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第125話 サラクーダ攻防戦②

ユーリカ「やあみんな、ほんっとに久しぶり。ユーリカ・バル・サバールです。なんか、お姉ちゃん達やタケはあっちの世界に行っちゃうし、番外編でぽっと出の兎獣人が活躍してるし、こっちはシスコン拗らせた弟の相手しなきゃいけないしで、ほーんとつまらない!早くみんな帰って来ないかなぁ」


香菜「ユーリカちゃん、最後のところ、ちょっとネタバレだよ?」


ユーリカ「えっ!でも話の流れ的にそうでしょ?」


香菜「えー、わかんないよぉ?もしかしたらあっちの世界で魔王を倒して幸せに暮らしましたとさ、どんとはれ的な展開だって」


ビクトル「そんな事ありません。エーリカ姉様はちゃんと僕のところに帰ってきます!」


ユーリカ・香菜((キモっ))


綾音「え〜、みんなかたまってしまったので、不詳この渋谷綾音が進めます。『救国の魔法修行者』スタート!」


綾音「私的にはアイツらいない方が平和でいいんだけどね」


「リッキー、城壁と水濠はどうなっている?」


千里眼の能力があるフレデリカなら俺が熱線の魔法で破壊した城壁の様子が良くわかるだろう。


「はい、城門も含めてその左右約15mの城壁が完全に破壊されています。水濠は城壁の瓦礫でほぼ埋まっています」


「そうか、ありがとう」


俺はフレデリカの報告に基づき、全軍に前進を命じる。サラクーダ市からの迎撃も反撃も今のところ一切無い。


水濠はフレデリカが言った通り、城壁の瓦礫で埋まっていた。しかし、瓦礫だけに平坦ではなく、身体強化の魔法が使える物にはこの程度の悪路を渡る事は大し負担ではないものの、皆がそうではない。なので、俺は念力の振動を瓦礫に加え、瓦礫を更には細かく砕いて歩兵が渡りやすく均した。


そうして瓦礫で埋まった水濠を渡る。先陣を切る俺の脇を固めるのは弟分のラミッドとアミッド、次いでエーリカとサキ。ええと、あとは…


「リュータ、あたし達の事忘れてたよね?」


ケリィがジト目で言った。


そうそう、戦兎族の2人が市内の案内役で同行していたっけ。


「いや、忘れてないよ?」


「うそ!絶対忘れてた」


更にユリィが睨みながら俺を責める。


2人はサラクーダ市で冒険者として活動し、市内に詳しいという事で戦兎族の女王から連絡役も兼ねて俺達の元へ派遣され、行動を共にするようになった。


二人の実力は確かな物であろう事は感じられるし、市内に詳しいのは大いに助かる。だが、この2人、他のみんなとは徐々に打ち解けているものの、やけに俺への当たりがキツいんだよなぁ。特にユリィの方が。


「ねぇ、あなた達、リュータの事気安くリュータって呼ばないでくれる?」


「そうです。私なんかリュータって呼べるまで3年もかかったんですから」


エーリカとサキがケリィとユリィに俺へ呼び方について物言いを付けた。いゃ、まぁ、俺の事なんてどう呼んだっていいんだけど、ここは戦場。


「これから敵中に突入するんだから、もっと緊張感出してくれよ」


「でも、リュータ。魔力感知で索敵したけど、この辺りに敵らしき反応は無かったわよ?」


確かにエーリカが言ったように、俺も敵の魔力を感知していない。だがしかし、


「魔力を感知しなくても、罠が仕掛けてあったり、遠距離からの攻撃があるかもしれないだろ?」


「わかったわ」

「わかりました」

「わぁったわよ」

「フンっ」


四人が四様の返事をする。理解してくれたならば良いのだが、何だか出鼻を挫かれた感が否めない。


「じゃあ、気を取り直して行くぞ」


俺はそう自身に気合いを入れるように言うと、周囲を見廻し、後ろで控える歩兵達に振り向く。そして、高らかに右腕を振り上げ、前方を指す。


「全軍、サラクーダ市へ突入!」


うおおおオォー!


