第142話 敵地をスパイする
竜太「やあみんな、土方竜太だ」
舞「…」
竜太「舞、どうしたんだ?急に黙り込んで」
舞「先輩、最低です!」
竜太「え?俺何かやらかした?」
舞「いえ、先輩はいつでも私の素敵な先輩ですよ」
竜太「いや、だって今、最低だって、」
舞「いえ、声優の種田梨沙さんが演じる後輩ヒロインに憧れまして、ちょっと言ってみたかったんです。だめ、でしたか?」
竜太「はぁ、良かった。俺が舞の最低の先輩じゃなくて。という事で、『魔法修行者の救国戦記』スタートだ!」
舞「先輩、最低です!」
竜太「罵られているのに、何かいい。もう一回言ってみて?」
☆ アルメウス公爵視点
私は異世界から来たという者達(ヒジカタと言ったか)との散歩中の挨拶と世間話を終えて腹心のザルツと共に学長室に設えた私室へと戻った。
「よろしかったのですか?」
ザルツは家臣とはいえ、幼き頃より共に過ごして来た腹心にして友人。二人きりの時などはこのように自分から話しかけてくる事もある。
「よいのだ。どの道私はここで討死にするしかない。でなければヨハンもヴィルターも殺される」
ヨハンとヴィルターは私の長男と次男だ。私と妻のマチエとの間には息子がもう一人、三男のゾルダがいて、今は異世界にいるカイネル王子の元で従軍している。私がここで戦い、討死にすれば吸血鬼族にとり最悪の事態はどうにか回避する事が出来る。
「このザルツ、最後までサウザール様にお供致します」
「すまんな、ザルツ」
「では末期の戦支度と参りましょう」
「すまんが、頼む」
とはいえ、ザルツの事だ。もうとっくに戦支度など終えているのだろうがな。
〜〜〜〜
新しい朝が来た。希望の朝、という程ではないが。サラクーダ市での戦いを俺は今日で終わらせるつもりでいる。
神聖パレンナ同盟の各勢力は野営していた陣を引き払い、サラクーダ大学を包囲すべく集結を始めている。サラクーダ大学は東西に長く伸びた直方体をした河岸段丘の東端にあり、その北側、南側、東側は高さ200m近い崖となっている。大学の正門がある西側に兵力を集めるだけで包囲は完了する。
大学の西側に集結をした友軍の兵力は全軍の約半数の300人あまり。先日の戦いで戦死傷者が出ているし、サラクーダのの各所に警戒部隊を配置しなければならない。
サラクーダ大学の正門は煉瓦造りのアーチ門だ。その左右に伸びている塀も含めて、何ら防御的な機能は有していない。その正門の向こう側に魔王国軍が布陣している、かと思えばそうではなく。ただ、その奥の建物に幾つかの気配が感じられる。
「兵力で劣る魔王国軍は縦深防御に徹するしかないわね」
実際、真琴の分析通りだろう。昨夜の印象だと正面切って決戦を挑んでくると思っていたが。
「それで、竜太司令官さんはどうするの?」
捕らわれている市民や魔族を救出する。魔術師と分体を全て処分する。この方針は変わらない。ただ、俺達の世界に関する優先度でいえば魔術師と分体の処分になる。だが、そこにアルメウス公爵が立ちはだかるというのであれば力づくで魔王国軍を叩きのめすしかない。
「罠とわかっていても、行くしかないさ」
「そうよね、そうするしかないわよね」
そう言って真琴は肩を竦めた。
「リュータ、雪枝ちゃんの式神偵察が終わりました」
「リュータ、リカが千里眼でアルメウス公爵の居場所を特定したわ」
サキとエーリカからそれぞれ報告が入った。
戦力が劣勢だからといって、俺は決してサラクーダ市の魔王国軍を舐めてはいない。なんと言ってもここは異世界、未知の世界だ。魔物と違って、俺は実際に魔王国軍と戦った経験はあまり無い。害特封地内での小競り合い程度の遭遇戦が何度かあるくらいだ。
しかも、魔王国軍の編成やら兵器やら戦略も戦術も知らない。そもそも魔族についても殆ど知らない。どのような文明の元、どんな文化があり、どんな思想で信仰があるのか。鬼族や今回の戦いで一戦交えたミノタウロス、それに吸血鬼族。そうそう、ガミーラ族ってのもいるね。それくらいしか知らない。
しかし、実際には魔王国には多くの種族がいるというし、その未知の魔族がどのような能力があるのかも知らない。
そういった訳で、慎重を期して俺はフレデリカに千里眼で敵の大将であるアルメウス公爵の居場所を探って貰ったのだ。
「リッキー、お疲れ様。疲れただろう、大丈夫か?」
「はい。私は大丈夫です。魔力操作で魔力もいっぱいありますから、以前よりもよく見えるんです」
「そうか、ならいいだが。それで、アルメウス公爵は?」
「アルメウス公爵は大講堂に側近達と共に陣を構えています。その数は凡そ30人。皆吸血鬼です」
正門から大講堂までは1500mといったところか。南側崖と北側崖の間は400mほど。そして、正門を過ぎると時計塔のある4階建の校舎(第1キャンパス?)があり、その向こうにはかなり広い広場があり、大講堂はその奥にある。
「リッキー、ありがとう。攻撃開始までは休んでいてくれ」
「リュータ教官、私は本当に大丈夫ですよ」
フレデリカの千里眼と並行して雪枝にも式神による偵察をして貰っていた。
