第120話 神使同盟③
竜太「やあみんな、振り。土方竜太だ」
アーニャ「やあ、久しぶり。アーニャよ」
竜太「アーニャとアンドリューは幼馴染みって感じなのかな?」
アーニャ「…気になるの?」
竜太「ま、まあね」
アーニャ「そうと言えばそうね。父上は彼と私かターニャを結婚させたかったみたい。それで私の方が歳が近いから、アンドリュー兄さんは私を自分の婚約者だと思ってたみたいで、アンドリュー兄さんはいい人だけど、私はそれが嫌で逃げ回ってたの」
竜太「そうなんだ。でもあっさり身を引いたね」
アーニャ「…リュータには勝てないと思ったんじゃない?リュータより素敵な男なんて居ないし」
竜太「そっ、そう?面と向かって言われると非常に照れるな。という訳で『救国の魔法修行者』スタートだ!」
竜太 (みんなに愛想尽かされないようにしっかりしないとな)
さて、俺達と戦兎族と有志連合軍による三者会談が始まった。これに参加するのは、俺達からは俺と斉藤と真琴にアーニャの四人、戦兎族からは女王グレンダ陛下と彼女の側近が二人、有志連合軍からは部隊長アンドリュー・フォークナーと彼の部下が二人の計十人だ。もっとも、それぞれの後ろにはオブザーバーとして各々の仲間や部下達が多く詰めていて、大食堂の内外は多くの人々で満ちていた。
「それでは、これより戦兎族、有志連合軍及び満峰集団による会談を始めたいと思います。本会談の司会進行は私、森エルフはサバール支族の族長エーリッヒが長女、エーリカ・バル・サバールが務めさせて頂きます」
エーリカによる開会宣言にパチパチパチパチと大食堂内の皆からは拍手が送られた。
因みにこの「満峰集団」というのは俺達の事で、俺達の集団に名称が無く、この世界で今後他者と行動を共にするに際して何かと不便だ、という事から臨時にそう名乗る事にしたのだ。
この会談の司会進行を誰がするのか、これには幾つかの条件があった。まず、中立的な立場にあり、二つの世界を知り、教養がある者。そして、会談の参加者に王族はいる事からそれなりに家柄が良い者でなくてはならなかった。
この場には中立的な立場にある者などいないので、この条件は意味をなさない。そのため他の条件を満たす者はと言えば、エーリカとアーニャしかいない。しかし、アーニャはこの世界とサラクーダ市を知り、有志連合軍に所属していたため満峰集団側の参加者になって貰っている。そうなると、もうエーリカしかいない。戦兎族と有志連合軍にこの件を打診するとあっさりと了承された。
エーリカの司会で会談は進み、最終的に戦兎族と有志連合軍が満峰集団と森の民を北の精霊樹へと導いて行く、という行動方針が確認された。
だが、サラクーダ市攻略について、会議はやや紛糾する事となった。
「我々の戦力は七百人に満たない。サラクーダ市は水濠は広くて深く、城壁堅固な城塞都市です。神使様方が魔法を使え、戦兎族と有志連合軍の兵が精鋭だとしても、この戦力で攻城兵器も無くての城攻めは非常に困難。そして、市を包囲しても我々に援軍は無く、物資も少ない。それに対してサラクーダ市は食糧を抱え込んでおり、しかも戦うのはアンデットです。これを神使様はどうお考えですか?」
神使様はと、アンドリューは名指しで俺に振る。まさか、昼間のアーニャの件を根に持ってやしないだろうな?
