第134話 とある魔法研修生の追憶
竜太「やあみんな、土方竜太だ」
エーリカ「やあみんな、エーリカよ」
竜太「エーリカ、この国には秋になると月を愛でる風習があるんだよ」
エーリカ「向こうの世界にも月の神話や御伽噺が沢山あるのよ」
竜太「へえ、どんな話?」
エーリカ「例えば、向こうの世界には二つの月があるでしょ?ラーマとソーマっていう姉妹の月なんだけど、ティタンって言う赤い星に騙されて仲違いしちゃったのね。それで二つの月は決して同じ空には現れないって話とか」
竜太「何か、少し悲しい話だね。でも、向こうの世界の月にはお仕置きされなさそう、という事で『魔法修行者の救国戦記』スタート!」
竜太「そのティタンって星は男星だったりして?」
エーリカ「そうよ。よくわかったわね」
竜太「まあ、姉妹絡みの神話って大概がそうだよな」
☆武田泰信少尉視点
俺、武田泰信は今から24年前に神奈川県は真鶴町に生まれた。
家族は両親に姉と弟と妹の6人家族。うちは父がイタリアンの料理人であり、真鶴漁港で上がった新鮮な魚介類を使った地中海料理と真鶴半島からの真鶴漁港から相模灘を一望できる景色を売りにしたペンションとレストランを経営している。その名も「Gabbiano」。ガッビアーノと読み、カモメの意味らしい。因みにレストランの方は「Taverna Gabbiano」。手前味噌でなんだけど、俺は料理も景色も最高だと思っているよ。みんなにも是非真鶴町へ来て欲しい。温泉は無いけど、とてもいいところなんだ。
子供のころから家業は姉と弟が継ぐ気満々だった。俺は調理も観光業も嫌ではなかったけど、武張った事や身体を使う仕事が好きだったので、高校での成績も良かった事から国防陸軍の士官学校の門を叩き、職業軍人への道へと進んだんだ。
余談だけど、俺の小学生の頃からの渾名は「シンゲン」。武田という名字と、泰信の「信」の字、それに体格が良くて喧嘩も強かったガキ大将的なイメージから付いたものだ。だけど、実は本当に俺の家は戦国大名の武田家の末裔であったりする。勿論、分家もいいところで、それでも先祖は俺の誇りだ。態々言って回ったりなんてしないけど。
そんな俺の先祖の地に、ある日突然未知の凶暴な生物群が現れ、人々や街を襲い出した。所謂モンスターアタックだ。
この、世界同時に繰り返し起こった現象に日本国内は元より、世界中が大混乱に陥った。隣の大陸などではあの国やあの国が消滅した程だった。
モンスターアタックが起こったのは、俺は士官学校を卒業したてで少尉に任官したばかりの頃だった。俺が小隊長を務める歩兵小隊も直ちに被災地域に派遣され、住民の救助救出と魔物排除の戦闘を3ヶ月に渡って続けた。
魔物は大型もいれば小型もいて、人型、動物型、昆虫型、それらの特徴が掛け合わされた姿だったり。いずれも通常兵器で十分対応出来たものの、大型のオーガやオーク、デカい団子虫みたいな(王蟲?)魔物には通常の小銃弾が貫通しなかったり、弾かれたりと苦戦を強いられた。それに、幾ら討伐してもすぐに何処からか湧いて出て切りが無く、現地派遣も3ヵ月のローテーションで、幸い俺の部隊から戦死者は無かったものの、正直あのまま居続けていたらと思うとゾッとしなかった。
すると、その頃からだろうか、"魔法"という言葉が部隊内はおろか、俺の知る限りの世間で聞かれるようになったんだ。
その原因は一つの動画であった。空高く飛び上がった男が全身に炎を纏い、一撃の蹴りで怪獣のような巨大なオークキングを爆砕してしまったもの。それがSNSの動画投稿サイトにアップされるや、瞬く間に全世界を席巻してしまい、その男のその力をネット上では誰からともなく魔法だと言うようになった。
そうして人々は魔法の存在と、それを自在に操って魔物と戦う男の存在を知った。ある者は疑い、ある者は熱狂し、そしてある者は世界を魔物から救ってくれると期待した。
俺は?といえば、魔法に、あの魔法を使って戦う男に憧れた。あの男のようになりたい、戦いたい。そう熱望するようになった。
そんな時、国防陸軍において魔法研修なるものの研修生募集が発表された。第三回となっていたので、今までに秘密裏に二回の魔法研修が行われていたのだろう。どんな結果になったものか、でもこうして三回目が募集されているという事は何らかの成果が上がったのだ。
だけど、残念な事にその時の俺は応募資格の条件を満たしていなかった。だから、それまでは自分に出来る事を目一杯やってみる事にしたんだ。レンジャー課程を終えてレンジャー徽章を、その後は第一空挺団に異動となって空挺徽章を手にし、遂に魔法研修に応募する事が出来たのだった。
因みに魔法研修の応募資格は実務経験3年以上兵士、下士官、士官という事だったりする。別にレンジャーや空挺とかは関係なく、要は俺の魔法研修にかける意気込みという事だ。
残念ながら最初の選抜試験は落ちてしまったけど、遂に第五回の魔法研修に合格し、念願の魔法研修に参加出来る事となった。
国防陸軍の特殊作戦群には魔法特殊部隊が編成されていた。この部隊がこの世界の人間の魔法使いによる唯一の魔法集団だ。秩父で炎のキック男、土方竜太教官から直接魔法の教えを受けた特殊部隊員を中心に、件の魔法研修を終えた魔法特技士が加わって発隊し、害獣出現特別封鎖地区内で着々と戦果を挙げている。
俺は魔法研修に参加する前に、このまだ正式名すら決まっていないこの部隊の訓練を見学する機会を得た。様々な魔法を駆使して模擬戦を行う魔法特殊部隊員の姿を見るにつけ、俺は魔法研修への想いも新たに必ず魔法の力をこの手にすると決意したのだった。
そして、俺は今、異世界の都市で臨時の3人の部下と共に魔法の力で魔王国軍との戦いに臨もうとしている。
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それでは次話「Tチームの大乱戦①」をお楽しみに。
「"忍び"は時として金のため、仕事のために人を殺める… だが…貴様は楽しみのために殺める! 貴様は… "力"の暗闇に魅入られた哀れな男だ!!」
『ARMS』17巻より




