幕間18 とある女性士官の追憶③
竜太「やあ、みんな、3日ぶり。土方竜太だ。」
エーリカ「やあ、みんな。エーリカ・バル・サバールよ。」
竜太「そういえば、エーリカ。この作者は絵心無いし絵師の知り合いもいないからイラストなんて無いけど、読者のみんなはエーリカをどんな感じに想像すればいいのかな?」
エーリ「:そうね、みんなそれぞれに理想の私を思ってくれて構わないけど、」
竜太「けど?」
エーリカ「『ロードス島戦記』や『ゲート』あたりを参考にして?」
竜太「良かった『エルフの若奥様』じゃなくて。という訳で『救国の魔法修行者』スタートです!」
着陸した大型ヘリから降りた今西大尉率いる特殊部隊は、先に現地入りして避難所の守備に当たっていた強化機動歩兵や工兵隊と合流し、早速避難民のヘリ移送に取りかかった。
災害弱者として予め選別されていた避難民を乗せたヘリが離陸すると、上空で待機していたもう一機のヘリが着陸し、先程と同様に降りた兵員が避難民の誘導を始める。そうした間、私は特にやる事無く、周囲の警戒(する振り)をしながら辺りを見回して時間を潰す。
と、その時、全身が総毛立つような感覚に襲われた。それは何らかの凶事の前触れで、私は腰のホルダー拳銃を抜くと、安全装置を外して身構える。
すると駐屯地を囲む木々の間から何かの群れが飛び出し、避難民へと襲いかかった。それは人型の巨漢に豚の頭部を持つ未確認生物で、情報本部では人型害獣にカテゴライズされる通称オーク。一体どこから現れたのか?群の個体数は正確にはわからないけど100体はいるのではないだろうか。それだけの個体数ならば鳴き声など何らかの音が聞こえるはずだし、上空で待機していたヘリからも群の接近を発見出来たはずだ。しかし、現実としてオークの群は目の前に存在し、避難民に襲いかかっている。
この事態に陸軍の各部隊は直ちに動いていた。ヘリポート防衛の銃座からは重機関銃が射撃を開始し、弾幕によってオークが避難民に近づけないように牽制。そして強化機動歩兵が盾となりヘリへ搭乗する避難民を守る。
だが、オークの群は二手に分かれ、一方が避難所になっている大型テントや神社の宿坊がある方へと向かい始めた。守備隊はヘリポートに集中させてあったため、其方は無防備な状態で実にまずい事態だ。
この時動ける戦力は特殊部隊だけだったけど、例え直ぐに部隊が避難所に向かったとしてもとてもとても間に合わない。このままでは避難所にオークの群が乱入し、ヘリの機内で今西大尉から聞いた各地の避難所で起きた惨劇がここでも起きてしまう。私には何も出来ないけど軍人として目を背ける事は出来ない。無力な私はただぐっと奥歯を噛み締め、これから目の前で起きる惨劇に耐えるしかなかった。
その後に起こった出来事は普通ならとても信じられないような事だった。だけど、その結果として今も私は生きている。避難民には犠牲者が出てしまったけども、そこにいた多くの避難民が無事に救出されたのも、この時に私達を助けに現れた一人の男のお陰だ。
この男がオークの群を倒し、この後に現れたこれもう怪獣でしょってくらいの巨大オークキングをも滅した。勿論、オークを倒したのは彼だけじゃない。守備隊も、彼の仲間達も、御眷属様と呼ばれる神狼もオークを倒している。でも、土方竜太の存在、土方竜太の活躍こそが決定的にあの戦いを制したのだ。
炎を全身に纏い、上空から滑空して放った彼の必殺の蹴り。オークキングはその一撃で周囲にいたオーク共も道連れにして爆砕し、跡形もなく燃え尽きた。まさに圧倒的な力、圧倒的な存在感。
しかし、今西大尉はオークの群が全滅すると、あろう事か彼等を包囲し、拘束しようとしたのだ。勿論、銃口を彼等に向けて。その時初めて彼を間近に見て抱いた思いは、何と表現すればいいのだろうか。彼は抜身の刀のような鋭利さを感じさせる美男子だけど、状況が状況であり、しかも彼は全裸だったから一目惚れとかそういった類の感情は抱かなかった。ただ、「やっと逢えた」という愛しいような、懐かしいような思いが心の奥底から溢れ出して来た、そんな思いだった。
私が彼に会ったのはこれが初めてなのだから、やっと逢えたも何も無いのでだけど。だけど、やっと逢えた喜び、だけど彼の元に行けないもどかしさと切なさで何故か涙が出て止まらない。そして、これが私朝倉真琴自身の感情なのか、そうではないのか、そうした事もよくわからなくなっていた。
こうしている間にも切迫した状況は続いている。泣いている場合ではない。私はポケットからハンドタオルを取り出すと手早く涙を拭う。
確かに今西大尉の考えも理解は出来る。彼は突然現れると、科学なのか魔法なのかよくわからない未知の力でオークを圧倒。見た目は日本人のようだけど、彼の力はとても人間技とは思えない。考えようでは人間に擬態した何かかもしれず、いくらオークの群れを倒して私達を助けてくれたからといって安易に油断する事は出来ない。それに彼の仲間の中には明らかに人間ではないエルフや獣人の少年少女もいる。