「まず、サラクーダ市攻略の目的は生き残っている市民や避難民、連行されて来た反魔王派魔族の解放とプラントモンスターと角型寄生体の一掃だ。サラクーダ市の占領などは目的としていない。また、水濠と城壁は俺達の強威力魔法による攻撃で破壊可能だ」
このように言ったものの、実は生き残りの市民達の解放という部分で、俺は正直もう生き残りの市民達はあまりいないだろうなと考えていた。ザック達がサラクーダ市から脱出出来た時点で既に相当な市民や避難民達がプラントモンスターの餌となり、或いはアンデットにされ、角型寄生体の宿主とされていたのだ。
生き残った市民達で魔王国軍への抵抗組織を作り、ザック達を外部との連携を求めて脱出させたが、市民達を救うという事に関して言えば、抵抗組織の動きは、残念ながら時既に遅かったといえる。
ザックは抵抗組織と連絡して内部蜂起を促すと言ったが、おそらく、ザック達を送り出した抵抗組織はもう壊滅していて存在していない、と俺は思っている。
ならば、サラクーダ市の水濠や城壁を破壊するに、市内を魔王国軍やアンデットごと破壊するに何の躊躇が必要だろうか?矛盾するようだが、俺はサラクーダ市攻略についてそう考えている。
「城壁を破壊し、市内へ突入し、魔王国軍やアンデットを掃討して市民達を解放する。これのみならば現有戦力でも可能と考えるが、どうか?」
アンドリューは腕を組んで答えず、すると今まで発言の無かったグレンダ女王が口を開いた。
「神使様、我等戦兎族はそれで構いません。サラクーダ市攻略には神使様方の魔法による援護があるのでしょう?」
「それは勿論。援護だけではなく、我々も当然掃討戦も率先して戦う」
「ならば何ら問題はありません。神使様はこのように仰っています。アンドリュー殿は怖気付いているようなら後方の警戒に専念されてはどうでしょう?」
グレンダ女王から思わず臆病者扱いされたアンドリュー。
「陛下!怖気付いてとは、そのように我々を侮辱なさいますか!」
激高したアンドリューに、グレンダ女王は動じずに涼しい顔で応じる。
「我等戦兎族は北の大精霊様のお告げに従ってこの地へ来ました。我等の使命は神使様と森の民を北の精霊樹まで導くもの。神使様がサラクーダ市の市民達を解放するというのなら、市民達も森の民。ならば我等も神使様と共に戦うのみです。市内の掃討など神使様方と我等で十分。誰も貴公に無理強いはしていません。好きになされば良いのでは?」
そう言い切ったグレンダ女王の言葉で大食堂内にピリピリとした空気が漂う。グレンダ女王とアンドリューはまさに一触即発、とはなっていない。女王はアンドリューの抗議などどこ吹く風といった感じで、両者間は対立にすらなっていなかった。これが一種族を率いる"王"と一部隊長との格の違いという物なのだろう。
グレンダ女王に追い詰められたアンドリュー・フォークナーだが、ヒステリーでも起こすかと思いきや、ぐぬぬと悔しげに唸るのみだった。まあ、こうなったからには双方譲る事は無いだろう。
"リュータ、何とかしなさいよ"
司会のエーリカから俺に現状を打開するよう念話が送られる。勿論、俺だって最初からそのつもりだ。
俺はエーリカに視線を向けると、それに気付いてこっちを向いたエーリカに俺に任せろとばかりにウィンクを送る。
「御二方、よろしいか?ここではない向こうの世界、俺達の国日本にはこんな言葉がある。それは"戦いは数だよ、兄貴"という物だ」
しーん。静まり返る食堂内。そして俺の側から向けられるしら〜とした視線。誰の視線か丸わかりだが、気にしないで続けよう。
「先程説明したように、本作戦はサラクーダ市の占領を目的とはしていない。アンドリューが言ったように、現実的に七百人に満たないこの戦力ではそれは無理だろう。しかし、サラクーダ市民達の解放とプラントモンスター等の一掃ならばこの戦力でも可能だ。いくら強い魔法が使えても、陸戦、市街戦では戦いはやはり数なのだ」
俺はここで一旦言葉を切り、一度深く息を吸ってから言葉を続ける。
「だが、有難い事に北の大精霊の導きにより、ここにこうして戦兎族、そして有志連合軍の戦士達が来援してくれている。これは果たして偶然なのか?」
「俺はこの世界の皆さんに神使と思われているようだが、確かに元の世界で俺は二柱の神々から加護を賜り、神託によって魔物と戦っていた。今回、我々がこうして集っているのも、きっと二つの世界の神々の思し召しによるものに違いない。そして、我々の戦いは北の精霊樹へ森の民を導くという神意を成し遂げるための、謂わば聖戦なのだ」
静まり返っていた大食堂内は、いつしか人々が発する熱気を帯びた静かな興奮に包まれていた。
「神の加護は我等と共に有り続ける!アンドリュー・フォークナー、ここに君がいるという事は神の思し召し、君は神に選ばれた戦士だ。共に戦ってくれないか?」
俺の言葉に大きく目を見開き、俺を見つめアンドリュー。
「俺が、神に選ばれた戦士…」
もう一押しだ。
「そうだ。君だけじゃない。ここにいる全ての者が神に選ばれた神の戦士だ!」
するとアンドリューは素早く俺の両手を己の両手で力強く握り締めるや、興奮して口を開いた。
「やりましょう、神使様。この聖なる戦いを!」
「ああ、戦おう!」
おおぉー!
大食堂の内外から獣人の、人狼の、エルフの、ドワーフの、ヒトの、世界も異なり、種族も異なる多くの者達の思いが一つとなり、雄叫びとなって溢れ出る。
そして、俺の両手を握りしめるアンドリューの両手にグレンダ女王の手がそっと添えられた。
「男だけで盛り上がるものじゃありません。私も混ぜて下さいな」
結果的に参戦を渋る有志連合軍をグレンダ女王と俺が上手く乗せた形となったが、ここに俺達と戦兎族と有志連合軍による三者同盟が無事に成立したのだった。
そしてこの後、妹や恋人達からはリュータ凄いねと褒められ、囃し立てられたが、斉藤から「ハーレムキングにしてアジキングだな」と言われて喧嘩になりそうになり、周りのみんなから止められたのは、また別の話。
いつも『救国の魔法修行者』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。
それじゃあ次話で、ふふん、また会おうぜ!!




