第127話 裏切りの代償
竜太「やあみんな、土方竜太だ。今回も引き続き読者の皆様からの質問にお答えします。ペンネーム「フリッパーズビター」さんから」
「真琴さんは可愛い所もある知的な美人さんってイメージですが、アニメのキャラで言うと誰な感じですか?」
竜太「って事ですが?」
真琴「えっ、私?そうね、以前に職場の(アニオタの)同僚から機動戦士Zガンダムのエマってキャラに似てるって言われた事があったかなぁ?」
竜太「何となく納得。そして、その同僚の慧眼に敬服。という事で『救国の魔法修行者』スタート!」
竜太「あんなラストにならないように俺が真琴を絶対守るから」
真琴「(どんなストーリーか知らないけど)あ、ありがとう?」
「お前は、ザック、だったか?歩兵中隊の」
アナーベルは遙か昔を思い出すように呟いた。
「そうだ。貴様に今更何故とは訊かない。貴様は、いや貴様等は元から魔王国側だからな」
「わかっているなら話は早い。このサラクーダ市は魔王が作らせた魔王の都市、魔王の城。更に言えばこの都市はエルム大森林から資源となる住民達を集める蜜であり、罠である」
こいつ、訊かれてもいない事を一人でベラベラと喋るな。面倒が無くていいが。
「リュータさん、俺にこいつを殺らせて下さい。こいつらのために家族が死に、友が死に、部下も同僚も、そして守るべき市民達も死に絶えた。こいつらだけは生かしてはおけない」
ザックと、彼と共にサラクーダ市を脱出した者達は皆殺気を放ち、帯剣に手を掛けている。今にも抜き払ってアナーベルに斬りかからんばかりだ。
「威勢がいい事だ。だが、今のワシを殺す事など容易き事。この体では最早逃げられぬし、お前達が向ける刃を防ぐ気も無い」
アナーベルは諦めと絶望の響きが込められた声で疲れたように言った。
すると、斉藤から念話が送られてきた。
"こいつはどうも死ぬ気なようだ。だったらその前に訊けるだけの事を訊いてしまおう"
"わかった"
「マルトニウス代将、でいいですか?」
斉藤がアナーベルに対し、冷静に尋問を始めた。
「そうだが、お前は?」
「俺はサイトウという。お前達が魔物を送り込んで滅茶苦茶にした異世界から来た。あなたは死ぬ気なようだから、その前に幾つか訊きたい事があるので質問に答えて欲しいのだが?」
いや、タケよ、そんな身も蓋もない訊き方されて素直に答えると?
「…よかろう。なんなりと訊くがいい」
あ、いいんだ。
ザック達は斉藤の介入で気を削がれたのか、ただ険しい眼差しで事の推移を窺っている。
「では、先ずは代将がその姿になったのは?」
「…ワシは元よりサラクーダ市で生を受けたヒト族であった。この都市は市長を始め大学の学長など幾つかの上級職には代々その就任時にこの都市の秘密事項が申し送られ、そこでこの都市の正体を知る。
知った上でその就任は断れない。家族が人質となっているからだ。ワシもそうであり、ワシは只々自分の代で魔王が行動を起こさないよう願うばかりであった」
どうも長くなりそうだ。この男は自分語りが好きと見た。
「しかし、遂に魔王国から吸血鬼とプラントモンスターを乗せてあの船が来た。魔王は戦争に大量の魔物を戦力として使うため、そして、エルム大森林の封印を解くため、計画通り市民と避難民達を資源として使ったのだ」
俺はチラッと斉藤を窺うと、斉藤が"まぁ、聞いておこう"という感じで頷いた。
「ワシらは魔王国から遣わされた吸血公アルメウスに集められると、公より眷属となるか、拒んで家族共々アンデッドにされるかの選択を迫られた。そう言われてもワシらに所詮選択肢など無い。ワシらには公の眷属となるしかなかったのだ。
その後は自衛軍が有志連合軍として市外へ出ている間に市の上級職から眷属にされ、警備隊はアンデッドにされた。
サラクーダ市の全権を握ったアルメウス公は市民達を次々にアンデッドにし、また、プラントモンスターの餌にして魔物を大量に生み出したのだ」
まあ、アナーベルや市長達には彼等なりの苦悩があった事はわかった。自ら吸血鬼の眷属になりたがった訳でもない事も。だが、アナーベルのこの不気味極まりない姿はどうした事だろう。ケリィとユリィが始末した吸血鬼は、やはり市の富裕層の子弟だった男だそうで、姿形は普通にヒト族だったと彼女らは言っていたのだが。
