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第131話 異世界の狙撃手

アーニャ「やあみんな、お久しぶり。アーニャよ」


ソラ、リエ、アイ「「「CATニャルコーシスで〜す」」」


ソラ「お嬢、私達楽曲作りに挑んだんです」

リエ「なかなか難しくって」

アイ「そこでお嬢をモデルに作詞したんです」


白い闇の向こう側 貴方は待っていてくれた

世界線を超えて巡り会えた私達

ポーラスターは貴方の星ね

七つの星が集う(ひと)

でもcan't stop lovin' you この想い

can't stop lovin' you 止まらない

誰にも譲れない この恋は絶対


ソラ「どうですか?結構自信あるんです」


アーニャ「…却下ね」


ソラ、リエ、アイ「「「えぇ〜⁈」」」


アーニャ「『魔法修行者の救国戦記』スタート!」


畠山「だが、アーニャの羞恥をよそに80年代アイドル風に演出したCATニャルコーシスはデビュー曲「Nebel・liebe(ネーベルリーベ:霧の愛)で大ブレイクし、2つの世界を結ぶ架け橋となったのであった。つづく」


アーニャ「あんたが黒幕か!」


上サラクーダに至る煉瓦敷の階段路はその長さ約300m。たったの300m、されどの300m。


この300mを進むために神聖パレンナ同盟軍は港ー上サラクーダ攻略任務群(とでも名付けるべき?)威力偵察啓開部隊、通称"斬り込み隊"は襲撃してきた魔王国軍の分体集団と戦闘に及び、これを返り討ちにして殲滅した。そして、遂に俺達は上サラクーダに足を踏み入れようとしていた。


とは言え、階段路を上がったそこは身を隠す物とて無いだだっ広い広場だ。そこへ「よぉし、一番乗りだぁっ!」とばかりに駆け出して行こうものなら、忽ち何らかの魔法による集中攻撃を食らう事は必定だ。


「リッキー、敵の配置は見えるか?」


広場の向こう、上サラクーダの街区に多数の魔力を感知している。分体が広場に進出して来るであろう俺達を待ち伏せている事は明らかだが、俺には魔力を感知出来ても具体的な敵の数、姿形まではわからない。


フレデリカは「はい」と返事をすると、目を瞑って集中する事暫し、


「リュータ教官、広場の向こう、回廊に面した左右の建物の3階部分に2体ずつ分体がいます」


「そうか、ありがとう。リッキーがいてくれてとても助かる」


俺がそう礼を述べると、フレデリカはニヘラと笑み崩れた。うん、そこは武士の情けでスルーしよう。


「リッキー、狙撃手としての意見を聞かせて欲しい。あの位置の分体はこちらへの狙撃が目的だろうか?」


「分体が放つ魔法の射程距離がはっきりしませんが、少数が等間隔で上階に配置されている事から、あの建物の分体はそうだと考えて間違いないと思います」


この広場を突破すれば戦いの場は街区、つまり市街戦となる。しかし、この市街戦は通常とは異なり、分体は降伏などする事は無いだろうから、確実に息の根を止めなくてはならない。何故ならば分体はどんなに負傷をしても生命反応が有ればその高い自己修復能力で戦闘に復帰してしまうからだ。


ただ、市街戦になればお互い遠距離からの魔法の撃ち合いが出来なくなるので、俺達の後方に控える有志連合軍と黒狼族を投入出来る。そして、こちらの戦闘を派手に演出して敵の注意を引き付ければ、街道ー上サラクーダルートから戦兎族を上サラクーダに投入させる事が出来、俺達が数の上では300体程度の分体を圧倒する事が出来るのだ。


まぁ、そう思うようにならないのが世の常ではあるが。


そのためにも、まずは第2戦、目の前で俺達に狙いを定めて待ち構えている分体を排除しなければならない。それに分体はどうか知らないが、こっちは腹も減れば喉も渇く。そうそう時間をかけてはいられない。


早速、俺は相手の出方を窺うため、ベルトのウェストポーチから折り紙で折った象を取り出す。そして、折り紙の象に魔力を込めた息を吹きかけ、前方の広場へと放り投げた。


すると、折り紙の象は強い白光を放ちながら大きくなり実物大の象の姿となり、術法により仮初の命を与えられた象は鼻を高々と上げ、どうだと言わんばかりに大きくパオーンと吼えた。


斬り込み隊からは突如として現れた象に驚嘆の声が上がる。


「なっ、何?魔法なの?あの変な動物何?」

「凄い!こんな魔法見た事無い」


特に戦兎族のケリィとユリィ、黒狼族の皆はこの術法もそうだが、この世界にはいない象という巨大な生物を見るのも初めてなのだろう、相当驚いたようだった。


「これは式神といって仮初の身体に念を込めて作る使い魔のようなものだ。これを的にして敵の出方と実力を測る」


俺が式神の象に行けと命じると、象は了解とばかりにパオーンと吼え、ズンズンと広場の中心へ向かって歩き出した。式神の象はその質量感も実にリアルで、以前の俺は鳥の式神くらいしか操る事が出来なかったが、苦節3年にして、今や象の式神を作り出し、操るまでに至ったのだ。


