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第141話 インタビューウィズヴァンパイア

竜太「やあみんな、土方竜太だ」

真琴「やあみんな、朝倉真琴よ。ねぇ、竜太はやっぱり『燃えよ剣』とか読んだりしたの?」

竜太『そりゃあもう何度となく読んだよ。中学で剣道部に入ったのもその影響だしね。新撰組、いいよねぇ。土方先生はもう最高に格好良くて云々…」

真琴「やばい、土方先生とか言ってるし。地雷を踏んだかも。と、いう訳で『魔法修行者の救国戦記』スタート!」

竜太「で、真琴は新撰組で誰が好き?」

真琴「え?わ、私はやっぱり沖田総司かなぁ(言えない。実は桂小五郎のファンとか)」

俺達からの一方的な訪ではあったが、漸く現れたアルメウス公爵(多分)は、えーっ嘘だろ!と言いたくなる程のナイスミドル、いや、美中年とでも言うべき容姿の雰囲気の持ち主だった。


しかも、あの紅い瞳ときたものだ。もしかして魅了とか使うのではないか?まさかと思いながらも俺はユリィの様子をチラ見して確認する。


「?」


ユリィは急に俺に見られて怪訝そうな表情をして、「どうかした?」とでも言うように小首を傾げた。か、可愛いじゃないか。


だが、どうやら魅了やらの精神支配系の魔法は使われてはいないようだった。その点で俺は少し安心してアルメウス公爵と思われる美中年と対峙する。ここからがある意味勝負の時だ。


「このような夜分に突然押しかけて失礼な上、わざわざここまで足を運んで頂いたようで誠に有難う御座います。俺は異世界から来た土方竜太という者です。数時間前まであなた方と戦っていました。失礼ですがアルメウス公爵でよろしいですか?」


「いかにも、私がアルメウス公爵家現当主、サウザール・レ・アルメウスだ。魔王様よりここサラクーダ市の派遣軍司令の任を賜っている。なに、時間の事は気にする必要なない。我等吸血鬼にとり、この時間帯が最も活発になる時間だ」


意外にも気さくな公爵の態度に少し驚いた。参考にもならないとは思うが、俺が以前に読んだ銀河系を舞台にしたSF小説に登場する某公爵は終始尊大で横柄な態度だったのだ。だから公爵なんて聞くとそうしたイメージで捉えてしまう。


「して、態々私を訪ねて来た要件を聞こうか?まさか、私に昵懇願おうという訳でもないのだろう?まぁ、それはそれで一興ではあるがね」


「「「「……」」」」


案外話すと面白い人物かもしれないが、何というか気障ったらしく、そう言われて馬鹿にされたように少々イラっとしたのは俺だけ(チラッ)、ではなさそうだった。まぁ、ここはスルーして先に行こう。


「もう既に互いに交戦状態にはありますが、最終局面くらいは敵の大将と顔を合わせておくのも悪くないと思いました」


アルメウス公爵はそれを聞いてふぅ〜んといった表情になり、俺の言葉を継いで斉藤が更に続ける。


「明朝をもってサラクーダ大学への攻撃を開始する。我々は我々の世界に魔物を送り込んで破壊し、この世界にあってはエルム大森林の民の多くを虐殺した魔王及び魔王国軍を許す訳にはいかない。だが、そちらが現在捕らえている者達を解放し、あの"角"も含めて全ての分体を処分しるなら降伏とサラクーダ市からの退去を認めよう」


事前に俺と戦兎族のグレンダ女王、有志連合軍のアンドリューの三者で、それぞれのブレーン同席の上で話し合って決めたこれらの要求を、俺はアルメウス公爵に突き付けた。何があってもサラクーダ市民、エルム大森林の民達を虐殺し、俺達の世界に送り込む魔物を生み出したこのサラクーダ市と魔王国軍を許すつもりは無い、というのが三者ともの共通認識だ。分体という新たな脅威の存在も知ってしまった以上、この要求は決定だ。


だが、このサラクーダ大学の構内にまだサラクーダ市民やエルム大森林の民達、反魔王派とされた黒狼族を始めとした魔族達が囚われているという情報がある。そのためギュンターやザックの手前、問答無用で奴等を攻撃する訳にも行かない。虜囚の奪還に心を砕いている事もアピールする必要もあるのだ。まぁ、ギュンターとはそういう約束もしているしな。


とは言ってもアルメウス公爵が此方の要求を蹴るのであれば、それは仕方のない事だ。だってあいつが降伏を拒否したんだからな!と言い訳も出来るというもの。


しかし、到底飲めない俺達からの要求を聞いてもアルメウス公爵は「よろしい、ならば戦争だ!」とはならず、侯爵は「ふむ、さては困った」と態とらしく考え込む風となった。


「個人的にそうしたいのは山々なんだが、一族や領地の部民を思うとそれも出来なくてね。それにこの角の事、知っているかい?」


アルメウス公爵はそう言って自分の額にある白い角を指差した。


「吸血鬼に角なんて無いと聞いているが?」


斉藤がアルメウス公爵を窺うように返すと、アルメウス公爵は学生の解答を聞いた教授のように鷹揚に頷いた。


「その通り。これは魔王様より魔王国の主だった種族、その族長達が族長たる証として賜ったものだ。表向きはね。だが、実際は魔王に忠誠を誓わせ、裏切りを未然に防ぎ、そして有力種族の力を削ぐための枷だ。この角を額に植え付けられた族長が魔王に叛意を抱けばその者が死ぬばかりか、その一族は族滅となり、部民達も徐々にその数を減ら事になる。そこの人狼の坊やのようにね」


いや、態々黒狼族を例に出さなくてもいいだろうに。ギュンターを煽るような真似は止めて欲しいものだ。それに、お前達だって眷属に同じような事しているよな?


