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幕間17 とある女性士官の追憶②

私が両親の実子ではないとお互い認識しても、私達親子の間がギスギスしたり他所他所しくなるような事は無かった。


だけど、それでも私の心には多少の影響はあり、私は進路希望を国立大学から国防大学校へと変更した。まあ、元々どちらにしようかと迷っていたので、この機会に国防大学校に行く決心をした、という感じかな。


進学先の第一志望を国防大学校にした事について、両親は特に反対する事は無かった。母はいつもの調子で「応援してるわよ」、父は「自分で決めたのならしっかりやるんだぞ」と内心はどうあれ励ましてくれた。


受験が終わり、私は国防大学校に無事合格する事が出来た。国防大学校は神奈川県横須賀市にあり、かつての防衛大学校が憲法改正で自衛隊が国防軍となった際に国防大学校となったものだ。全寮制で、私は同室になった竹内優子と気が合って仲良くなった。


唐突に話は変わるけど、私は結構容姿が良い。何自分で言っちゃってるの?とか言われそうだけど。日本人女性としては少し高めの身長で、色白に少しツリ気味で切れ長の目もあって中学高校ではスノーホワイトと呼ばれていた。


そのせいか小学生の頃から男子に告白される事も多かったけど、私は何故か男性にはあまり興味が無かったので、そういうのは正直鬱陶しかった。それもあって中学受験して近所の中高一貫の私立女子中学校に進学している。


女子校では先輩、同級生、後輩問わず女子から告白され、高校で私はバスケ部だったのだけど、マネージャーの同級生と卒業まで付き合ったりした(従妹はそれも気に入らなかったみたい)。だけど私は別に百合って訳じゃない。私の心の中には物心ついた頃から一人の男性が居て、まだ見ぬその男性にいつかは会いたと思っている。それが誰なのか、何でその男性に会いたいのか全くわからないけど。私が男性に興味無いのはその所為だと思っている。


国防大学校はあれこれと忙しかったけど、学業・体力ともに特別困難な事は無かった。四年生になると卒業後の進路を決めなくてはならず、私は迷う事なく陸軍を希望した。何故かと言えば、私はどういう訳か海が嫌いなのだ。泳ぎが苦手でもないし、海を眺めるのも嫌いでは無い。いや、寧ろ好き。でも何故か少しでも荒れた海を見ると恐い、というよりも怒りが湧いて来てしょうがない(一体何に?って話だけど)。それに溺れ死ぬのはもう御免だった。


卒業後は希望通り陸軍に決まり、少尉に任官されて市ヶ谷の国防省情報本部に配属され、そのまま東京の中野にある情報学校へ学生として送られた。思いがけず情報将校となってしまったけど、情報本部では収集された情報の分析や解析が私の仕事となり、様々な演習はあったけど、別に女スパイするような事とかは無かった(ちょっと残念)。


勤務地が新宿となった事で自宅からの通勤となり、両親はとても喜んだ。そして、かつてお盆でやらかして私の実家出禁になっていた従妹は、私の寮生活中に出禁が解除となっていて、私は彼女から長々とした謝罪を受けた。私はもう過ぎた事だからと従妹を赦して私達は和解している。


そんな従妹は大学卒業後、国家公務員試験に合格して警察庁に入庁し、なんとキャリア組の警察官僚になった。そしてお互い情報畑だからか、その後従妹からはちょくちょく連絡が来るようになり、情報交換のため食事をしたり、ちょっとお酒を飲みに行ったりするようになっていた。まあ、情報交換は名目なんだろうけど、従妹が嬉しそうだから良しとする。


そして、モンスターアタックが起こった。その日は土曜日で仕事は休み。私は近所の旧東海道にある老舗の鰻屋に両親と出かけ、利根川の天然うなぎのうな重(松、肝吸い付き)を堪能した。更に日本酒なんかも頂いてしまった。家族で楽しい時間を過ごして帰宅し、さてお風呂でも入ってと思っていると情報本部からの緊急招集がかかった。


