第115話 はじめてのチュウ(血塗れ)
竜太「やあみんな、土方竜太だ」
エーリカ「やあみんな、エーリカ・バル・サバールよ。ねえ、リュータ、今度オオタキ地区にプールが
出来るんでしょう?私にはどんな水着が似合うとおもう?」
竜太「ビキニとパレオとかどうかな?」
エーリカ「そうね。じゃあ色は?」
竜太「そりゃあ勿論、パレオはエメラルドさ。という訳で『救国の魔法修行者』スタートだ!」
エーリカ「じゃあリュータ、買ってね?」
リュータ「モチのロンだ。通販でね」
何も疚しい事はしていない。族長の息子として父親不在の黒狼族を一人で背負わなければならなかったギュンター。その責任の重さにあの時のギュンターは耐えられなくなっていた。そう説明してサキも理解してくれた訳だが。
サキと俺が出会ってから既に三年余、サキと俺は常に一緒に居たと言っても過言ではない。俺の秘書官を自認するサキは一緒に行動し、身の回りの世話から、エーリカには出来ない獣人達との仲介など、献身的に尽くしてくれている。
サキは俺といる時はいつも笑顔を見せてくれ、俺はとても感謝しているし、彼女を信頼して、愛しく思っているのだ。
潰れそうになっていたギュンターを励まし、なぐさめ、力になると約束した事には何ら疚しい事は無い。だが、結果的にサキの笑顔を奪ってしまった。
俺は腰掛けていたベッドの縁から立ち上がると、俺に背中を向けるサキを後ろから抱きしめた。何か喧嘩した彼女を抱きしめて有耶無耶に誤魔化す狡い彼氏みたいだが、そうする事しか俺には思い浮かばなかったのだ。
するとサキは俺の腕の中でくるりと正面を向いた。そして黙って俺をベッドに座らせると、そのまま俺にのしかかって押し倒し、俺の右肩に噛み付いたのだ。
それは甘噛みなどでは決してなく、サキの犬歯は強い痛みを伴って俺の皮膚を食い破った。
「ウゥゥ、ガウゥ」
獣じみた唸り声と共に、サキは俺にのしかかったまま右肩を噛み続ける。俺はサキから害意を全く感じなかったので、痛くはあったがサキの成すがままに任せた。
いつも明るく、控えめで優しく、献身的でいて時には激しく、可愛いサキ。そんなサキのこのような一面に驚いたが、このように噛み付くほど俺を想ってくれている事にサキへの狂おしいほどの愛しさを覚えた。
サキの匂い、温もり、細くも柔らかな身体と重さ。肩の痛みすら愛おしく思える。
俺はサキを抱きしめている腕に力を込める。
「サキ、愛してる」
するとサキは気持ちが落ち着いたのか、右肩から口を離した。そして、まだ幼さが少し残る美しい顔は頬と唇が俺の血で汚れ、興奮から醒めて上気した表情でぼーっとサキは俺を見て下ろしていた。
俺はその血塗れの表情に堪らなくなり、そのまま一回転してサキをベッドに押し倒し、血に染まった唇に口づけた。
サキはいきなりのキスに驚いたのか、一瞬ビクッと身を硬くしたものの、すぐに俺の背中に両手を回し、俺の唇に吸い付く様に応じた。
「んんんっ」
唇を塞がれたサキから喘ぐ様な息が漏れる。俺とサキは互いの唇をむさぼり、やがてどちらからともなく舌を絡ませて唾液を啜ると、血の味だったキスは次第に唾液の甘さへと変わっていった。
そしてどれくらいの時間が経ったのか、唇を離した俺達は暫くお互い見つめ合って、もう一度抱き合った。
「リュータさん」
サキが俺を呼ぶ。
「うん?」
「リュータは私の、です」
血が出るほど強く噛み付き血塗れの濃厚なキスと抱擁を交わしてからの所有宣言とか、サキの意外なヤンデレな面に驚くも、サキが俺の恋人であるように、俺はサキの恋人だ。なので俺に否はない。
「そうだよ。俺はサキのだよ」
俺の返事にサキは満足そうに、嬉しそうに俺を抱き締める腕に力を込めた。
サキの身体を離したくはなかったが、いつまでもこうしたままではいられない。これから皆が待っている食堂へ行かなければならないのだ。そして問題となるのは、サキが噛み付いた傷口から出た血で汚れた俺達の服。このまま食堂へ行けば皆驚くだろうし、一体何事があったのか問い詰められるのは必定だ。
今から服を洗う訳にも出来ず、ラノベにあるような清浄化の魔法なんてものも無い。どうしようかと一瞬悩んだが、アポーツで血液の汚れを"取寄せ"てみると、俺の目論見は成功して俺とサキの服に染み込んだ血液の汚れは俺の手の中に"取寄せ"られたのだった。
そんなこんなしている間にも事態は動いていた。俺とサキが食堂へ行くと、斉藤の「遅いぞ!」という咎めるような一言に迎えられた。すまんと謝っていると、気がつけばそこには見知らぬ2人の兎獣人の若い女性が居た。どうやら外部から良い知らせか悪い知らせか、あるいは両方か、が俺達の元に齎されたようだった。
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次回『救国の魔法修行者』「ラブリーラビットエンジェル」が君を呼んでいる。




