第118話 神使同盟①
竜太「やあみんな、3日振り。土方竜太だ。今回も読者の皆様からのお悩みに応えたいと思います。ペンネーム アッペオッペヘッペさんのお悩み」
「『救魔』の皆さん、はじめまして。僕は高三男子です。僕にはどうしても入学したい大学があります。そのため寝る間も惜しんで色々なお呪いや御百度参り、加持祈祷など一生懸命していますが、それでも不安なので大学入試に合格する魔法を教えて下さい」
竜太「勉強しろ、勉強を!という事で『救国の魔法修行者』スタート!」
サラクーダ市を攻略する。駐留する魔王国軍を撃滅し、プラントモンスターと角型寄生体を魔術師ごと焼き払い、吸血鬼とアンデッドを滅ぼすのだ。
俺としてはそれらを一々やっていては面倒くさ、いや、大変なのでサラクーダ市ごと焼き払ってそれらを一挙にやってしまいたい。それが本当に出来たら簡単でいいのだが、無辜の市民や反魔王派とされた魔族達がいるからそうもいかない。それに、
(ギュンターと約束したしな)
パレンナ宿場街の周囲は黒狼族により堀を穿ち土塁を築くなどの築城工事の真っ最中だ。俺が工事の指揮を取るギュンターを目で追うと、俺の視線に気付いたのか、俺と目が合ったギュンターは恥ずかしそうにはに噛んで俯き、そしてすぐに工事現場に視線を戻した。
(世界が異なろうが、種族が違おうが、男と男の約束だ)
(…でもギュンターって、ちょっと可愛いよな)
築城工事と並行して、パレンナ宿場街では建物の応急修理も進めている。戦兎族の女王を迎え、戦兎族と有志連合軍の将兵を収容しなくてはならないからだ。
果たしてどれくらいの人数が合流するのか。戦兎族のケリィとユリィによれば、女王が率いる戦力は三百人ほどだという事だ。因みにそれは戦兎族の全戦力の1/5程らしい。有志連合軍の部隊に至っては全く不明。まあ、そもそも有志連合軍自体にどれほどの戦力があるのかも知らない訳だが。
しかし、人の手が入らなくて荒れてはいるが、一つの街が丸々"空き家"になっているのだ。かなりの人数だって収容出来る建物を確保している。武器はゾンビやアンデッドが戦場に遺棄していったブツを回収した。問題は食糧だ。
パレンナ宿場街には意外な程の日持ちがする食糧が備蓄されていた。元々が非常用の備蓄食糧だったようで、保存状態は極めて良好。俺達の集団でなら一ヶ月くらいは余裕で食い繋げそうではあるのだが、戦兎族と有志連合軍が合流し、彼等の分も賄うとなればすぐに消費し尽くしてしまいそうだった。
ここに来て、またしても食い物の心配やら調達やらの心配をしなくてはならなくなってしまった。
「先輩、そう心配しなくても大丈夫そうですよ?」
俺が暗い表情でもしていたからか、舞がそう言って俺を励ました。
「何か当てがあるのか?」
「まあ、当てと言いますか、さっきザックさんとも話したのですけど、サラクーダ市の備蓄食糧は殆ど手付かずのようなんです」
舞によれば、本来消費するはずだった市民や避難民がアンデッドにされたり、プラントモンスターの餌にされてしまってその数をかなり減らしてしまったため、市の備蓄食糧や生活物資が相当量残っているだろう、という事だった。
「だからそれを頂いてしまいましょうよ?」
舞は鼻息も荒くそう言うと、右腕をぐっと曲げてガッツポーズをして見せた。
舞とトッドと山本少尉には臨時に集団の主計を担当して貰っている。舞の実家は食料品の卸業を営んでいて、本人曰く「家族経営に毛が生えた程度」だそうで、それ故に高校生の頃から経理や仕入れなどの事務を手伝っていたという。山本少尉はそもそもが駐屯地で経理担当だったそうであり、トッドは米国務省の役人且つ弁護士資格もあるという事なので、彼等のそうしたキャリアや経験を重視しての適材適所だ。
舞はそう言ったが、大汗かいてサラクーダ市を攻略してみたらとっくに魔王国軍が接収していて倉庫は空っぽでしたとか十分あり得そうだしな。
「それは期待しつつも、有ったらいいなくらいに思っておくよ」
とはいえ、俺が余計な事に気を回し過ぎないように、舞はサラクーダ市の備蓄食糧について言ってくれたのだろう。
「有難うな、舞」
と、俺は舞に感謝を伝えて体を抱き寄せた。舞はちょっと拗ねていたようだったが、それで機嫌を直してくれ、鼻歌まじりに仕事へ戻って行った。
「そっちの世界のヒト族の女って、随分とチョロいのね」
