第138話 Tチームの大勝利
竜太「やあみんな、土方竜太だ」
雪枝「お兄ちゃん、分体って変な角に寄生されるとあんなのになっちゃうんでしょ?キモいよね」
舞「雪枝ちゃん、まだ角なんていい方なんだよ」
真琴「そうよ。某SF漫画に出てきたにシド○ア線虫なんて、ねえ?」
舞「ねえ?」
雪枝「ど、どうなっちゃうの?」
真琴「その線虫を目から入れられると、ゴニョゴニョ」
雪枝「ひいぃぃ!」
竜太「二人とも、妹怖がらすのはやめてくれ。という事で『魔法修行者の救国戦記』スタートだ!」
畠山「実は更に上を行く『遊星からの物体X』というのがあってな、其奴はゴニョゴニョ」
「「「「ひいぃぃ!」」」」
☆武田少尉視点
吸血鬼のリーベル・フリッカーを倒すと、青迅を鞘に収めて俺は急いでケリィの元へ駆けつけた。彼女が苦戦しているようなら助けなければ、という思いだったのだけど、俺が駆け付ける頃には吸血鬼のリーダーである元ギルドマスターは既にケリィに倒されていて青い炎の中で燃えていた。
すると、俺はある事に気付いた。燃えている吸血鬼の亡骸の前で荒く息をするケリィ。敵は強く、戦いは伯仲したのだろう。彼女の服はズタズタに裂け、広く肌が露出していたのだ。幸い明らかな外傷は無いようだけど。
俺は駆け寄りながら急いで上着を脱いだ。ケリィはまだ自分の格好には気付いていない。良かった、ケリィのあられもない姿が白日に晒されなくて。
「ケリィ、あの吸血鬼を倒したんだな。大丈夫か?怪我は無いか?」
俺はケリィの背に後ろから上着を掛けて労った。
「ありがとう、怪我は無いよ。でも、どうして上着を?」
なんとか、汗かいて冷えるからとか言って誤魔化せれば良かったのだけど、生憎俺はそれほど器用じゃない。それに、自分の格好なのだから直ぐに気付くだろう。
「あぁ、いや、その、ケリィの服が破けていたから、」
俺がそう言うと、ハッとしたケリィは自らの格好を改める。と、その途端に頬を朱に染めて上着の前をさっと合わせた。
「見た?」
「あ、うん。ごめん」
美人で男勝り、勝気なケリィが、恥ずかしそうに頬を染め上目遣いで尋ねる様に、俺は、俺の心は打ちのめされて膝を屈していた。ギャップ萌え?吊橋効果?何とでも言えばいいさ。
だから俺はケリィから「戦兎族の女のあられもない姿を見たのだから責任取ってよね?」という言葉に疑いも無く「責任を取る!」と答えた。
もしかしたら戦兎族にはそうした習慣というか、慣し、掟の類があるのかもしれないとは後になって思い至った事だった。
「これからよろしくね?」と嬉しそうにするケリィに、俺は自分が言った言葉に微塵も後悔など感じず、これからこの娘と共に生きて行く未来に思いを巡らせた。
とはいえ、ここは戦場であり、未だ任務の最中だ。敵の指揮官たる吸血鬼を倒したとはいえ、やらなければならない事は沢山ある。
「ケリィ、行こう」
「うん」
俺が手を差し出すと、ケリィは力強い返事と共に俺の手をギュッと握った。
☆オスカー視点
4人のチームを更に二手に分け、多方向から敵に攻撃を加えて敵の注意をこちらに引き付ける。陽動作戦としては妥当なところだ。だが、ノブとケリィは敵の指揮官らしき吸血鬼共とガチで殺り合い始めてしまった。状況の流れ的に仕方がないとはいえ。
「あの2人、陽動の意味わかってるのかね」
「じゃあ、あの2人は陽動の陽動って事でどう?」
俺がノブとケリィの動きについて呆れ気味にボヤくと、トールは彼等二人を庇いつつ、俺を納得させるようにそう言った。良い悪いは別にして、飽くまで上官を立てて肯定的に捉えようというトールの姿勢に日本社会の縮図を見たような気になった。
だが、陽動の陽動という言葉は気に入った。
「じゃあこっちはこっちで派手におっ始めるか?」
「ああ、鬼さんこちらってな」
それからの俺とトールは指揮官潰しをノブとケリィに任せ、移動しながらの攻撃に専念した。
しかし、数が多い。
