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第130話 眼上の敵

竜太「やあみんな、土方竜太だ。なあ、エーリカ、分体って黒くてデカめでワニみたいな顔だけど、魔王もあんな感じなのかな?」


エーリカ「それはわからないわ。だって誰も魔王なんて見た事無いんだし」


真琴「そう言えば以前魔王の第1王子っていたわね」


アーニャ「普通に美男子だったけど、実はワニ顔だったり?」


プリンツ・カイネル「そんな訳なかろう!」


竜太「おっと、久々のカイネル王子の登場だ。これ以上はネタバレになるから、この辺で『魔法修行者の救国戦記』スタート!」


舞「とか言って本当はワニ顔…」


プリンツ・カイネル「こやつらは(怒)」


ルシタニウス港から上サラクーダに至るルート。この港から上サラクーダの中枢に至るルートは、港から市場広場、倉庫街を貫くと、河岸段丘の最も緩やかな傾斜である西側の崖へと至る。


西側の崖には儀典にも用いられるのか豪華な装飾が施された幅14m程もある階段路が作られている。


階段路は煉瓦で舗装され、傾斜を緩やかにするため広い踊り場が随所に設けられており、煉瓦で舗装された赤い階段路が崖上の白亜の都市へと続いている。その距離、約500m。


ザック、ケリィ、ユリィによれば、この階段路を上がると広場となっていて、更に上サラクーダを縦貫する回廊が続く。回廊の両側には富裕層向けの商家や店舗、各役所や裁判所などがあり、河岸段丘の中央、即ち上サラクーダの中心部分にはサラクーダ市を象徴する塔を擁す市の議事堂と市長公邸があるのだと言う。


そして、更にその奥には上サラクーダで最大の建築物たるサラクーダ大学がその棟を並べている。つまり、サラクーダ市で最大の建築物がサラクーダ大学であり、サラクーダ市が魔王によって建設されたというアナーベルの言と合わせて考えれば、表向きはどうあれサラクーダ大学はまさに魔王、魔王国に有益な学問、技術を研究、開発するための研究所と言っても過言では無いだろう。


因みに、支配者層、富裕層の住宅地は上サラクーダを貫くメインルートから奥まった崖側にあり、上サラクーダは外から見るとイタリアのアマルフィやオルヴェートとか、そんな感じに見えたりする。勿論、俺はそんな所に行った事はない。



そんな赤い階段路を、俺は電磁バイアーを展開し、部隊を敵の攻撃から守りつつ先頭を行く。そのすぐ後には背中を預けたエーリカが、やや下がった左右をラミッドとアミッドが固める。


前進する斬り込み隊を俯瞰すれば、俺を先頭とする2列縦隊といった感じに見えるだろうか。2列でぞろぞろと進むと上から狙い撃ちにされそうではある。本来は敵地を進むのであるから敵からの攻撃を避ける為、隊列をより少数に分けて交互前進するとか、全員が大楯で身を護りながら前進すべきなのだろう。だが、この斬り込み隊には俺が展開する電磁バリアがあり、しかも後方からは魔法による援護もあるのだ。なので警戒しつつもそのまま前進。


階段路を1/3ほども上がったところで、前方から多数の魔力が感じられ、敵による待ち伏せを察知した。俺は後続する皆に念話で警戒を促した。


"前方に敵の魔力を察知した。警戒しろ"


全員からの"了解"の念話が伝わる。


そして、遂に階段路の中間、広場とも言える広い踊り場に至ると、多数の火球が俺達の頭上に降り注いで来た。


「敵襲よ!」


エーリカが叫び、俺はすぐさま電磁バリアを頭上に展開する。おそらく中間の踊り場が敵のキルゾーンに設定されていたのだろう。


降り注ぐ無数の火球、その第1撃は俺が頭上に展開した電磁バリアで階段路の左右に弾かれる。だが、俺達の前進を阻止するためか矢継ぎ早に第2波の火球が飛来した。


だからといっと俺達も前進を止める訳にはいかない。頭上に電磁バリアを展開しつつ階段路を上がると、階段路の最上部から複数の黒い影が踊り出て来た。


すかさず後方の舞が指揮する援護隊から黒い影の集団へ魔法攻撃が加えられる。火球、風刃、水刃による集中攻撃を受け、黒い影の集団は斬り込み隊に襲いかかる前にバタバタと倒れていく。


「脆いな…」


斉藤が呟く。先程、フレドリカは上サラクーで俺達を待ち伏せしているのは分体だと言った。ならば今の黒い影の集団も分体の集団と考えて間違いないだろう。魔王がどれほどの物か知らないが、少なくとも魔王と言うのだから相当なものなのではないかと思う。その分体が援護の魔法攻撃を食らってバタバタ倒れているこの事実。


「やったのか?」


誰かがこうしたシチュエーションでの禁句を口にした。こういうのは大沢軍曹が怪しいのだが…


すると、やはり倒れた黒い影共はむくりと身を起こし、再び俺達に襲いかかるべく立ち上がった。その数はやはり50体程か。武器は持っていないようだ。

 

それは全身黒く、2m程もある筋骨隆々とした大柄な体格。その黒い身体には所々に白い筋のような模様が入り、ワニのような頭部には白い毛が生えている。まさしく、聞いた通りの分体の姿だ。


俺は先手を取るべく愛刀雷丸を抜き払って頭上に翳すと斬り込み隊に突撃を命じる。


「全員抜刀!」


俺の強化した聴覚が皆が刀を、剣を抜き構える音を捉える。


この世界に転移して来た時には刀剣を傾向していたのは俺とエーリカ、後は獣人達くらいなものだった。だが、アンデットとの戦闘で大量にこの世界の刀剣を始めとする武器を入手した事により俺達の誰もが何らかの刀剣類を携行するようになっていた。