雪枝は満峰神社の畠山禰宜から式神の術を習うと、術と相性が良かったのか適正があったのか、すぐに上達し、更には自分で文献を調べたりして、なんと、独自の術を構築まで出来る様になっていたのだった。
雪枝は紙で鳩や鴉、蝉や蜻蛉を折ると、それらに魔力を込めた吐息を吹きかけて空に放つ
。すると折り紙のそれらは忽ち本物と同じ姿となり、雪枝に命じられた通りザラクーダ大学の各所に飛んで行ったのだ。
式神と術者である雪枝とは魔力による回路が繋がっており、式神が見た映像をリアルタイムで見る事が出来るそうだ。じゃあ、遠距離だったらどうすんの?って話になろうものだけど、その場合は戻って来た式神から伝えられるのだと。全く我が妹ながら凄いの一言に尽きる。俺にはそこまで高度な術は使えないからな。
そして、雪枝がサキに連れられて式神によって収集した敵情を報告に来た。
「手前の時計塔がある建物の奥の広場に骸骨の兵隊が配備されてるよ」
「それはあれね、竜牙兵ね。流石は吸血鬼、死霊術の使い手ってところかしら」
エーリカが"骸骨の兵隊"についてそのように説明してくれた。
「それで数は凡そでどれくらいだ?」
「建物内には竜牙兵?はいなくて、広場には、ざっとだけど、一千くらいかな?兎に角ビッシリといたから」
雪枝の報告に、そこにいた一同から驚愕の声が響く。
一千とは!俺は思わず真琴と顔を見合わせてしまった。ここに来て新規大規模戦力の投入と来たものだ。
「そんな兵力があって、何でアルメウス公爵は上サラクーダの市街戦に投入しなかったんだ?」
そこにいる誰もが抱いたであろう疑問を斉藤が皆を代弁するかのように口にした。すると、皆の視線はこの場で最もこの世界の魔法に詳しい(多分)エーリカに集中し、エーリカはその圧力に驚いて後ずさった。
「わ、私もそんなに詳しい訳じゃないんだけど。でも竜牙兵は術者や拠点を守る事を主目的とする術だから、術者からあまり離れられないの。それに、それだけ大量の竜牙兵ともなるとここにいる吸血鬼が総出で術を施しているんじゃないかしら?」
「じゃあ、文字通り最終防衛線ってわけですか。遂に最終局面ですね、先輩!」
ちょっと興奮したように舞が言った。まぁ、そうとも言えるわけだが、問題は正面の第1キャンパスの両翼に竜牙兵を展開されるとかなり厄介な事態になるという事だ。
「これは面倒な事になりましたね。あの建物がある以上、正面突破は出来ず、左右どちらに回っても竜牙兵が出て来る、という訳ですか」
「して、神使様。これをどのように突破いたしますか?」
アンドリューの言葉を継いで俺に舌鋒鋭く迫るのは戦兎族のグレンダ女王陛下の側近であるラキィさん。この女性はアラフォーの身長も高い均整の取れた肢体に赤毛ロングのちょっとキツめの美人だ。
とはいえ、ここはまだ雪枝の報告を聞く場だ。戦術を考えるにはまだ早いだろう。
俺はラキィさんにその旨を説明して、雪枝に報告の続きを促した。
「大講堂はリカが千里眼で見たからいいとして、その向こうの第2キャンパスには分体がいるの。数はわからないけど、そこには分体だけじゃなくて、白い衣装を着たヒト族やエルフや鬼族もいるよ」
「その白い衣装のヒトやエルフはサラクーダ大学の魔術師です。鬼は魔王国から来た学者か魔術師でしょう」
側で聞いていたザックが雪枝の報告を解説する。
アルメウス公爵が一体何を考えているのか。フレデリカと雪枝の報告した情報からすると、それは身を犠牲にして飽くまで魔術師と分体を守るような布陣にも思えるのだが。
雪枝からの報告は以上であった。雪枝の式神は現在もサラクーダ大学の各地にいて、今は両者を繋ぐパスを閉ざしているものの、魔力が続く限り監視を続けるのだという。
俺は雪枝に礼を言って労うと次の手を考える。捕らえられている市民達がいなければ、魔法攻撃で蹴散らして終わるのだがな。
「ここは正攻法ですかね?」
不意に傍にいたサキが呟いた。そうだな。ここでは大規模な強威力魔法は使えず、何か奇想天外な奇手も出番は無い。一つ一つ根気よく時間をかけて抵抗を排除していかなければならない状況と言える。なかなかどうして、食えない美中年じゃないか。
「サキも戦術がわかるようになったな」
「そりゃあ、私はリュータの副官ですから!」
俺が誉めると、サキはふんすと鼻息も荒く、どうだとばかりに胸を張ってみせた。
いつも『魔法修行者の救国戦記』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。
それでは次話もお楽しみ!
さらば地球よ 緑の星よ 宇宙戦艦ヤマト
花咲く丘よ 鳥鳴く森よ 魚棲む水よ 永久に永久に
愛しい人が 幸せの歌 ほほ笑みながら 歌えるように
銀河をはなれ イスカンダルへ はるばる望む
宇宙戦艦 ヤマト
さらば地球よ 再び遭おう 宇宙戦艦ヤマト
戦いの場へ 旅路は遥か 命の糸が張りつめている
別れじゃないと 心で叫び 紫の闇路の中へ
銀河をはなれ イスカンダルへ はるばる望む
宇宙戦艦 ヤマト
「宇宙戦艦ヤマト」OP 3番・4番より