舞を見送っていると、俺に何か用が有るのか、いつの間にか大食堂に来ていた戦兎族のユリィが、周囲に聞こえないように小声で俺に言った。
「美人なのに口が悪いな。戦兎族ってそうなのかい?」
「そんな事ないわ。ただ、やたら女を侍らせている男が気に食わないだけよ」
何故か絡まれてしまっている。先程魔法で脅しあげた事を根に持っているのだろうか。
「侍らせているつもりはないよ。それに獣人や魔族は強い者に従うって聞いたけど?」
「強い者って自分の事言ってるの?そういう自惚れたところもちょっとね」
何言っても駄目そうだな。嫌われたものだ。
「まあ、別に君らから好かれようとは思ってないから、どう思われようと構わないけどね。ただ、俺の恋人達を侮辱するなら黙ってない」
何故か悔しそうにユリィは俺を睨む。だが、このままでは話が進まないので、用件を促す事にする。
「で、何か用が有るんだろ?」
ユリィは俺を睨むも、用向きを果たさなければならないからか、用件を切り出した。
「明日の午前中には女王陛下率いる本隊が到着するわ。あなた、リーダーなのでしょう?無礼の無いように出迎えてよね」
そう言うや、ユリィは俺の返事も聞かずにプイッと横を向いてしまった。ユリィの横には彼女を追って来たケリィが来ている。俺が救いを求めてケリィに視線を送ると、苦笑して肩を竦められた。処置無しってところか。
「女王陛下の到着の件は了解した。こちらの儀典で構わないなら誠意を尽くして迎えさせて頂くよ」
「それで構わないわ。あたしらの女王様は堅苦しいのは嫌いだし。あたしらにしたってヒト族みたいに決まった儀典なんて物も無いしね」
ケリィはあっけらかんとそう言った。要は礼を失しなければいいらしい。
餅は餅屋に任せるのが良い。主計を山本少尉に任せたように、こうした事は武田少尉と大沢軍曹に任せてある。
"武田少尉、ちょっと来てくれ"
俺が念話で武田少尉を呼ぶと、少しして武田少尉が外からホテルの大食堂にやって来た。
「お呼びでしょうか、中尉?」
俺は明日の午前中に戦兎族の女王率いる部隊が到着する旨を武田少尉に伝え、ケリィとユリィと打ち合わせて準備に取り掛かるよう頼んだ。
「日本国国防陸軍の武田少尉です。以後、この件では自分が担当となりますので宜しくお願いします。」
「宜しく、タケダ。あたしは戦兎族のケリィよ。こっちは相棒のユリィ。」
何かこの赤毛の兎さん、俺の時と大分対応が違うんだけど。しかも、何気に武田少尉を品定めするよいに見てるし。
そうこうしている内に、今度は有志連合軍の先遣隊がパレンナ宿場街に到着したと報告があった。早速武田少尉と何故か一緒に着いて来たケリィとユリィと共に街道上の宿場街入口へ急ぐ。
到着した有志連合軍先遣隊の人数は15人だから、分隊といったところか。隊長は虎獣人で若者で、野性味ありつつもしっかりした感じの好青年だ。
「有志連合軍サラクーダ派遣隊のアナントと申します。あなたが異世界からの神使様でいらっしゃいますか?」
やはり、俺は有志連合軍でもそうなっているようか。だが、自分で自分の事を神使だとか言うのも痛いというか、何だかなって感じだ。
「そうです、と言うのも烏滸がましいのですが。土方竜太です。この集団を率いています」
うん。嫌味も腹の探り合いも無くて、アナントはサッパリしていい奴だ。
アナントとの話し合いはサクサク進み、明日の午後にも到着予定の有志連合軍サラクーダ派遣隊は三百人。歩兵中心の兵力で、その他工兵や騎兵も含み、斥候である先遣隊と合わせて混合大隊といった感じか。
こちらも戦兎族ほど大仰ではなくてもキッチリと出迎えなければならない。
街道上の遣り取りを終え、俺は指揮所になっているホテルの大食堂に戻った。一人大きく息を吐いてからソファーに腰掛けると、
「頑張ってね、神使様?」
エーリカが後ろから抱きつき、頬を寄せて耳元で揶揄うように言った。ふぅ、と耳に息を吹きかけられてくすぐったかったが、それで妙にやる気を出すあたり、俺も実はチョロい奴なのかもしれない。
いつも『救国の魔法修行者』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。
それでは次話「神使同盟②」にご期待下さい。
最初に言っておく。次話もかーなーり面白い!