閧の声と共に歩兵部隊が市内に突入する。我先にと瓦礫で埋まった水濠を渡り、跡形も無く破壊された城壁の瓦礫を踏みしめて。


勿論、先頭は俺達満峰集団だ。下サラクーダに入れると城門の前は広場になっており、放射状に5本の道が延びている。俺達はすかさず左右に展開し、歩兵部隊の援護を開始する。


歩兵部隊は各指揮官の指揮の元、下サラクーダとルシタニウス港を虱潰しに索敵と生き残った市民達を捜索する。



サラクーダ市は、上サラクーダがノービス川の河岸段丘の上に築かれ、上サラクーダの北側は都市の防衛のため崖のままとなっている。それに対して下サラクーダは河岸段丘の南側に建設されているが、下サラクーダが建設されている土地は、元来ノービス川の氾濫で土砂が堆積した低湿地であった。


そのため、下サラクーダは平で道も広く作られているが、低湿地である土地の水を排出するために市内には運河や水路が巡っている。都市を守る水濠も低湿地の水捌けを良くする役割もあるのだろう。


城壁を破壊して水濠は片付いたものの、下サラクーダで魔王国軍やアンデットに運河や水路を防衛線に利用されると、いささか厄介な事となる。


サラクーダ市を攻略するに際し、俺は市自衛軍の歩兵中隊長だったザックからそうした点を指摘されていた。確か、支那事変でも中華民国軍が水路を利用して日本軍に抗戦していたっけ。


あれをここでやられたら実に面倒臭い事となる。なので、俺はもし魔王国軍がそうした戦術を取った場合、味方の損害を少なくするため城壁と同じく建物も運河・水路も魔法で破壊する事としてあった。


だが、幸いにも魔王国軍は下サラクーダの街中には展開しておらず、今のところ歩兵部隊との交戦もない。


下サラクーダに展開した戦兎族と黒狼族から伝令により次々と報告が入り、下サラクーダの下町はもぬけの殻で無人となっていた事がわかった。俺は下町に展開した部隊に城門広場への撤収命令を出した。


すると、ルシタニウス港へ有志連合軍に同行した武田少尉から念話による応援要請が伝えられる。


"ルシタニウス港、及びルシタニウス港から上サラクーダへ通じる道路上に魔王国軍のミノタウロス部隊が展開、我が方兵力優勢なるもミ部隊はアンデッドと連携して頑強に抵抗しあり。増援願う"


市民を皆移動させたのか、アンデットにしたか、プラントモンスターの餌にしたか。その辺はわからないが、魔王国軍は無人となった下サラクーダの下町は放置しても、外部と繋がる港、港と上サラクーダを繋ぐルートは重要なのであろう、しっかり守備隊がいたのだ。


「真琴、どうやら港が当たりだったようだ。武田少尉から念話による応援要請があった。ここの指揮を任せていいか?」


城門前広場に設置した指揮所で、俺は真琴に下サラクーダでの指揮を頼む。


「わかったわ、ここは任せて。大丈夫だと思うけど気をつけてね」


「すまないが、頼む」


真琴は頭の良い美人で可愛いだけではなく、ここ一番という時に実に頼りになる姉さん女房だ。いや、まだ恋人か。


俺は真琴に去り際にウィンクすると、真琴も魅力的なウィンクで俺を送り出してくれた。こういうところも実に可愛い。おっと、戦闘中、戦闘中。


俺は真琴の補佐に山本少尉と大沢軍曹を残すと、エーリカや斉藤達と共に、下サラクーダから撤収してきた戦兎族と黒狼族も連れてルシタニウス港へ向かった。



ルシタニウス港はエルム大森林水運の中心であるだけではなく、外海に通じる国際貿易港でもある。そのため荷物を保管する倉庫街が付属している。港の桟橋と倉庫街に通じる大通りを封鎖する陣形でミノタウロスの部隊は展開していた。



ミノタウロスの部隊は兵数はそう多くなく100名ほど。しかし、ミノタウロス個々の体格は2mはあろうかという巨体であり、それぞれが大楯に大剣や戦斧などを装備。この先は一歩も通さないと言わんばかりに一列横隊で構えた陣形は、それを突き崩さんとする有志連合軍の攻撃を跳ね返し、戦闘は膠着状態に陥っていた。


ルシタニウス港の索敵と市民捜索を担当していたのは有志連合軍であった。指揮を執っていたのはアンドリュー・フォークナー。そして、アンドリューの補佐として武田少尉が同行している。


「申し訳ありません、神使様」


まぁ、アレを抜くのは300程の槍兵だけでは荷が重いだろう。この世界だったら強力な魔法、若しくは数を揃えた弩が必要だ。はたまた犠牲覚悟で何百何千の歩兵に吶喊と共に突撃させるか。


