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第102話 異世界、ここはイイ世界?②

竜太「やあみんな、5日振り。土方竜太だ」

ガーライル「やあみんな、ガーライルです」

竜太「ガーライル達、最近夜集まって何やってんだ?」

ガーライル「いや、それは、何というか」


ウルク「おい、ガーライル」

ライル「何やってんだよ」

アイク「ダンスレッスン始めるぞ」


竜太「…ダンスレッスン?」

ウルク、ライル、アイク「「「あっ!」」」


ガーライル「してません、アイドリッシュなデビューなんて目指してません。えーと、それじゃあ『救国の魔法修行者』スタートです!」


竜太「いいんじゃないか、お前らカッコいいんだし」

俺と斉藤がかつて師匠から学んだ錬気道空手。師匠が言っていたように、空手と名が付くものの、それは道場生を募集して収入を得るための方便で、一応空手っぽい格闘術もちゃんと教えて体裁を整えている。然してその実態は気を操る錬気術だ。


錬気術の真髄には大気から気を取り込む吸気法があり、これを極めれば仙人の如く霞を食って生きて行けるという。勿論、俺も斉藤もそんな域には至っていないが、多少なりとも会得しているので、現在は取り込んだ気を魔力操作で魔力に変換すれば一週間くらいは食事を摂らなくても大丈夫。


とは言え、だからと言って腹が減らない訳じゃないし、食欲が失せる訳でもない。


俺が野営と夕食の指示を出すと、ギュンターが狩りに出る許しを求めて来たのでその許可を出した。すると暫くして黒狼族の人狼達が大きな猪と鹿をそれぞれ三頭も狩ってきたのだ。


このような緊急事態下だ。野営での夕食など白湯に携帯食で凌げばいいと考えていたのだが(人狼達にも当然分けるつもり)、人狼達が狩って獲物のお陰で異世界転移第一日目の晩ご飯は、思わぬ焼肉大会となった。


獲物を捌き、解体して切り分ける。薪を集めて火を起こし、豪快に丸焼きにする。これらの作業はヒトもエルフも獣人も人狼も関係無く協力して行った。


そうしてジュウジュウと音を立て、香ばしい匂いを漂わせる大量の鹿肉と猪肉を4つの種族が分け隔てなく分け合って一緒に食べれば、互いに敵同士だった蟠りや不安も薄れたようだ。


「ギュンター、バールさん、黒狼族のみんな、有難うな」


こうしてみんなが多少なりともほのぼのとした気持ちになれたのは人狼達が獲物を狩ってきたお陰だ。


「ええっ!」


「そっ、そんな、御大将自らのお礼を頂けるとは、有り難き幸せに御座います」


俺が獲物の感謝を伝えると、ギュンターとバールは大層驚き、恐縮しつつも感激していた。いや、黒狼族で狩った獲物を分けて貰ったんだ、礼を言って当たり前でしょう。


しかし、こうした時に魔族の間では、上位にある者に獲物を献上しなければならないという事で、ギュンターとしては当然の事をしたのだそう。だから感謝されて驚いたし、上位者(俺の事ね)から直々に礼を述べられて感激した、という訳だった。



野営地とした場所は、転移した森から程なく歩いた街道のキャラバンサライだ。これは本当に運が良かったと思う。100人近い人数が分散せず野営が出来る場所などそうそう無い。しかも、このキャラバンサライには屋根は無いものの、三方を囲んで風を凌げる煉瓦で出来た壁が幾つもあり、テントを持たない人狼達にとっては壁があるだけでも身体への負担はかなり減らせるだろう。


