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第117話 サキの戦い

竜太「やあみんな、二日振り。土方竜太だ」

雪枝「やあみんな、土方雪枝です」


雪枝「ねえお兄ちゃん、害特封地に一般の人が入るにはどうしたらいいのかな?」

竜太「管轄する国防省が発行する許可証が必要だな」

雪枝「許可証?ふ〜ん、通行手形みたいなものか」

竜太「…」


雪枝「封地内に住んでる人は居ないの?」

竜太「神州解放戦線という組織が魔物と戦っているよ」

雪枝「へぇ、埼玉解放戦線とか埼玉デュークみたいな?」

竜太「…妹よ、「翔んで埼玉」から離れようか。それでは『救国の魔法修行者』スタートだ!」


雪枝「丸広百貨店の屋上遊園。もう一度行きたかったな…」

俺の自己紹介を兼ねた挨拶に対する戦兎族女戦士達の返事は実に素っ気ないものだった。別に何を期待していた訳ではないが。


「それはどうもご丁寧に。あたしが戦兎族のケリィ、そっちはユリィ」


赤毛の女戦士が清々しいほどのタメ口で名乗ると、もう一人の女戦士ユリィが、一応、立場上、仕方無くという感じでケリィを嗜めた。


「ダメよケリィ、そんな言い方しちゃあ。一応その方は神使なのよ?」


一応って、いや俺はこの世界では神使という立ち位置になるのか。


「そうだけどさぁ、朝っぱらから年端も行かない狼獣人の少女と戯れてるような奴が神使と言われてもねぇ」


「年端も行かない狼獣人の少女と朝からイチャついてる人を神使と認めたくないケリィの気持ちはわかるけど?年端も行かない狼獣人の少女の甘い匂いを体からプンプン匂わせてる男が」


「いい加減にしてください!」


全く酷い言われようだぜ。戦兎族二人のふざけた言い様に怒りに拳を握りしめて体を震わせていたサキが、遂にブチ切れてしまった。


「何なんですか、さっきからあなた達は。人の事を年端も行かないって何回も。私はもう15歳で成人しているんです。それに私とリュータはこ、恋人同士なんです。朝からイチャイチャしたっていいじゃないですか!少なくとも部外者の年増にとやかく言われる筋合いはありません!」


今までなら大人しく真面目なサキが人前で啖呵を着るなんて事は無かったが、今朝の体験がサキを大胆にさせたのだろうか?


「ほぉ〜、言うねえお嬢ちゃん」


思わぬサキからの攻撃に、面白い獲物を見るように目を細めてニンマリするケリィ。兎が狼を獲物って逆だろと言いたいところだが、この場合はぴったりの表現なのだ。魔法を使えば別だが、この室内のような限られた空間でサキとケリィが格闘となったとしたら、恐らくサキは一撃で沈められてしまうだろう。それくらいの身体能力、格闘能力を戦兎族の女戦士からは感じられるのだ。


まあ、とはいえ、このままでは話が先に進まないので、獣人は強い者に従うと言うから、少しだけ実力行使に及ぶ事とする。


睨み合いを続けるサキとケリィ。だが、徐々に俺が放つ威圧に気付いたようだ。


「!」

「!!」


ピンと張り詰めた食堂内の空気。その中で更に俺は天井辺りに電撃を走らせた。


バリバリバリ


キャッ うわぁ ひっ


空気が張り詰める中、突然の電撃に、食堂のあちこちで様々な悲鳴が上がった。当の二人はというと、サキは俺の後ろに隠れてしまい、ケリィとユリィは抱き合って震えている。まあ、この辺で勘弁してやろう。


俺が威圧を解くと、食堂内の張り詰めていた空気は一気に弛緩し、皆からはどこかホッとした雰囲気が流れる。


「戦兎族のお二人さん。遅れて来た事は謝る。別に俺をどのように思おうが構わないが、課せられた使命があるんだろうから、そこはしっかりやろうぜ」


「「申し訳ありません」」


戦兎族の女戦士ケリィとユリィは片膝を突いて顔を伏せる。どことなく悔しさが感じられたが。


そして喧嘩両成敗の原則で言えば、もう一方の当事者にも何かしら言わないと示しがつかない。


「サキ」


「は、はい!」


俺の恋人の中では一番年少なサキ。俺もまだサキが子供だという意識がなかなか抜けなくて子供扱いしてしまっていた。そして俺とサキは今朝初めてキス(結構濃厚な)をしてサキも自信が着いた。だが、そんな矢先に戦兎族のケリィに揶揄われて恋人である俺を侮辱され、更には自分が子供と馬鹿にされ、俺とサキがした事まで否定されたように感じて激怒したのだろう。