アンデット戦士は頭を潰さなくては"殺す"事は出来無いが、あいつらはもう死んでいるため肉体に損傷を受けたらもう再生する事は無い。なので魔法で攻撃すれば無力化するのは簡単なものだ。体幹を分断したり、脚を切ってしまえばいいのだから。
だが、あの分体はアンデットと違って実に厄介な相手だ。いくら攻撃を加えて外傷を与えても直ぐに治ってしまう。
随分とアンデットの数は減らせたものの、分体を倒す事は出来ない。俺はトールに標的をアンデットから分体に変更しようと念話で伝えた。
"オスカー、俺にいい考えがある。倒せないまでも分体を無力する方法だ"
トールからの念話が返って来た。その後詳細が続いたが、そう難しい事でもなかった。
"わかった。それでやってみよう"
ちょうど良いタイミングで一体の分体がこちらへ向かって来ていた。しつこく攻撃を繰り返す俺達に業を煮やしたのだろう。
その分体は自らの頭上に幾つもの火球を作り出すと、狙いも定めずに俺達がいる辺りに火球を放った。
それは広場で戦った分体が放った火弾ほとまの高熱、高速ではなかったものの、並みの火球以上の熱量があり、且つ一つの火球が幾つもの小さな火球に別れて拡散するのだ。さながら散弾ってところだろうか。やはり、分体にも個体差、能力差があるようだ。
俺達は石造りの建物に隠れていたが、分体が放った火球は辺り構わず落下する。建物の屋根や壁体、地面に当たった火球は弾けて消滅するも、窓から室内に落下した火球は可燃物に引火してあちこちで火災を引き起こした。煙は俺が潜む建物にも流れてきたため、とても煙い。
"トール、ぶっつけ本番だが、まずアレに試してみよう"
"了解だ"
火球を撃つ分体の位置は火球が飛来して来る方向と、そいつが放つ魔力から大体把握している。次に火球が止んだタイミングで仕掛ける。
"今だ"
"よし"
俺とトールは打ち合わせ通りタイミングを合わせて隠れている建物から路上に飛び出すと、
" "3、2、1、shoot!" "
比較的近距離で双方向から風魔法の風刃を分体の両大腿部へ放った。
バシュ(×2)
俺とトールが放った風刃は分体の左右の大腿部を切断した。分体はそのまま前のめりに倒れ、うつ伏せでジタバタと藻掻きはじめた。
分体について俺達地球人類が知る事はまだまだ少ない。今日初めて接触したのだから当たり前だが、分体といえども不死身ではなく、どうやら欠損した四肢は新たに生えて再生するという事は無さそうだ。くっ付ければくっ付きそうではあるが。
「どうやら上手くいったな」
「そのようだな」
俺とトールは互いに頷き合うと、トールが首を刎ね、分体は絶命した。
そうしている内に、どうやら吸血鬼を倒したノブとケリィが陽動の陽動から本筋の陽動に復帰して魔王国軍を攻撃し始めた。すると、複数の分体が俺達4人を脅威と認識して排除に動き出したのだ。
現時点で19体の分体の半数近くが俺達に向かい戦兎族の攻略に臨む分体は半減した。アンデット戦士は俺達の攻撃で随分とその数を著しく減らしていたため、下サラクーダから攻め上がる戦兎族への圧力は減少した。
戦兎族はこの機を逃さず、一気に魔王国軍の防御陣地を抜き、上サラクーダへと雪崩れ込んだ。
少数戦力で敵陣に後方から奇襲をかけ、敵の戦力を削ぎ、分断し、もって友軍による攻略を容易ならしめた。ノブが率いるチームは任務を果たしたのだ。
その後、それまで魔王国軍の上方からの攻撃に耐えていた戦兎族が怒りに任せてあっという間に吸血鬼と分体とアンデットを殲滅してしまった。そればかりか、戦兎族は神使であるリュータの指示も仰がずに市の議事堂に攻め入って吸血鬼の眷属となっていた元市長や市議会議員などを血祭りに上げてしまったのはご愛嬌、いや、想定外だったが。
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それでは次話をお楽しみに。
「J9って知ってるかい!
むかし太陽系でイキに
暴れまわってたっていうぜ
いまも 世ン中 あれほうだい
ボヤボヤしてると
うしろからバッサリだ
どっちも!どっちも!
どっちも どっちも」
『銀河烈風バクシンガー』より




