幕間23 ラブリーラビットエンジェルの大冒険⑤
竜太「やあみんな、土方竜太だ」
真琴「サラクーダ市攻略編、なかなか始まらないわね」
舞「本当、長々と脇道外れてるし」
ユリィ「でも、ここは本編の内容を繋ぐ大切なところなの!」
エーリカ「え〜、自分達が主役だからじゃないの?」
ケリィ「まっ、それは否定しないけどね」
サキ「…なんか図々しい」
ケリィ「ゴメンね、図々しい年増でさ?」
サキ「…チッ」
竜太「(こっちに話が振られる前に)それじゃあ、ドーンと『救国の魔法修行者』スタートだ!」
エーリカ「竜太はどう思ってるの?」
竜太「やっぱり来た!」
「ユリィ、そっちのアンデットはよろしく!」
「任された!」
私は正面から襲いかかる十体を越すアンデットを相棒のユリィに任せると、その背後で余裕ぶっこいて鷹揚と構える、やたら仕立ての良い豪華な貫頭衣を着た若造(と言っても私より年上だけど)と対峙した。
「まさか上サラクーダのお坊ちゃまが吸血鬼になっていたとはね」
そいつは口許から二本の牙を覗かせてニイッと笑った。
「俺の正体に迫るとは、お前達も凄腕の冒険者のようだ。兎獣人だが二人とも俺好みのなかなかの美形だな。こいつ等みたいなアンデットじゃなく、特別に俺の眷属にしてやろう。可愛がってやるぞ?メイド姿がいいか、女騎士の衣装もいいな、グフフフフ」
キモい、キモい、何こいつ超キモいんだけど!二の腕がゾワっとしたよ。
サラクーダ市内及びその周辺の村々で最近多発する行方不明者。私とユリィは冒険者ギルドからの指名依頼でその調査を行なっていた。そして、ゾンビの目撃情報から辿り着いたオッピス街道沿いのとある農村。ここで私達が目にしたのは、一人の吸血鬼に支配され、そいつによってアンデットにされた変わり果てた村人達の姿だった。
村を監視していた私達、案外早くアンデットに見つかっちゃって。尚且つ囲まれちゃったので早速戦闘になったんだ。
「折角だけどお断り。アンタみたいな太っちょ若禿な小物にオモチャにされ続けるとか反吐が出るわ」
サラクーダ市はエルム大森林から海外に輸出する物産が集まり、魔王国との中継貿易で栄えている。だから市外の貧民街ですら滅多に餓死者は出ないほどだ。だけど、そのサラクーダ市でも肥満になるのは流石に上サラクーダの住民くらいなもの。また、その締まりの無い身体に纏う豪華(生地の質、仕立てや刺繍など)な貫頭衣は上サラクーダの正装で、豊かさの象徴だ。これらの事からこの吸血鬼が上サラクーダの住民で有力者の子弟である事は確実といえた。
「ぐぬぬ、言ってはならぬ事を言ったな、ズケズケと!」
あら、私とした事がお坊ちゃまのご機嫌を損ねてしまったようだわ、どうしましょう?なんて事を内心思ったのだけど、どうも表情に出てしまったみたい。吸血鬼のお坊ちゃまは怒りを現し、アンデット共に私とユリィを捕らえるよう命じた。
「俺のウサギちゃん達だ。殺さず生かして捕らえろ。力尽くというのも悪くないからなぁ、グフフ」
なんなの、コイツ。本当にキモいんだけど。こんなのと長話するのも嫌だよ。ちゃっちゃてやってしまおう。
「アンタがどうして吸血鬼になったのか興味あるところだけどね。その身に相応しくない力を手に入れてはっちゃけちゃったのかな?見てらんないくらい可哀想だから私が引導を渡してあげるよ。こんな美人に滅ぼされるのなら本望でしょ?」
私はそう言い放つや、ベルトのホルダーからグリップ付きの棍棒を抜き放つ。
「ほざけ小娘が!そんな棒切れでこの俺とやり合おうとは舐めるのもいい加減にしろ!」
私は吸血鬼を無視し、この棍棒「デュラール」に命じる。
「デュラール、槍!」
するとデュラールは「かしこま!」とばかりに淡く発光すると、その30セルリ程の長さから1.5リョーメ程の手槍となった。
この棍棒こそ、私が受け継いだ戦兎族の魔法武器、その名も「デュラール」。
デュラールは持つ者の魔力を用い、その長さをある程度自在に変える事が出来、ある程度形状や硬さも変える事も出来るのだ。先端を鋭く尖らせたり、しなやかにムチの様にする事だって出来る。勿論、誰でもがそのように使える訳ではなく、飽くまでこのデュラールが認めた者でしか使う事は叶わない。
私は勅命によりサラクーダ市へ派遣されるに際し王府からこのデュラールを貸与された。どうも先様には気に入られたようで、訓練の末に私はデュラールの操者となった。謂わばデュラールは私のもう一方の、文字通り"相棒"である。
私にデュラールがあるように、ユリィにはユリィの、おっと、それは本人がそのうち見せるだろうから、その時にね?
「デュラール、奴の心臓を貫け!」
言わずと知れた吸血鬼の弱点はその心臓。私の命令に「よしきた」とでも答えるように淡く光るデュラール。そしてデュラールは手槍の長さから勢いよく一気に吸血鬼の胸部辺りまで伸長すると、吸血鬼の胸骨をぶち抜いて、その心臓を貫いた。
吸血鬼は自分胸に突き刺さっているデュラールを他人事であるかのように見下ろしていたが、私がデュラールの先端に"返し"を作って引き抜くと、表から貫かれた奴の心臓は、更に裏から"返し"で切り裂かれた。
「ぐあぁぁぁ、おのれぇ、折角吸血鬼になって憧れのハーレムキングになれたのに」
吸血鬼は苦痛に呻き、非っ常に残念な断末魔の声を上げると、胸に空いた穴から、口から目から青い炎を吹き出すや、あっという間に燃え尽きて灰塵となって滅びた。
そんな下らない事の為にヒトである事をやめるなんて、ヒトの心ってわからないものね。本当、ため息しか出ないわ。
吸血鬼が滅びると、奴によってアンデットにされた村人達もそこここで同じように青い炎を吹き出して滅びていった。まぁ、大半はユリィに倒されていたようだけど。
「デュラールを使ったの?切り札は取って置いた方がいいのに」
「使ってこその必殺技だよ。それに死人に口無しだしね」
吸血鬼を滅ぼし、アンデットも全滅したこの村に生者は私とユリィだけ。デュラールの存在がバレる事はない。
ユリィは剣技だけでアンデットを倒したようだった。ユリィのアレもたまには使ってあげないと拗ねちゃうんじゃないかな。
その後、二人で村の中を探ったけど、やはりこの村に生存者はいなかった。
多少の疲労を感じながらも、私とユリィは夜明け前にはサラクーダ市へと戻り、その足で冒険者ギルドへと赴いた。
業務の開始とともに受付の職員に依頼の完了を報告すると、そのままギルドマスターの元へと案内され、そこでギルドマスターと副ギルドマスターに調査した結果を報告した。
私達の報告を聞いた二人はうむむと何か深く考え込み始め、その後他言無用と念を押されて退室を促された。
勿論、戦兎族の連絡員には報告するけどね。だって、そっちが私達の本業だもんね。
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それでは次話「ラブリーラビットエンジェルの大冒険 完結編」にご期待ください。
男は時々何をしても全く駄目だという時があるのだ。(略)そういう時、男はな、酒でも飲んでひっくり返っていればいいんだ。
by キャプテンハーロック