式神の象が尚も広場を進み広場の中心に至ると、分体が潜む建物からは強い魔力が感知された。


分体が潜む4棟の建物からは高熱源体が放出された。それは火魔法によるものではあったが火球のように火の球が飛んで来るなんて程度の物ではなく、速度も熱量も大違いな火弾とでも言うべき物だった。


式神の象は4箇所からの火弾をその身に受けると、吼える間も無く一瞬で燃え尽きた。


「リュウ、階段路で戦った分体とは違うな。どうも分体にも個体差、能力差があるようだ」


「そのようだな」


俺は斉藤の考察に同意しながらも、何とも言えない気持ちでいた。式神の象は元より意志は無く、おとり目的で作り出した式神だが、やはり自分が作り出した式神が倒されるのは良い気分ではない。


だが、式神の象のお陰で分体の位置を掴む事が出来た。


俺は象の仇を討つべく、分体が潜む建物の一つ、その3階を狙って熱線をお見舞いしてやった。


赤く輝く熱線はその建物の3階部分を右から左へ薙ぐように貫き、更にもう一線を別の分体が潜む同じく3階部分を貫く。2棟の建物は石造りだが、熱線により可燃物が発火して派手に炎を吹き出し黒煙を上げていた。


「エーリカ、魔力反応はどうだ?」

「向かって右側、リュータが攻撃した辺りからは感じられないわ」


「リッキー、分体はどうなった?」

「はい、2体とも炭化しています」


これで分体からの狙撃の脅威は半減した。だが、この間にも残りの2体の狙撃分体は俺達を狙撃すべく移動しているかもしれず、もう先程のような攻撃は出来なくなっている。直接討つしかない。


「狙撃分体は残り2体だ。俺が電磁バリアを展開して前進する。エーリカとリッキーは狙撃する分体の位置を把握してくれ」


「わかったわ」

「わかりました」


「おそらく分体は2カ所だ。右側の分体をラミッド、アミッドで()れ」

「「了解だ、兄貴」」


「ギュンター、左側の分体を黒狼族で()ってくれ」

「わかりました、リュータ様」



電磁バリアを展開して前進する俺のすぐ後を斬り込み隊が続く。


円形を成す広場の直径はおよそ300m。つまり、階段路の最上部から広場の向こうの街区までの距離もおよそ300m。その中心部分、式神の象が撃たれた地点に至ると、向かって左側の建物から火弾による狙撃を受けた。


2ヶ所からの交互に連続して撃ち出される火弾は電磁バリアにより弾かれる。


「リュータ、あの建物よ。狙撃は4階からあったわ」

「リュータ教官、もう1カ所はその2棟左側の建物の3階です」


「二人ともありがとう。ラミッド、ギュンター、頼んだぞ」


「「おう!」」

「お任せ下さい!」


ラミッドとアミッド、ギュンター率いる黒狼族は俺が分体からの狙撃を引き受けている間に強化した脚力でそれぞれ目標とする建物に辿り着き、突入して行った。


するとすぐに俺への狙撃は止み、一体の分体が窓から地上に飛び降りた。分体を追ってラミッドが、続いてアミッドが飛び降りると、室内の戦闘で右腕を斬り落とされていた分体は碌な抵抗も出来ないまま虎獣人の兄弟に切り刻まれ、遂にはラミッドの一太刀で頭部を落とし、アミッドの一閃で体幹を真っ二つに切断された。


黒狼族は室内の戦闘で多勢に無勢、すぐに勝負が付いたのか、ギュンターが分体の頭部を白髪を掴んで持って来た。


「皆、良くやってくれた」


この戦闘でラミッドとアミッド、ギュンターと黒狼族の人狼達にも負傷無く、前方の脅威は排除された。俺達は占領した広場で後方の援護隊、黒狼族、有志連合軍と合流し、このまま街区に侵攻する。そして市街戦を繰り広げつつ議事堂、サラクーダ大学を目指すのだ。



因みに俺が労って戦果を褒めるとギュンターはとても嬉しそうにしてはにかんだ。人の姿のギュンターはまごう事無き美少年であり、はにかんだらきっと可愛いらしいと俺は思うのだ。だが、今の姿は人狼のそれであった。客観的に見れば醜悪な分体の生首を髪を掴んでぶら下げて嬉しそうに口端を上げて笑う人狼のギュンターは、もしどこかの子供が見てしまったら絶対にトラウマになってしまうに違いないほど凄絶なものだった。


いつも『魔法修行者の救国戦記』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。


それでは次話もお楽しみに。



西住みほ「今がチャンスなんです、当てさえすれば勝つんです!あきらめたら、負けなんです!」


『ガールズアンドパンツァー』より


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