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第119話 神使同盟②

ケリィ「やあみんな、戦兎族のケリィよ」

ユリィ「やあみんな、同じくユリィです」


ケリィ「ユリィ、早速私達にオープニングの出番が来たわね」

ユリィ「でもケリィ、張り切ってやり過ぎないでよ?私達ただでさえ任務は完璧に達成させるけど、必ず大騒動になるって睨まれてるんだから!」


ケリィ「あによ!私のせい?ユリィだってやらかすじゃない!」

ユリィ「ま、まぁ、それはさて置き、あの男は何かムカついたわね。女の子何人も侍らせちゃってさ?」


ケリィ「そんな事言って、ちょっとは気になってんじゃない?」

ユリィ「はあ?そんな事ある訳無いじゃない。それより決めゼリフ行くわよ、せーの!」


ケリィ・ユリィ「「それでは『救国の魔法修行者』スタート!」」


ケリィ (フフン、私はタケダが気になるのよね)

翌日、オッピス街道をパレンナ宿場街へと上って来る戦兎族を、俺達は街の入口で迎える準備をして待つ。


準備といっても儀仗なんて無いし、俺達は野戦服のままこちらへ転移しているので正装も無い。せめてそれらしく、という事で獣人達と人狼達から抽出した20人に武田少尉と大沢軍曹が挙手の敬礼と最低限の停止間動作を叩き込んで体裁を整えた。


果たして、戦兎族の先払いが来てから間も無く、女王陛下率いる戦兎族の本隊到着が告げられた。パレンナ宿場街の街道下り入口には、街道の両側に獣人と人狼から成るニワカで手ぶらな儀仗兵が10人ずつ分かれて整列。左右それぞれの嚮導は山本少尉と合衆国海兵達を代表してオスカーが務めている。


「気をー付けー!」


儀仗隊の指揮を執る武田少尉の号令で、左右それぞれの儀仗隊は直立不動の姿勢となり、女王の到着を待った。


徐々に近づく戦兎族の隊列。おそらく隊列の周囲には警戒の野伏が多数配置されているはずだ。4列縦隊のその隊列先頭を屈強な男の槍兵が占め、その後に弓兵が続く。そして隊列中央部分に剣を携えた女戦士達の親兵に囲まれて騎乗する女王の姿が見えた。


「エルム大森林にその強さ響たる、戦兎族を統べる偉大なる女王、グレンダ陛下ごとぉ〜ちゃ〜く!」


初夏の陽射しの中、静まり返ったオッピス街道に戦兎族の先払い(男)による女王の到着を告げる朗々とした掛け声が響いた。きっと大名行列ってこんな感じだったんだろうなと思いつつ、俺はエーリカ、サキ、アーニャ、ギュンターを従えて街の入口に立つ。


戦兎族の隊列が左右に分かれ、下馬した女王が従者と共にこちらへと歩み寄る。女王は少し長身で均整の取れた肢体、戦士の女王らしくしなやかに、それでいて力強く歩む。その肢体には装飾の施された革鎧を着装して緋色のマントを纏い、金色三日月が意匠された兜を冠る。その(かんばせ)は頬当てのためにしかとは見えないものの、切長の目に紫の瞳が俺を見据えていた。


女王が立ち止まったタイミングで武田少尉の号令がかかる。


「戦兎族グレンダ女王陛下にぃ、敬礼!」


我々の儀仗隊は一斉に挙手の敬礼をなし、着帽している俺も正面に至っている女王陛下へ挙手の敬礼。エーリカ達は無帽なので深々と頭を垂れて最敬礼。


まあ、儀典的には色々と違うのだろうけど、曖昧な知識の付け焼き刃な礼式ですいませんってところだ。わかりゃしないだろうけど。


「遠路遥々、ようこそいらっしゃいました。自分はこの集団を率いるヒジカタ・リュータと申します。女王陛下のご到着を心から歓迎いたします」


俺達の出迎えにグレンダ女王は鷹揚に頷くと、徐に兜と頬当てを外すと従者に渡した。


「ヒジカタ・リュータ様、わざわざのお出迎え、かたじけなく存じます。戦兎族を統べるグレンダと申します」


女王はそう名乗ると俺達に頭を下げた。


正直、女戦士の王と聞いていたので、ゴツいオラオラ系のアマゾネスの女王っぽいのを想像していたのだが、三つ編みにした金髪にうさ耳も美しい、白磁のような白い肌に切長の両目は睫毛も長く、アメジストのような瞳が輝いている。細面にスッと伸びた鼻梁と口角の上がった形の良い唇。グレンダ女王は王族だけに実に品と威厳がいい具合に備わった、それはそれは美しいお姉さんであった。


内心そのように考えていると、後ろの三人からかなりのプレッシャーを感じるが、ここで振り向いたら負けさ。第一、俺は何もしていないし、何も言っていない。


俺はグレンダ女王と戦兎族の隊列を今や俺達の根拠地となっているパレンナ宿場街へと促した。



昼となってグレンダ女王を招いての昼食会を開催し、とは勿論ならない。何と言ってもそれだけの食材が無い。むしろ戦兎族の昼食に招いて欲しいくらいだ。どんな食文化か知りたいので。