私は入浴する間も無く身支度を整える。緊急事態以外の情報は無く、テレビやインターネットでは長野や山梨で大規模テロか暴動か?というニュースが配信されていたけど。


「じゃあお父さん、お母さん、行ってくるね。」

「気をつけるのよ。」

「しっかりな。」


家を出る時に交わしたこの言葉が、両親と私が直接交わした最後の言葉となった。いや、両親は今も現在ですよ?私が現在に至るまで実家に帰れていないってだけで。


情報本部は現地から収集された情報を分析するため掻き集められた人員でごった返していた。


「おっ、早いな朝倉少尉。」


職場の先輩菅生中尉が先着していた。


「お疲れ様です、菅生中尉。状況はどうなのですか?」


「どうもこうも、化け物が暴れてるなんてにわかには信じられんよ。」


当該地域ではとんでもない事が起きているようだった。私も早速仕事に取り掛かると、今日当番だった同僚の来生少尉が声をかけて来た。


「まこっちゃん、いい匂いさせちゃって。くんくん、今夜はうな重に、やや!美少年ですな?」


この娘は嗅覚も鋭いけど、勘も異様に鋭くて、今も見事に私が飲んだ日本酒の銘柄まで当てている。


「キッスー、流石。大当りだよ。」


と、私達はこんな会話を交わしつつもキーボードを叩く手は動かし続けた。


夜間という事もあり今ひとつはっきりしなかった事態も、次第に現地の基地や駐屯地、警察署や消防署、市役所などからの情報も集まり、SNSに上げられた現地の住民達からの書き込みや動画などとも合わせると、朧げながら事態の全容が見えて来た。


一体何処で何が起きたのか?わかった事は、長野県全域、山梨県の甲府盆地を含む北部、埼玉県の秩父地方に未確認生物群が現れ、同地域の住民を襲っているというもの。更にこの事態は世界各地で同時に起こっているようだった。


そして、一夜明けて同地域へ国の総力を挙げた住民の救出活動が開始され、国防軍にも防衛出動命令が下された。と、同時に偵察衛星、偵察機、偵察ドローンなどによる情報収集も本格的に行われ、未確認生物群が人型、昆虫型、巨大な爬虫類型など多種多様なこの世ならざる異様な生物群である事も判明してきた。


情報本部では、今まで収集してきた間接的な情報だけでなく、情報本部員により実際に現地で収集された直接的な情報が必要であるという意見が何処からか出された。それはもっともな意見だと私も思ったけど、では誰がどうやって凶暴な未確認生物群による殺戮が荒れ狂う現地に行くのか?という話になる。


「かつて旧軍ではアジアのみならず、欧州や南米にすら特務機関があり貴重な情報を本国に齎し、帝国陸海軍の軍事活動を容易ならしめたものである。明石機関然り、藤原機関然り、ハルピン機関然りである。この未曾有の国難に際し我々情報本部も本部員自ら現地入りし、内外公私全ての情報機関に先駆けて現地の情報を手に入れなければならないのである。」


これは私達のボス、枝嶋兵八郎情報本部長のビデオ訓示。このスキンヘッドの巨漢は、本来なら省内規定で禁止されている口から顎を覆う髭も恐くて誰も指摘出来ないくらい無茶振りをするど迫力なオヤジで、放っておいたら自分が真っ先に現地入りしてしまそうだ。


勿論、本部長が自ら現地入りする事は出来ず、各部署から抽出された人員が現地に向かう部隊に同行して現地入りする事となった。そして、ウチの部署からは、どのような基準なのか、私が行く事となったのだった。


そうした訳で、実家に戻る事も叶わず、私は急遽用意された装備と僅かな私物を持って、陸軍の特殊部隊に同行して避難所となっている埼玉県の奥秩父にある神社へと情報収集のために行く事となった。


手配された業務車に乗り、市ヶ谷から木更津駐屯地へと向かう。木更津で合流した特殊部隊の中隊長は私というお荷物が増えた事を明らかに嫌がっており、根が正直な人なのか口にこそ出さないものの、実に迷惑そうな顔をしていた。


だけど、この中隊長、今西大尉は一度既に秩父市内の避難所に救助活動に従事していて、尋ねるままにその時の活動内容などについて話してくれた。


そこは小学校であり、避難した住民達は今西大尉の部隊が現着した時には鬼に似た巨大な人型のモンスター(通称オーガ)の群に襲われてほぼ皆殺しにされていたという。オーガは分厚い皮膚と筋肉に覆われていて小銃弾が貫通せず、凄まじい怪力。今西大尉の部隊は三体いたオーガをどうにか全滅させ、大人達によって体育館倉庫に押し込められていた10人の子供達を救出する事が出来たという事だった。


私達を乗せた二機の大型ヘリコプターは、木更津から西へと東京湾を横切って向かう。秩父市上空に差し掛かると、ヘリから見下ろす市街地は火災が起きていたのか、未だそこここから煙が上がっていた。やがて目的地に到着すると、ヘリは山頂に設けられた神社の広い駐車場に着陸し、部隊人員と資器材を降ろす。そして降りた私達と入替に避難民を機内に収容すると、足早に飛び去って行った。







いつも『救国の魔法修行者』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。


それでは次話「とある女性士官の追憶③」にご期待下さい。

マッスルマッスルハッスルハッスルありが特大ホームラン!

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