「誰が何と言おうがサキは俺の大事な恋人だ。もっと自信を持て」


「はい。リュータさん、ごめんなさい」


俺の後ろにいるサキを振り向いて見ると、項垂れて耳がへこっとしていた。さっき、ちょっとだけ俺を名前で呼んだけど、またさん付けになってしまったな。



結局、戦兎族のお二人さんは俺の事がお気に召さないようなので、トラブル回避のためこの後は斉藤に任せる事にした。


「では有志連合軍との共闘という事だが、昨日の今日では流石に時間的な違和感がある。そういった事も含めて説明して欲しい」


ケリィとユリィの間では役割があるのか、対外的な事はケリィが担当らしく、斉藤に求められて説明を始めた。


「今から半月程前の事でした。我々戦兎族の女王グレンダ様が北の大精霊様からお告げを受けたのです


北の大精霊とは、北の精霊樹に宿る大精霊の事だ。エルム大森林で正三角形を形作る3本の精霊樹は、中央山地を中心に北、東、西にそれぞれ存在している。中でも北の精霊樹は正三角形の頂点に位置する事から、東や西の精霊樹よりも格上とされているそうだ。その北の大精霊から女王にお告げがあったと。


「それで、どんなお告げだったのですか?」


「はい、それはサラクーダ市の近くに異界からの神使がこの森の民を率いて現れる。その神使と共に森の民を北の精霊樹へと導け、というものでした」


北の大精霊からのご招待という事だが、そうなると、その前にどうしてもやらなければならない事がある。


「リュウ、聞いての通りだ」


斉藤からは「で、どうするんだ?」という視線が向けられる。


俺はサラクーダ市のプラントモンスターがモンスターアタックにおける魔物の供給源となっている可能性が高い事と、例の角型寄生体が俺達の世界に持ち込まれた場合の危険性を説明した。そして北の精霊樹へ行くならば、その前に俺達の背後を脅かすサラクーダ市を攻略してプラントモンスターと角型寄生体を一掃し、市民達を解放しなければならないと訴えた。


そうして一同を見渡すと、皆一様に頷いた。異論は無いようだった。


「リュータ様、黒狼族は死力を尽くします!」


「リュータ殿、市民解放のため是非我々も陣に加えて頂きたい。市の抵抗組織と連絡が取れれば内部蜂起も可能です」


ギュンターは感極まったように、ザックは市民解放を目指して興奮気味に協力を申し出た。


「ギュンター、頼むぞ。ザックさんの参陣も有難い。だが、内部蜂起は情報漏れの恐れがあるから外部からの力攻めで魔王国軍を倒して市民を解放しよう」


「はい!」

「わかりました」


今の遣り取りを聞いた斉藤は、戦兎族のケリィとユリィに更に尋ねた。


「こちらの方針は聞いての通りだ。北の精霊樹へ行く事は承知した。だが、その前にサラクーダ市を落さなければならない」


「問題ありません。我等が女王は戦兎族の精鋭を率いて神使、様を迎えるべくこちらへ向かって来ています。また、有志連合軍からも部隊が派遣されています。そちらも間も無くこの宿場街に到着するでしょう」


「それはこの街に来る戦兎族と有志連合軍は我々を迎えに来るものと考えていいのかな?」


「その通りです」


「サラクーダ市攻略にも協力するものと考えていいのかな?」


「お告げでは神使と森の民を北の精霊樹へ導けとあり、女王はサラクーダ市の市民も森の民であると解釈しています。女王は神使、様に人数を馳走すると申しておりました。有志連合軍にもその旨伝えてあるので派遣部隊はサラクーダ市攻略にも参加するでしょう」


戦兎族と有志連合軍の戦力は現時点では不明だが、結構な人数の歩兵を確保できたと考えていいだろう。俺達の強威力魔法でサラクーダ市を破壊する事は出来ても、結局市を制圧し占領するのは歩兵なのだ。これでサラクーダ市攻略は随分と容易になった。


しかし、さっきから聞いていれば、この赤毛の兎は「神使」と「様」の間をわざと開けやがって。そりゃあ俺だって様って柄じゃないが、こうも露骨にやられると腹が立つ。全く面倒臭い連中だが、一緒に戦うとか大丈夫なのかな?




いつも『救国の魔法修行者』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。


それでは次話「神使同盟①」をお楽しみに。



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