午後になると、有志連合軍サラクーダ派遣隊がパレンナ宿場街に到着した。俺はアーニャを伴い、昨日到着した先遣隊のアナントさんと共にサラクーダ派遣隊を出迎えた。


サラクーダ派遣隊は約3百人であるが、その内の百人は輜重兵や工兵などの補助部隊であるため、二百人程の歩兵が戦力の中心となる。派遣隊を率いる指揮官はヒト族の青年で、長身金髪碧眼でなかなかの美男子だ。


「有志連合軍サラクーダ派遣隊のアンドリュー・フォークナーです。あなたが神使様ですか?宜しくお願いします」


アンドリューは騎乗していた馬から降りると、明るく闊達さを感じさせる声で、そう挨拶した。


アンドリューについては、昨日、事前にアナントさんから身分、出身、為人などを教えてもらっている。なんでも、元々フォークナー家はアースラ大陸と海を隔てた西の大陸にあるシャンプール帝国の伯爵家だったそうで、彼の親の代に政争に敗れて没落し、エルム大森林へ亡命して来たのだそうだ。


その後、親分肌のアルベルトさんがフォークナー家を客分として自領に保護していたとか。


そしてアンドリューはというと、フォークナー家の三男で、現在23歳。本人は西大陸への捲土重来などには見切りをつけ、キャストン侯爵家の騎士として実直に働き、アルベルトさんからも信頼されて領軍の一隊を任されていた。魔王国軍の電撃戦でも野戦軍主力の壊滅に巻き込まれず、上手く手勢をまとめて魔王国軍の追撃を振り切ったというなかなか優秀な軍人らしい。


だが、アルベルトさんの庇護を受け、キャストン侯爵領の領都で暮らしていたとか、俺にはもう嫌な予感しかしないのだが。案の定、アンドリューは俺の横にいるアーニャに気づくと、信じられないといった表情となり、


「アーニャ、生きていたんだね!」


アーニャは感極まったようにそう言うと、足早にアーニャに迫る。そのままアーニャに抱きつく勢いだったが、寸前でヒラリとアーニャに避けられてしまう。


「アンドリュー兄さんもご健在で何よりです。大精霊様のご加護で兄バローニ、妹ターニャと共に異世界に転移されたお陰で助かりました。向こうの世界で父も生き残った兵達も元気でやっています」


アンドリューはアーニャに避けられ、淡々と現況報告されて一瞬拍子抜けしたような表情になったが、すぐに体裁を整えた。その辺はなかなかやるな、といった感じではあった。


「侯爵様もバローニもターニャもご無事なのか。それは良かった。北の大精霊様に感謝を」


両手を組んで目を瞑って感謝の祈りを捧げるアンドリューだが、素早く俺に視線を走らせるとアーニャに尋ねる。


「それで、アーニャだけこっちの世界にいるのはどうして?それに、何故神使様と一緒にいるんだ?」


そう訊かれ、一瞬嫌そうな表情をするアーニャ。


「私はこちらの神使様であるリュータ、様と父との連絡役としてリュータ、様に同行しています」


「えっ、連絡役だって?それじゃあ、」


「えぇ、私はリュータ、様の恋人で婚約もしてます」


そう言ってドヤ顔で左手を見せるアーニャ。その薬指には以前せがまれて通販で購入した銀の指輪がキラリと光っている。


どうでもいいのだけど、アーニャは俺の事はいつも名前で呼んでいるからか、"様"を付けるのに抵抗でもあるのだろうか?名前の後に一拍置いてから様を付けるんだよね。


どよーん、とあからさまなショックの表情を浮かべるアンドリュー。だが、部下の目がある事を弁えて欲しい。アーニャに避けられた事よりも取り繕え無い程ショックだったのだろうか?部隊長がそんな顔していると士気に関わるぞ。


「神使様、アーニャの事、宜しくお願いします。大事にしてやってください」


ここで俺は一瞬アンドリューから「お前からアーニャを取り戻す!決闘だ!」とか挑まれるのかと身構えたのだが、本人は呆気なく身を引き、且つ(勝手に)託されてしまった。


「あー、それは任せてくれ。何というか、元気出そうぜ?」


「…はい。ありがとうございます」


マイナスオーラを出しつつも健気にそう応えるアンドリュー。俺は彼にちょっと好感を抱いた。エーリカの弟ビクトルからは「絶対に認めない」なんて言われたし、戦兎族の二人からはいきなり突っかかられるし、それらに比べたら彼は何という好青年なんだろう。


その後、傷心のアンドリューと彼の率いる有志連合軍サラクーダ派遣隊をパレンナ宿場街の彼等の宿舎となる建物に案内し、夕食後は俺達と戦兎族、有志連合軍サラクーダ派遣隊とによる三者会談を行う事となっている。




いつも『救国の魔法修行者』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。


それでは次話「神使同盟③」をお楽しみに。


ときめきの物語(うた)、銀河に響け!

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