「突撃!」


俺が翳した雷丸を分体共に向かって振り下ろすと、斬り込み隊は分体を恐る事無く吶喊し、白兵戦が始まった。


数にしたら俺達に倍し、位置も優位な階段路の上にある敵。しかも一度は援護の魔法攻撃で倒されていたにもかかわらず立ち上がり、その姿は一見無傷のようだ。


分体共は数の優位を生かし、俺達を包囲せんと左右に展開する。俺は分体共の動きを逆手に取り、薄くなった正面の敵に雷丸の刀身に魔力を込めて強力な斬撃を放つ。


斬撃を受けた3体の分体は体幹を切断されて倒れると、火魔法の効果により忽ちのうちに炎を上げて燃え上がった。


包囲せんとした分体共はこれによって逆に分断された。ラミッドとアミッドは強化した脚力で一気に加速すると、共同して分体に襲いかかる。ラミッドは分体が繰り出す鉤爪を身を屈めて躱すと下段から切り上げて分体の左腕を切断した。そこへすかさずアミッドがガラ空きとなった腹部を払ったが両断には至らず、だが分体の背部に回ったラミッドが頸部を払って切断した。


見かけよりも脆いと思った分体。だが、一体を倒すのにラミッドとアミッドが二人がかりで三太刀必要だった。それはそれなりに厄介な相手という事と認識しなければならないだろう。まして、その数が多いとなれば尚更だ。


まぁ、そうは言っても戦いは続き、斉藤は強力な風刃で分体の脚を切断し、その動きを封じエーリカとフレドリカが光の矢で止めを刺していく。


黒狼族は人狼の姿で加速して分体に襲いかかる。鉤爪対鉤爪の戦いは分体がパワーで勝るものの、俊敏な人狼は分体を翻弄して分体の身体を斬り刻む。


オスカーが作り出した小型の旋風は、回転を上げると共に静電気がバチバチと火花を散らして唸りを上げた。


「行け、ライトニングハリケーン!」


ライトニングハリケーン(ちっ、ちょっとカッコいいじゃねえか)に捉えられた分体は、その内部で旋風により作り出された無数の真空の刃により斬られ抉られ、血塗れとなり次々と倒れていく。


武田少尉と大沢軍曹は戦兎族のケリィとユリィコンビと連携し、危なげに分体を屠っていた。


俺は斬り込み隊として自分で人選して彼等を脅威の最前線に立たせてしまった訳だが、分体という自分達にとって全くの未知な脅威に対し、斬り込み隊の皆は何一つ恐れる事なく立ち向かい、そして撃ち破った。


(分体が看板倒れなのか、みんなが強くなったのか)


おそらく後者だろう。自分もそうだし、斉藤もエーリカもみんなも。努力を怠らず互いに教え合い、修行を重ねてきたのだ。


"やりましたね、先輩!"


援護隊を指揮する舞から念話が伝わって来た。倍以上の分体を味方に犠牲が出る事無く殲滅したのだ。


"有難う。援護隊も良くやってくれた。皆にもよろしく言っておいてくれ"


だが、どうもこのままこの事態が終わる事は無さそうだった。


「おいリュウ、あれを見てみろ」


斉藤が向ける視線の向こう、骸となったはずの分体を見ると、何体かが血溜まりから身を起こし始めていた。


俺は全員に警戒するよう命じた。そして身を起こそうとしている一体の頚を雷丸で刎ね落とすと、その元を失った身体は脱力して倒れ、再び動く事は無かった。


「みんな、分体が立ち上がる前に止めを刺せ、面倒だが殺せる相手だ」


みんなの動きは早く、次々と身を起こす分体の頚を刎ね、胴を断ち止めを刺していった。


「死霊術かしら?」


エーリカがちょっと気味悪そうに呟く。


「いや、分体は確かに生きていた。頭部を失ったり体幹や頚部が離断した個体は動かなかったところを見ると分体は身体の再生能力が極めて高いのだろう」


斉藤の見解に俺も同意する。この戦闘で分体についてわかった事は、分体は皆ほぼ同じ姿であり、魔力量は多く、魔法攻撃も可能。角がある事から分体同士が念話を使った意志の疎通により連携も可能。そして何より強力な再生能力が有るという事。


「魔王国も考えたものだな。分体は強力で脅威だが対抗出来ない事も無い。だが、こいつらは適当にとっ捕まえた奴に角を寄生させるだけでいい。個々人の長時間に及ぶ教育も訓練も努力も何も必要としない。極めてコスパの良い兵隊だ」


この先、上サラクーダにはこいつらがまだうようよと居て、更に吸血鬼どもがいる。サラクーダ大学、いや、サラクーダ市自体が分体研究施設であったのかもしれない。俺は分体が俺達の世界に齎される前にここで消滅させるべく、再び階段路の先、上サラクーダへと斬り込み隊を前進させた。








いつも『魔法修行者の救国戦記』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。


それでは次話をお楽しみに。


「エルアラメインに風が吹く。生きた残骸の間を吹き抜ける風の音は、ここで滅亡した生き物の過去を悔いる悲しみの歌声のように、聞く者の心に響くという。ここに平和な星を求めた人さえも拒否したエルアラメイン。そこには、愚かな生き物の残骸が悲しげな歌を歌い続けるだけだ・・」


   『銀河鉄道999』第46話より

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