「それで、その姿は?」
斉藤がさり気なく、再度同じ質問を繰り返す。
「物事には順序というものがある。そう急かすものではない。」
そのようにアナーベルは斉藤を嗜めると、淡々と話を進めた。
「アルメウス公の眷属となったら、ワシは市の自衛軍司令官であった故、公より市の防衛を任される事となった。と言っても有志連合軍は市外での戦いで壊滅し、自衛軍も既に軍の体をなしてなかった。そうした中で市を守るにはアンデットと分体を寄生させたケンタウロスを操る必要があった。そうしてアルメウス公と魔王国の魔術師によってワシはこのような身体にされたのだ。この身体になり、ワシはアンデットやミノタウロスが見聞きしたものがわかり、ワシの思うがままに動かす事が出来るようになった」
つまり、アナーベルはこの巨大な脳味噌みたいな生き物なる事により、アンデットなどがもたらす視覚、聴覚などの様々な情報を処理して自身の物とし、そうしたアンデッドや分体を寄生させた個体を自在に操る事が出来るようになった、という事らしい。言ってみれば巨大な生体コンピュータという訳だ。
いやいや、実に悍しい限りだ。恐るべし、吸血公アルメウス。
「いや、出来た、だな。正確には。お前らが全て倒したから、もうワシには操る駒は一体も無い」
俺達が殲滅したゾンビやアンデッド戦士を操っていたのがこの目の前のアナーベルだったというのであれば、彼の戦術家としての才能は非常に残念なレベルだと言わざるを得ないな。
「では、分体とは何だ?そして、エルム大森林の封印とは?」
斉藤にそう尋ねられたアナーベルは目を瞑り暫く黙り込んだ。そして、意を決したように面を上げた。
「分体とは」
アナーベルは言いかけると、ぐっと呻いて苦しそうに胸を押さえた。
「これを口にすればワシの心臓は間も無く弾け、この身は燃え尽きるであろう。だが、ワシはこの都市に生まれ、この都市と共に育ち、この都市のために人生を捧げてきた。
ワシは魔王国に取り込まれ、ヒトたる事を辞めて吸血鬼の眷属に堕ちようともこの都市を愛していたのだ。
だが、最早この身ではどうする事も叶わない。故にこの身、この命尽きるまで知り得ている事をお前達に話し、もって魔王へ一矢報いる事とする。
一度しか話せぬ故、ゆめゆめ聞き逃すでないぞ?」
吸血鬼の眷属たるアナーベルは、その主人たる吸血公アルメウスを一命をもって裏切ろうとしている。
「分体とは宿主に寄生させた"角"の事だ。分体とは魔王の分体の意味である。この分体に寄生された者は魔王の傀儡となり、やがては分体そのものとなる。それはヒト、獣人、エルフ、ドワーフ、魔族など種族を問わず精霊樹にもおよ、ガハッ」
そこまで話すとアナーベルは吐血し、胸部が内から弾けた。そして、その破孔からは青い炎が噴き出す。
「残念ながらここまでのようだ。ザックよ、罪滅ぼしにもならぬが、ワシはこれで滅びる。上サラクーダにはまだ"生きて"捕らえられている者達がいる。その者達を頼んだぞ、中隊長」
そしてアナーベルの口から目から青い炎が吹き上がると、やがて炎が全身を包み、燃えて崩れていった。
恐らく、"分体"と"封印"は魔王国の秘匿事項だったのだろう。吸血公アルメウスとやらは眷属には機密保持のため秘匿事項を漏らした際は自壊する術をかけていたのだ。まあ、自壊するまでに少し時間がかかって"分体"についてはそこそこ知る事が出来たが。
ザックは自らの手でアナーベルを討てなかったばかりか、逆にアナーベルからまだ上サラクーダで生きて捕らえられている者達の救出を託されてしまい、何とも言えない表情をしていた。
サラクーダ市自衛軍司令官、アナーベル・マルトニウス代将。奴は決して自ら進んでした事では無いとはいえ、守るべき市民達を裏切り、彼等を魔王への供物とした。
その代償に吸血鬼の眷属になり、しかし、その人生の終焉にサラクーダ市民として魔王へ一矢報いて青い炎に焼き尽くされ、灰となって散った。
いつも『救国の魔法修行者』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。
それでは次話もお楽しみに。
「なあ、坊や。俺がこの年まで生き残れたのはなぜだと思う?それは俺が臆病者だったからだよ…」
『マスターキートン』より