双方が睨み合う事態となり、まさに一触即発。だけど、その状況を破ったのはこの神社の宮司さん。流石に神に使える人は一味違うというか、亀の甲より年の功と言うべきか。それでも今西大尉は彼等を信用出来なかったようで、双方の連絡係という名目で、彼等の監視役として私に彼等への同行を命じたのだ。きっと部外者の私が邪魔だったのだろう。
私は今西大尉の部下ではない。だから原則的に私は今西大尉の命令に服する義務は無いのだけど、ここを戦場、今を戦時と捉えるならば、この状況下においては私は今西大尉の指揮下にあるとも言える。これは微妙な解釈になり、私の身に何かあった場合は今西大尉は責任を問われる事になる。
これとは別に私が今西大尉の命令に服さなくてはならない理由がある。それは情報本部員の同行を渋る陸軍側から、同行した情報本部員はその同行する部隊指揮官の指揮下に入るという本部長の一筆が要求されたからだ。従って私は今西大尉の命令に服さなくてはならない訳だった。
だけど、これは私にとっては渡りに船だ。実はこの後どうやって彼とコンタクトを取ろうかと考えていた。この私の内から溢れる気持ちが何なのか、何故彼に会ってそうなったのか、彼の近くにいればわかるのかもしれない。それにこの気持ちには彼と一緒にいたいという願いも確かにあるのだ。この気持ちが私のものなのか、私以外の誰かのものなのかわからない。だけど、この気持ちを見極めてみたい、という思いは確かに私のものだから。
これが私と土方竜太との出会いのエピソードだ。この後、私はやはり竜太に段々と惹かれて行き、遂には彼の恋人の一人となった。両親がこの事を知ったら驚くだろうし、きっといい顔はしないだろう。男に興味の無かった私に恋人が出来たと思ったらそれが年下で、しかも何人もの人やエルフや獣人の恋人がいる相手なのだから。でも両親には悪いけど、私は自分が間違っているとは思っていないし、これからもずっと竜太と一緒にいる自分を信じて疑わない。
えっ?情報部員としての任務はどうしたかって?勿論、私はここで見聞きした魔法や異世界からの転移者達について情報本部に報告。すると私からの情報を重要視した本部からは、同行した部隊から離れて別命あるまで引き続き竜太達と行動を共にして情報収集せよ、との命令が下されたのだ。これは事実上フリーハンドを得たようなもので、誰に憚る事無く大腕を振って竜太と一緒にいられるようになった。
それから三年が経ち、私達はずっと一緒にいる。私は27歳になり、アラサーになった訳だけど、見た目も体力もむしろ二十歳くらいに若返ってしまっている。これは魔力のせいという話で、異世界でも高い魔力を持つ魔法使いは若さを保って長命なのだという。だけどそれだけでは説明出来ない事も多い。高位魔法使いは若さを保つというけれど、私だけじゃなく竜太本人も、竜太の周りのみんなにも同じ傾向があるからだ。まあ、私的にはいつまでも若く綺麗でいられる分には全く構わないけど。
そして最近になり、また不思議な出来事が起きている。竜太がいろいろな人物の夢を見るというのだ。彼の妹の雪枝ちゃんが言うには、竜太が夢に見る人物達は竜太の前世ではないのか、という事だった。竜太は今までに6回も転生を繰り返し、常に日本を守るために戦い続け、7回目の転生の今、異世界からの侵略と人成らざるモノとの戦いに挑んでいる。
7という特別な数、今度の敵は異世界からこの世界の各地に大量魔物を送り、この世界を混乱に陥れたほどの敵だ。竜太がどんなに強くても、流石に竜太だけでは勝てないかも知れない。そんな雪枝ちゃんの仮説を聞いた竜太の恋人である私達は、竜太を守り竜太と共に戦うと誓い合った。
するとどうだろう。翌朝目覚めてみたら私の左手、親指の付け根に星形の黒子が出来ていたのだ。それも私だけじゃなく、雪枝ちゃんも含めた6人全員に。魔物に、異世界に、魔法、そして転生。今更黒子一つで驚きはしない。
ここのところ、私もよく夢を見るようになった。まだ誰にも言ってはいないけど。
それは遥かな古代の日本。一人の英雄のため、彼を愛する若い女性が嵐を鎮めるため自らを犠牲にして船から海に身を投げるというもの。毎晩見る訳じゃないけど、この夢を見て目覚めると涙を流している。これが私の記憶じゃない事は確かだけど、では竜太と同様に私の前世なのか。
この世界は依然としてモンスターアタックにより混沌としている。この先一体何が起こるのか予測もつかず、敵が何者で何を目的としているのかもわからない。それでも、いや、だからこそ私は竜太と共に在り続ける。
育ててくれた両親にはずっと会う事が出来ず申し訳ないけど、必ず平和な世界を取り戻して竜太を私の恋人、私の夫として両親に紹介したい。きっと私の両親も会って話せば竜太を気に入ってくれるはず。それが、私のささやかな夢だったりする。
いつも『救国の魔法修行者』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。
それでは、次話にフェード イン!




