第109話 アナザーワールドウォーZ②
竜太「やあみんな、4日ぶり。土方竜太だ」
エーリカ「やあみんな、久しぶり。エーリカ・バル・サバールよ」
竜太「ところでエーリカ、向こうの世界にはエーリカ達森エルフの他にどんなエルフがいるんだ?」
エーリカ「そうね、山岳地帯に住むダークエルフとか、草原に住むグラスランナーとか、海沿いに住む海エルフとかね」
竜太「へぇ、ダークエルフもいるんだ。ちょっと会ってみたいもんだな」
エーリカ「リュータが会う必要なんか無いわ!とっとと『救国の魔法修行者』スタートしなさい!」
竜太「どうしたの?そんなキレ気味に」
エーリカ「どうしても!(リュータにあんなエロい連中を合わす訳無いじゃない)」
第一波のアンデットは、まあ見るからにゾンビで、攻めて来たその数は1000人くらいだった。そいつらは遠距離からの魔法攻撃で全滅した訳だけど、続く第二波の連中はまたちょっと毛色が違うようだった。
「リュータ教官、今度の寄せ手はさっきと違い鎧を着て完全武装してます。騎乗した騎士も見られ、足取りもしっかりしています。だけど、やっぱり生きている者ではなさそうですね」
フレデリカが千里眼で見た敵情を報告する。武田少尉と山本少尉が双眼鏡で観察した敵情と合わせて考えると、第二波の敵はこんな感じた。
・完全武装した上で足取りも確かであり、単なるゾンビとは違う戦えるアンデットである模様
・隊列は組んでいない
・後方からの魔法や矢などの飛び道具による遠距離攻撃をする部隊は伴っていない
・第二波の戦力は3000人程
う〜ん、こっちは100人足らずだというのに、その30倍の敵を相手にしないといけないとは。俺も黒髪の魔術師ではあるけれど、そんな30倍の敵を寡兵で打ち破るような智謀は無いな。まあ、持てる戦力でセオリー通りにやるだけではあるが。
「竜太、どうやら第一波は威力偵察だったようね」
真琴の分析には俺も同感だ。敵はゾンビを繰り出してこちらの戦力を計り、戦力を逐次投入する事無く、こちらに大兵力をぶつけて来たという訳だ。
「油断する事無く当たろう。あれを潰せば次は無いだろうからね」
「そうね、おそらくは」
アーニャによると、サラクーダ市の人口は約8万人だという。そこにエルム大森林各地からの避難民が加わって10万人程か。ザックが言ったように、どれはどの市民達がアンデットにされ、人体実験に供されたのかは不明だが、駐留する魔王国軍が少ないため、都市の防衛にはアンデットを使わねばならない。市の自衛軍は五個大隊だったというから、都市の防衛に必要なアンデット(3000人程)残し、更にアンデットの中から俺達に差し向けるアンデットを抽出すれば、事実上第二波で送り出したアンデットで最後だろう。まあ、異世界の吸血鬼にこちらの常識が通用するかどうかはわからないが。
「土方中尉、第二波が来ます!」
ウオオォォという不気味に力が籠っていない不気味な雄叫び声を上げてアンデットどもが突撃を始めた。
「遠距離魔法攻撃、始め!」
先程の第一波の攻撃と同じく、迫り来る敵に様々な属性からなる魔法攻撃が加えられる。ただ、第一波のゾンビと違って今度のアンデットは動きが早く、それなりの自己判断力があるようで、俺達もノロノロ動く標的を七面鳥よろしく狙い撃ちにするようにはいかない。
「撃ち漏らしが来るぞ。近接戦闘、かかれ!」
おお!と、こちらは気合い十分な雄叫びを上げ、獣人達と人狼達が前面に躍り出て白兵戦が始まった。
鎧を纏い、剣や槍を携える西洋チックな武装のアンデット戦士ども。彼等はヒトとしては既に死んでいるので疲れも恐れも知らない。それに対し、迎え撃つこちらの近接戦闘員は軽装に剣(人狼達も剣を携行している)という装備で、人数も60人ほどだ。だが、獣人達は皆俺が自ら魔法も剣も格闘術も教え鍛えた一騎当千の精鋭達だ。そして人狼達は何と言っても人狼なのだ。数で劣っても、質で十二分に勝っている。
アンデット戦士はゾンビと違いなかなか俊敏で力も強い。だが、元が一般の市民や近郊の農民だったらしく、その戦い振りは雑の一言に尽きる。