そうしたSっ気が垣間見られはするものの、このアルメウス公爵、そう悪い人物ではなさそうに思える。だが、ちょっと話したからって悪い人物じゃないと思うほど俺はチョロい男ではないぞ。アルメウス公爵は既に自らの死を不可避なものと覚悟を決めているように思える。それも吸血鬼の長として魔王から一族と部民を守るために、だ。


「さて、立ち話もそろそろ限界だ。私の不在が長くなると軍監殿が不審に思うからね。だから結論から言えば、答えはダリューク(否)だ。明日は互いに雌雄を決する事としよう」


まあ、こちらの要求は蹴られると思っていたから、こうした結果も想定内だ。


すると、ギュンターが鬱積していた感情をアルメウス公爵にぶつけるように叫んだ。


「アルメウス公爵、あなたが自分の一族、部民を思うように僕も族長の息子として部民を守らなければならい。黒狼族の皆を解放して下さい!」


アルメウス公爵はふむと左手母指と示指で下顎を掴み、考えるポーズをとると、やはり、学生を諭すように語りかけた。


「先程言った通りだ。残念ながらそれは出来ない。君も族長の息子ならば、君自身の手で命を賭けて成し遂げ給え。それが族長の息子としての義務だ」


「クッ!」


ギュンターは悔しそうに呻くとアルメウス公爵を睨み付けて押し黙った。ギュンターにしてみれば、それはかつてその責の重圧に押し潰されそうになった事であり、それが出来るならとっくにやってるさ、というところだろう。


そして、俺は最後の質問とばかりにアルメウス公爵に尋ねた。


「では最後に訊きたいのですが、あなたがこのサラクーダ市で行った数々はあなたの本意ではなかった、という事ですか?」


アルメウス公爵は一瞬遠い目をした後、自嘲交じりに「今となっては是非も無い事だ」と呟くように言うと闇の中に消え、後には何事も無かったような夜の静寂(しじま)だけが残った。



アルメウス公爵が正門から去り、俺達は皆が待つ自陣へと戻るべく漸く登って来た月が照らす道を歩いた。その道すがら俺は考える。アルメウス公爵が言うには、魔王国では主だった種族の族長は魔王によって裏切りを未然に防ぎ、有力種族の力を削ぐため"角"を着けられていて、魔王に叛意を抱けばその者が死ぬばかりか、その一族は族滅となり、部民達も徐々に死んでいくように仕向けられる。


ギュンターが語っていたように、魔族は力によって秩序が保たれる。力こそ正義の社会だ。今までは最強である魔王が力による支配を行なっていたが、そこへ恐怖による支配をも行うようになった。


それは力正義な魔族の種族を魔王の力で魔王国という箍で一纏めにしていたものを、更に恐怖によって締め付けて一つの方向へ、つまり、侵略、征服戦争という方向へ向かわせる必要があったという事だ。


だが、どうしてだ?この世界ばかりか、何故異世界である俺達の世界にまで侵略の手を伸ばす必要がある?


国が征服戦争を始めるには様々な理由がある。自国がいずれ経済的に破綻する事が予想された場合、侵略戦争を続けなければ自国経済が破綻してしまう場合など、大抵が経済的な理由による事が多い。では、魔王国はどうか?まぁ、俺もこの世界に来たばかりだし、正直わからない。俺一人で考えても答えは出ないから、今後の課題だな。


「ねえ、」


俺が考え事に一区切り付けたタイミングでユリィが話しかけてきた。


「ん?どうした?」


「それで、どうするの?」


「どうする、とは?」


俺が質問の意図がわからないでいると、ユリィが少し苛立ったようにたたみ込んできた。


「もう!アルメウス公爵があんな事言ったから、リュータはこの後どうするのかって訊いてるの!」


「あぁ、そういう意味か。方針は変わらないよ。こっちの要求は全部蹴られたからな。明朝を期して攻撃再開だ。なぁ、タケ?」


「そうだな」


斉藤も月明かりに眼鏡を光らせて静かに頷いた。


「ユリィも頼りにしてるぜ?」


と、ユリィにも期待をかけるように立てておく事も忘れない。


「まっ、任せてよ。私の実力、みせてあげるから!」


「そりゃ凄いな」


「ふふん」


その後、案の定、リドリー女史から「私には期待しないんですか?」等の突っ込みが入りながらも、ユリィとリドリーはそれぞれの上役に報告しに行った。


「リュータ様…」


不安げなギュンターは何かと保護欲を掻き立てる容姿だが、手練た人狼の戦士である。だが、父や姉、部民が心配なのだろうな。


「ギュンター、捕らえている黒狼族がいたら可能な限り助け出そうな」


「…はい」


俺は右腕に抱きついたギュンターの背中を左手でぽんぽんと優しく叩いた。


いつも『魔法修行者の救国戦記』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。


それでは次話もお楽しみ!


わが日の本は島国よ

朝日かがよう海に

連りそばだつ島々なれば

あらゆる国より舟こそ通え


されば港の数多かれど

この横浜にまさるあらめや

むかし思えば とま屋の煙

ちらりほらりと立てりしところ


今はもも舟もも千舟

泊るところぞ見よや

果なく栄えて行くらんみ代を

飾る宝も入りくる港


横浜市歌より


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