「いや、無理する必要は無い。アンデットを始末しているし、味方の損失が無いだけで十分だ」


俺は武田少尉から戦況を聞くと、アンドリューを労った。


魔王国軍の用兵は何気に巧みだったそうで、ミノタウロス部隊の前方に展開したアンデット戦士共を捨て駒にして有志連合軍と戦わせ、総崩れを装ってミノタウロス部隊までおびき寄せようとしたらしい。アンドリューも武田少尉も敵の意図に気付いて部隊を引き帰らせ、以後はアンデット潰しに専念させた。そして、ミノタウロス部隊を破る決定的な打撃力が無かったため応援要請したという。


有志連合軍が、もし、敵の作戦に嵌っていたならば、有志連合軍はアンデットとミノタウロスに包囲されて殲滅されていただろう。アンドリューと武田少尉の判断は実に妥当だったと言えよう。



「あの倉庫に何かありそうだな」


斉藤が頤に右の親指と人差し指を当て、倉庫街を見ながら推論を述べる。


「確かにな」


ルシタニウス港は確かにサラクーダ市にとって重要施設だ。桟橋に船は係留され、港からは上サラクーダまで一直線に行ける道路もある。しかし、ミノタウロス部隊が背にしているのは倉庫街。まるで倉庫街を守っているようにも見える。


「あの、リュータ教官。私が倉庫の中を透視しましょうか?」


フレデリカがそう言ってくれたが、俺は彼女に感謝しつつも、今は目の前のミノタウロス排除を優先した。


ミノタウロスは巨体である上に、大楯を備えて物理的な耐久力が強い。しかもあの大楯から魔力もそこそこ感じるので、耐久力増強などの魔力が付与されている可能性が高い。俺は応援要請により戦兎族と黒狼族を引き連れて来たが、それによりこちらの兵数は更に優位になりつつも、それでもミノタウロス部隊に突撃させれば徒に味方の犠牲を増やすだけだろう。


正面が固いなら上か下から攻めるのが鉄則だ(戦車とかね)。よし、ここは秩父の要塞でやったように雷攻撃で上からやるか。


「みんな、聞いてくれ。俺がこれから雷魔法でミノタウロス部隊に雷を落として一撃で全滅させる。その後で倉庫街に突入し、倉庫内を改めろ」


おおーっ!


歩兵達は雄叫びで応じた。勿論、戦兎族からは女性の声だ。


俺は歩兵達を下がらせ(魔法の巻き添えを喰らうからね)、一人ミノタウロス部隊と対峙する。そして、魔力操作で魔力を高めるとサラクーダ市上空に雷雲を興す。


「雷雲招来!」


すると、みるみる内にサラクーダ市は雷雲に覆われて辺りは暗くなり、気温も下がり、雷雲はゴロゴロと稲光とともに鳴り始めた。


俺は稲妻がミノタウロス部隊に直撃するイメージを抱くと、「雷撃滅殺!」と技を叫び、ミノタウロス部隊を上空の雷雲から落雷で横一文字に薙いだ。


え?前は「雷撃招来」だっただろって?まぁ、決まりじゃないし、悪鬼滅殺とか中々カッコいい。


稲妻は青白い光を放つと、閃光と同時に凄まじい雷鳴を轟かせた。


落雷の後、雷雲は雲散霧消し、サラクーダ市は再び陽光に照らされた。静寂に包まれた周囲にはオゾン臭が漂っている。


前方を見てみると、そこには落雷の直撃を受けて黒焦げになったミノタウロス部隊の残骸が累々と横たわっていた。












いつも『救国の魔法修行者』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。


それでは次話「サラクーダ攻防戦③」をお楽しみに。


「軍曹、君、学校は?」

「ハートブレイクリッジです」

 映画「ハートブレイクリッジ 勝利の戦場」より

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― 新着の感想 ―
[一言] で、八つ当たりでもっと辛い状況になってる主人公に当たると、変なオマケコーナみたいなのにまで出てきて ねぇわ
[一言] 命かけて戦ってるのにアイツら居ない方が平和とか気分悪すぎる そもそも自分が喧嘩売ったのに、エルフ共とかと同じレベル、いや齋党としての立場にあるにも関わらずこう言うのはそれより最悪なレベルで不…
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