アンデット戦士が長剣を振りかぶり、ガラ空きとなった胴をラミッドが刀で払い上下に両断した。アミッドも兄に負けじと二体のアンデット戦士の首をはねた。ガーライル達狼四人組とアーニャ率いる猫娘達は、それぞれ二人一組となって堅実に絶妙なコンビネーションでアンデット戦士を屠っていった。
そして人狼達は、こちらの側面を突こうと迂回して来たアンデット戦士の別集団を瞬く間に血祭りに上げていった。残念ながらアンデットだから血は出なかったようだが。
「者共、ここが我等黒狼族の力の見せ所だぞ。一体たりともアンデットを近づけるな!」
バールがここぞとばかりに声を張り上げて人狼達を鼓舞している。それに呼応する人狼達の働きは抜群だ。
俺も雷丸を抜き放ち、前面に立って遠距離魔法攻撃を擦り抜けて突撃して来るアンデット戦士の一群を斬撃を放って斬り伏せた。
と、その時、真琴から念話で魔力補充のため遠距離魔法攻撃を一時的に止めると伝えられた。そちらの指揮は真琴に任せてある。
果たして、遠距離魔法攻撃が一斉に止むと、真琴の指揮により武田少尉、山本少尉、大沢軍曹、トッドとミアが前面立ち、中距離魔法攻撃を開始する。
武田少尉と大沢軍曹は火炎放射で近づくアンデット戦士を次々と燃やしつつ、その接近を阻止。足が止まったアンデット戦士を山本少尉、トッド、ミアが風刃で首を跳ね、胴を薙ぎ、四肢を斬り落としていく。
「エレクトリックファイヤー!」
俺もアンデット戦士の接近を阻止すべく技を繰り出す。
俺の左腕から地面に放たれた電撃は、複数に枝分れしてアンデット戦士を標的として捉えると、地面を走って一挙に7体ものアンデット戦士の身体を強い電圧で焼き尽くした。黒焦げとなったアンデット戦士の身体はぶすぶすと燻り、煙を上げて横たわる。
更に中距離魔法攻撃組に人狼の護衛を付けて前進させ、合わせて近接戦闘組も前進させて中距離魔法攻撃組が撃ち漏らした残敵の掃討に当たらせた。
そうしている間に長距離魔法攻撃組の魔力補充が終わったようで、戦闘に復帰可能と真琴から念話で知らせが入る。
ここで俺は中距離魔法攻撃組をそのまま前面に留め、長距離魔法攻撃組を前進させて両者を合流させる。そして魔法攻撃組を互いにやや距離を空けた一列横隊に再編成し、近接戦闘組を護衛に配置。
「このまま魔法攻撃を加えながら前進して残敵を半包囲しろ!」
この俺達の陣形に対し、残存するアンデット戦士どもは中央突破を図るのか、正面に集結し始めた。その数1000というところか。
バラバラに攻めて来た敵が集結するのであれば、一気に纏めて殲滅するチャンスだ。
「リュウ、久しぶりにアレやるか?」
斉藤も同じ考えのようだ。
「やるか!」
全員を後方に下げて、俺と斉藤は吸気術で大気中の気(=魔素)を吸収し、魔力操作で体内で大量の魔力に変換すると、斉藤が風魔法で強力な竜巻を発生させる。そして俺が火魔法で作り出した火炎を竜巻が巻き上げて巨大な炎の竜巻となった。
「火炎!」
「旋風!」
これぞ二人で一つの合わせ技「火炎旋風」だ。
轟音を上げて巨大に成長した火炎旋風を前に、集結したアンデット戦士どもは逃げ出せもせず、次々と火炎旋風に飲み込まれて炎を纏う竜巻の中で燃やし尽くされていった。
火炎旋風が通り過ぎた跡には何も残らず、アンデット戦士どもは全滅したようだった。
俺はこのまま火炎旋風をラムサラクーダ市に突っ込ませて焼き払ってもいいかなと一瞬思ったが、市内にはまだ市民や避難民、連行されて来た魔族達がいる。俺と斉藤は吸血鬼どもへの挑発と警告を兼ねてサラクーダ市の寸前まで火炎旋風を進ませてから消滅させた。
こうして、サラクーダ市のアンデットとの戦いは終わり、俺達は約2時間ほどの戦闘で4000体に及ぶアンデットを全滅させた。こちらには被害は無く、正にパーフェクトゲームだった。
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