第110話 カントリー娘と呼ばないで
舞「やあみんな、北川舞です。今回は私が読者様からの恋愛相談にお答えしたいと思います。なんで私なんだろ (ぼそっ)」
「『救魔』の皆さん、初めまして。23歳OLのペンネーム鮪川鯛子です。先日、飲み会の帰り課長から「君の事が好きだ」と告白されました。課長は仕事も出来て部下を守る男気のある渋いナイスミドルです。とても素敵な方で私も憧れていて嬉しかったのですが、課長には奥様と娘さんが二人います。私はどうすればいいでしょうか?」
舞「ペンネーム鮪川鯛子さん、その課長は妻子あるにも関わらず女性の部下に手を出そうとする最低な男です。不倫になるので絶対にやめましょう。と、答えが出たところで、『救国の魔法修行者』スタートです!」
舞「え?先輩も色んな子を恋人にしてるだろって、それ全然違いますから!一緒にしないで下さい」
サラクーダ市のネクロマンサーである吸血鬼にどれ程の技量があるのか?それは俺にはわからないが、第二波攻撃でアンデッド戦士に隊列を組ませなかったのはそうした戦法だったのか、それとも、単にそこまで操れる能力が無かっただけだったのだろうか?
だが、もしそのネクロマンサーがアンデット戦士に隊列を組ませたならば、アンデット戦士の武装を考えるとかなりの脅威となったはずだ。1000体からのゾンビを前面に押し立て、その後ろから槍と盾を持たせた3000体からのアンデット戦士の重歩兵を古代ギリシアのファランクスよろしく密集させれば、俺と斉藤がやったような広範囲に及ぶ強威力な攻撃魔法がなければ今のメンバーでも最終的には逃げ出す羽目になっていただろう。
まあ、穿った考えをすれば、だからこそ密集させずにバラバラで攻めたのかもしれない。が、それはそのネクロマンサーを取っ捕まえて吐かせなければわからない事だ。
「リュウ、この後どうする?このままサラクーダ市に攻め込むか?」
斉藤の言う通り、このまま攻め込めばサラクーダ市は案外簡単に落ちるかもしれない。だがしかし、俺達はアンデットではなく、食事と休養を必要とする生身の身体だ。それに、俺達はサラクーダ市内の地理も何も知らないのだ。なんとなくでも知っているのは何度かサラクーダ市に行った事のあるアーニャ達くらいなもので、残念ながらエーリカもサキも他の獣人達もエルム大森林でも田舎の出身なので、当然知らないだろう。
「イテテテテッ⁈」
と、俺は両上腕三頭筋の辺りに抓られたような痛みを覚えた。痛みは一瞬だったが、振り向くとプンスカ怒ったエーリカとサキが立っていた。
「何するんだよ、結構痛かったぞ?」
俺が抗議しても二人は怒ったままだ。
「リュータ、今私達の事、田舎者って思ったでしよ!」
「リュータさん、そういうのってわかるんですよ?」
何故か俺の思考が読まれてしまったようだ。だが、ここは俺の名誉のために抗議しよう。
「いや、田舎者だなんて思ってないよ。田舎の出身だって思っただけで」
「「一緒です!」」
旗色が悪くなった俺は斉藤にも振ってみた。
「タケ、お前はわかったか?」
「お前がアーニャ達を見て、次いでエーリカ達を見たあたりで、まあ、何となくな」
斉藤はバツが悪そうにそう言った。
何というわかりやすい奴なんだろか、俺は。中学高校時代の俺は敵対者からは冷酷魔王と呼ばれてポーカーフェイスで通っていたのだが。
「ごめん、いや、ごめんなさい。別に田舎って悪い意味じゃなくて、都会の絵具に染まってなくて良いというか、スレてないっていうか。それに俺だって埼玉の田舎者だからさ、一緒だよ?」
我ながらキレの悪い言い訳ではある。しかし何も言わないよりはマシだ。
「ぷっ、ダサイタマ」
誰だ、今それを言った奴は!埼玉を馬鹿にしていいのは埼玉県民だけだぞ。そう言えば大沢軍曹、君は千葉の出身だったな?後で話し合いが必要だな。
「ねえリュータ、じゃあ私達はスレてるって事?私達だってサラクーダ市なんて2、3回行っただけなんだけど?」
ここで思わぬ伏兵、アーニャが参戦した。勘弁して欲しい。事態の収束が覚束なくなってきた。
「いや、アーニャ達はアーニャ達で凄く可愛いよ。洗練されているというかさ」
「そっ、そう?」
「ねぇ、それじゃあ私達は洗練されてないって事なの?」
「エーリカもサキもミアも美人で可愛いよ。お洒落で、センスもいいしさ」
「「本当?」」
結局俺はただ今後の計画について考え事をしていた際に「田舎出身」というワードを口にも出さず、思っただけであったにも関わらず、関係各位に全力で謝り、誉め上げて機嫌を取るハメになったのだった。
「で、どうするんだ?この後は」
フンスと怒る恋人達の機嫌がどうにか良くなったところで、斉藤が最初の質問に戻って尋ねる。
「このまま突入なんて勿論無しだ。今日は昨日の宿場町まで戻って休もう。ザック達に訊きたい事も色々とあるしな」
「それがいいだろうな」
この日は二時間にも及ぶ激戦だっただけに無理はせず、明日以降に備えて戦略的撤退する事に決めた。
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それでは次話「斯くして豹は斯く語りき①」に向かって、全速前進、宜候!




