俺の左足が竜牙兵の体幹を盾ごと粉砕し、そのまま右中段横蹴りで後方の1体を仕止めた。


このような戦闘でかなり時間を食われてしまっている。効率が悪いったらない。


(俺とした事が、抜かったか)


自分の考えの甘さを悔いたが、時既に遅い。ここは一旦引くか?と考えていると、戦兎族のユリィがいつの間にか隣に来ていた。


「リュータ、時間が無いんでしょ?」

「その通りだ」


「私には奥の手があるの。ここは私が何とかするから、リュータは皆を連れて上へ行って!」


そっ、それは、この状況では決して言ってはいけない言葉!しかも、奥の手?


ユリィは俺の返事を待たず、両手を組み、目を閉じて精神を集中させた。


「我、戦兎族の戦士ユリィ。古き盟約に従いて影より出でよ、黒蛇アドランゲ!」


え?





いつも『魔法修行者の救国戦記』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。


それでは次話「黒蛇魔獣アドランゲ現る!」お楽しみ!


戦雲がリュータを呼ぶ

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