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第104話 街道をゆく

竜太「やあみんな、2日振り。土方竜太だ」

畠山「やあみんな、ご無沙汰。禰宜の畠山です」

竜太「畠山さんには雪枝がお世話になってます」

畠山「優秀なんで教え甲斐があるよ」

竜太「畠山さんはうちの師匠と飲み友達とか。何か面白いエピソードとかありますか?」

畠山「前に飲んだ時に旨いつまみがあったんで「これ、食うかい?」って勧めたら、酒吹き出しおったよ。ハッハッハ」

竜太「…ちょっとよく笑いのポイントがわかりませんが、『救国の魔法修行者』スタートです!」


畠山「兄さんの方は笑いのセンスを教えなければな」

オッピス街道というのは、アーニャによればサラクーダ市の第三代市議会議長(大商人)が今から約150年前に自らの私財を投じて作ったものらしい。


これによって中央山地を迂回する事無く、少々山間部は傾斜があるものの、エルム大森林の東部地域からサラクーダ市までより短時間でより大量な物流が可能になったのだという。


道普請をしたのが財のある公職者であり、更には私財を投じているなど、サラクーダ市が古代ローマに似ていなくも無い。その市議会議長さんとやらも名前はオッピスとかオッピウスとかなんじゃないだろうか。


街道の路面はサラクーダ市や街道に繋がる小都市などに近づくと石畳の立派な造りとなるらしい。だが、今俺達が歩いている部分は土を突き固めただけとなっている。とはいえ、路面は凸凹が少なく、道幅の中央から左右に緩やかな傾斜がなされて水捌けも良い。そして道幅は馬車が擦れ違う程の広さがあって、とても歩き易く出来ている。


街道を進むにつれて気付いたが、この地域はエルム大森林と名付いているが、どこもかしこも森林かというとそうでもない。エルム大森林でも比較的人口が多く、開発が進んだ西側の地域は畑と森が入り混じっている。エーリカによれば、これは聖霊樹の大精霊との約束で、辺り一面の木を伐採しての開墾は禁じられていて、必ず森を残さなければならないのだそうだ。


野営地のキャラバンサライを出発し、オッピス街道を進む俺達の道程は何ら妨げるものは無く、順調に進んでいる。辺りに魔物や魔王国軍の気配も感じられない。サラクーダ市の方からの馬車や旅人などと出会う事も無い。今は畑は農閑期なのか、畑には全く鍬が入っていないようで草が伸び放題。因みに今の季節は初夏だ。


「なあアーニャ、野営地からサラクーダ市までってどのくらいで到着するんだ?」


「ん〜、馬車だと2日、徒歩だと4日くらいかな」


「この街道ってこんなに閑散としてるの?」


「いいえ、市からここまでの距離ならもっと往来が多いはずだから、少し変ね」


う〜ん、やっぱりアーニャもそう思っていたか。


一応、斥候にガーライル達狼四人衆を出しているが、今までのところ何ら異常は報告されていない。そして、更に一時間程進むと斥候の一人、狼四人衆のライルが報告のため戻って来た。俺は小休止を命じると、ライルに飲み物を渡してライルが落ち着いてから報告を聞いた。


「この先に村があるのですが、住民は一人もいなくて家畜もいませんでした。家屋も家財道具もそのまま残っています。何というか、日常の中から村人だけが居なくなって村が放棄されている感じです」


「争ったり、略奪したような形跡は?」


「見た限りありませんでしたが、村中に草が生い茂っていて、細かな痕跡はとてもわかりませんでした」


人だけがいなくなった村、誰も通らない街道か。俺はライルを労って下がらせると、小休止を終えると共にその村に向けて再び歩みを進めた。


暫く歩いてその村に着くと、そこには当然村人Aさんなどいるわけもなく、斥候で先行していたガーライル達が待機していた。彼等はライルを連絡に出した後、三人で更に村の調査をしたそうだ。それによると、


・やはり村人は誰もいない

・争った形跡は無く、死体も見られ無い

・家財道具はそのまま手付かずに残っている

・村中草が伸び放題、人が入った形跡も無い

・畑も耕作されてなく、草がぼうぼう


との事だった。



確かに村も畑も草木が伸び放題。初夏の爽やかな風に吹かれて、辺りは草木の騒めきと鳥や虫の鳴く音しか聞こえない。初夏の陽射しの中、村は静かに朽ちて自然に帰ろうとしていた。


「どう思う、エーリカ?」


ん〜と首を傾げて考えるエーリカ。実に可愛い。


「魔王国軍を恐れて逃げた、とか?」


うん、まあそうだよな。エルム大森林は国際的に認められた中立地帯であったのに魔王国軍からの侵略を受けていた。アーニャのキャストン自治領(もっと北の方)もアルベルトさんが領都を放棄して領民をサラクーダ市へ逃したくらいだから、その可能性もある。


「でも、逃げるにしても手ぶらは無いんじゃないか?」


オスカーがそう言って会話に加わる。これも然りだ。魔王国軍から逃げるにしても、村人達が再び村に戻る事が出来る保障は無い。現代の日本では災害で家を失っても食糧や生活物資が支給されるが、この世界は違う。村という生活基盤の全てを捨てて避難するのだから、出来るだけの食糧や財産を持って逃げようというのが人情だ。着の身着のまま逃げても、その先に待っているのは緩慢な死であろう。


「となると、誰かに連行されたって事かしら?」


頤に人差し指を当て、小首を傾げるフレデリカも可愛い。いやいや、今はそうじゃなくって、その線が近いかもしれないな。


「まあ、いずれにしても、まだこの村だけじゃ情報としては不十分だ。もっと情報を集めてから結論は出した方がいいだろう」


斉藤がそう締めくくって、一旦この場はお開きとなる。確かに人の往来の無い街道と誰もいない村人だけではサラクーダ市を考える上での情報としては実に少ない。なので、今日はこのままこの村に留まり村内や周辺の調査に努める事としよう。


取り敢えず、邪魔な草木を皆で手分けして風刃、水刃で刈る。そうしていると風通しも見通しも良くなって、どうにか往時の村の姿が偲べるようになった。


黒狼族には村周辺の調査と晩ご飯用の狩りに出てもらい、残った全員で村の家屋を調べて使えそうな物を拝借した。


最も大きな家は村長宅で、地図数枚と村長に日記を手に入れた。もっとも、日記は俺では全く読めないのでアーニャと猫娘達に読み進めて貰った。


そして分かった事は、魔王国軍の侵攻があっても村としては村を放棄してまで逃げようとは考えていなかった、という事だった。村長の日記は村の公式日誌でもある。村長は魔王国軍の侵攻に憤りはしていたものの、どこか他人事のように考えていて、戦争は俺達庶民にはあんまり関係無いね、といった事が書かれていた、らしい。


日記の最後の頁が記された翌日、一体この村に何が起こったのであろうか?


結局、村人達が消えた理由は魔王国軍の侵攻が関係しているのであろうという予想は出来たものの、それ以外は分からず、翌朝にはサラクーダ市へ向けて出発した。


因みに、その日の晩ご飯は人狼達が狩って来た鹿肉がメインで、村の家々から徴発した調味料や小麦、大麦を使った鹿肉入りの粥も作った。汁物が好きな俺としては肉食べ放題よりも実は嬉しかったりした。

いつも『救国の魔法修行者』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。


それでは次話「弁慶と牛若丸」にご期待下さい。


神秘!冒険!勇気!それは魔法



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