「キャラバンサライが近くにあって良かったですね、リュータさん」


サキがそう言って焚火を前に座る俺にコーヒーの入ったマグカップを手渡す。


「有難う。運が良かったな。なんだかサキのお陰のような気がするよ」


「えー、私何にもしてませんよ?」


サキはそう言いながらも嬉しそうに俺の横に座って身を寄せた。


「何となくだよ」


そう、何となくそのように思う。俺はサキに不運を幸運に変える強運を感じる時がある。だから今回もなんだかんだ治まるように治るような気がするんだ。



そうこうしている内に、焚火の周りにはこの集団の主だったメンバーが集まって来ていた。状況の共有と今後の活動方針を決めるために声を掛けておいたのだ。


「状況は皆が知っての通りだ。魔法研修の長距離偵察の最中に魔王国軍の人狼部隊と接触して交戦、その直後、原因不明なるもこの世界に転移した。そして、この場所はエーリカとガーライル達によればエルム大森林中央山地の西側の麓で、オッピス街道のキャラバンサライ、という事となる」


斉藤が集まった全員に再確認の意味も含めてざっと現況を説明した。


「今のところ元の世界に戻る手立ては不明だ。そこで黒狼族も交えて情報を共有して、今後の方針を決めたい」


と、そこでトッドが発言を求めた。


「状況はわかった。元の世界に戻る方法についてだが、エーリカさんや獣人達は自分達の意思とは関係なく俺達の世界へ転移させられたと聞いている。しかし、人狼達は魔王国軍の部隊として俺達の世界へ転移して来ている。という事は人狼達は世界線を超えて行き来する方法について何か知っているんじゃないだろうか?」


まあ、追々俺もギュンターにそれを尋ねようと思っていた訳だが。


トッドがそのように発言を終えると、全員の視線がギュンターに集まった。みんなに見つめられて一瞬たじろいだギュンターだったが、俺が応えるように視線で促すと、コクリと頷き自分達が異世界に渡った際の出来事を話し始めた。


「黒狼族は父が反逆罪で捕らえられると、部族はバラバラに50人くらいの部隊に分けられて最前線に送られました。僕が率いるこの部隊は魔王国の南側にあるコーカシス王国との南部戦線に配置されていたのですが、突然エルム大森林のサラクーダ市への移動を命じられたのです」


族長が無用な出師に反対しただけで反逆罪となり、部民はバラバラにされて前線送りとは。流石魔王は残酷無比というべきか。


「僕達はサラクーダ市から更にエルム大森林の北側の精霊樹まで移動させられて異世界でプリンツカイネルの麾下に入るよう命じられました。そこには魔王国の魔術師団が築いた巨大な魔法陣があり、その上の空間に開いた穴に入れと言われて。そんな得体の知れない穴に入るなんて恐ろしくて嫌だったのですが、僕達の背後には鬼族の督戦隊がいたので入らざるを得ませんでした。すると異世界に転移していた、という次第です」


「魔王国は世界線を越える装置を開発していたという訳か?」


斉藤が念を押すようにギュンターに尋ねる。


「はい。仕組みは僕にはわかりませんが」


ふむ、と斉藤は考え込む。


「先輩、前にエルム大森林の精霊樹がエーリカさん達を転移させたって言いましたよね?」


「そうだな」


「ギュンターさん達も精霊樹に移動させられているという事は、やっぱり魔王国は異世界への転移に精霊樹を利用しているって事だと私は思います」


舞がそのように自分の考察を述べると、斉藤がそれを引き継いで話を続ける。


「魔王国軍がエルム大森林に侵攻した目的は精霊樹にあったのかもしれないな。異世界転移を可能とするために」


「じゃあ、魔王は最初から俺達の世界を侵略するつもりだったという事か?」


「いや、逆だ。魔王は俺達の世界を侵略するために、この世界で侵略戦争を始めたのかも知れない」


う〜ん、満峰神社の狼の女神様は神託で魔王の目的を俺達の世界の侵略だと言っていた。そのための尖兵として侵略戦争で数多く余った魔物を世界中に送り込んだと。女神様を疑る訳じゃないが、そうすると斉藤と舞の考察とは色々と食い違う部分が出てくる訳だが。


一体、俺達は何処の誰のどんな思惑でこの世界に転移させられたのか。しかし、その思惑の一つが、元の世界では知りようがない魔王の真の目的を探らせる、という事のように俺には思えてならない。







いつも『救国の魔法修行者』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。


それでは次話「異世界、イイ世界?③」をお楽しみに。


キンキンに!ド派手に行くぜ!



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