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幕間16 とある女性士官の追憶①

私が両親の実子ではないとわかったのは中学3年生の時だった。ありきたりな話だけど、家から近い私立中学校に通っていた私は、修学旅行でニュージーランドへ行くためのパスポート申請の際に戸籍謄本を見てしまったのだ。


そこにある「養子」の二文字を見た時は一瞬思考が止まってしまったけど、私は両親と顔立ちが似ていないし、今まで両親はあまり私と親戚を会わせたがらなかった。


(なるほど、だからだったのか)


そう思うとその事実に妙に納得してしまっていた。


とはいえ、私と両親の関係はその後も全く変わらない。両親は私が戸籍謄本を見た事を知らないし、私も見てない事にして今まで通りに振る舞っていたから。


無口で厳しくもあったけど優しい父と、父が無口だからかお喋りでちょっとお節介な美人の母。両親の実子ではなかった事は確かにショックではあったけど、父も母も私に愛情を注いでくれている事は十分に理解していたし、実子だろうが養子だろうがそれは私達家族にとってあまり大きな問題じゃないと思えたのだ。


中学を卒業後、私はそのままエスカレーター式に系列の女子高に進学した。そして2年に進級すると、その女子高に一つ年下の従妹が入学してきた。この従妹は幼い頃から何かと私に絡んできて、何故か私に対抗心を燃やしていたけど、残念な事に私の方が学業、スポーツ共に成績が優っていた。従妹は中学も私が通っていた私立中学校を受験したけど失敗し、そのリベンジ(なの?)で再び私が通っている私立女子高に挑み、今度は無事に入学を果たした。


ところで、私の実家は東京都の品川区にある大洲崎神社という古い神社で、父が宮司をしている。御祭神は日本武尊と弟橘姫。あまり大きな神社ではないので、言ってみれば家族経営。私も初詣や七五三や節分祭、はたまた地鎮祭などではなんちゃって巫女として父の手伝いをした。勿論アルバイト代を貰ってだけど。


両親は長い事子供に恵まれず、私を養子にした後も私の知らない所では親戚と後継者問題で揉めていたらしい。だから両親は私と親戚を、私に余計な事を言わないようにと会わせないようにしていたのだろう。


それは高校2年の夏休み、お盆(神道にもある)で実家の神社に親戚達が集まった時の事だった。こんな時、普段は挨拶だけして奥に引っ込んでいた私だったけど、母と叔母だけでは社務所の座敷で会食をする親戚達への配膳が大変そうだったので、私も腕をまくって手伝いに参じたのだ。


その場には当然ながら例の従妹もいて、私を見つけると早速絡んで来た。私と同じ高校に入学して気を大きくしてしまったのだろうか?そして何が切欠だったのか憶えていないけど、私が相手にしなかったからか従妹は次第に感情を昂らせ、私に罵声を浴びせるようになり、こう言ったのだ。


「なによ、あんたなんか捨て子だったくせに!」


座敷にいた親戚達は従妹の私への絡みをいつもの事と思って嗜める事も諫める事も無く飲み食いしていたけど、その言葉が響いて誰もが沈黙。座敷はシーンとした気まずいお通夜状態となった。


私が両親の実子ではない事は中学の頃から知っていたけど、流石に捨て子だった事は知らなかった。


「えっ、どういう事?」


私は従妹を咎めるでもなく、 


「どうしてあなたがそれを知っているの?」という意味で問いただしたのだけど、従妹の方は糾弾されたっ思ったのかもしれない。流石に自分でも拙い事を言ってしまった意識はあったようだけど、それで余計に激昂してしまったのだ。


「あんたは神社の境内に捨てられていたのよ。それを伯父さんが拾って養子にしたんじゃない!だからあんたは伯父さんとも伯母さんとも血が繋がっていないし、私達とも親戚でもない。なのにちょっと美人で勉強出来るからっていい気になって!あんたが捨て子だってみんな知っているし、みんな言っているわよ、捨て子が神社を継ぐなんて言語道断だってね!」


言ってやったと興奮している従妹から私が視線を座敷にいる親戚達に向けると、皆気まずそうに黙ったまま私から目を逸らした。つまり、まあ、そういう事なのだろう。


すると、騒ぎを聞きつけた両親と叔父さん夫婦が座敷に駆けつけ、叔母が従妹の頬を平手打ちにした。叩かれた従妹は


「何よ!だって本当の事でしょ。お父さんもお母さんも言っていたじゃない!」


と言って泣き喚いた。


私はごめんねごめんねと泣きながら謝る母に抱きしめられ、父は黙って辛そうな悲しそうな顔をして私を見ていた。私は従妹の事などどうでも良かったけど、母を泣かせ、父に辛い思いをさせてしまった事が悲しくて、母に抱きしめられたまま、ただただ涙が止められずにいた。


その後の事はあまり憶えていないけど、夜になって両親から本当の事を聞いた。私は従妹の言ったように神社本殿の賽銭箱の裏に毛布に包まれて捨てられていた事。神社に居着いて半ば外飼いのようになっていた雌猫(もう亡くなっている)が母にニャーニャー鳴いて知らせて発見に至った事。保護しているうちに情が湧き、二人に実子が出来なかったため引き取って養子にした事。人と人との出会いは様々で親子といえどもそれは同じ、私達は血肉分けたる親子ではないけど本当の親子である事などなど。


なので私も正直に話した。


「パスポート申請の時に戸籍謄本見ちゃったから実は知ってたんだ。」


その時の両親は一瞬驚いた表情になったけど、すぐに


「知ってたのか。」

「何よ〜、知ってたの?」


と、拍子抜けしたようになり、私達は顔を見合わせて誰からともなく笑い合った。


確かに私は捨て子で拾われっ子の養子で、遺伝子上の親の事は手掛かりすら無く、全くわからない。それでも私は尊敬する両親から大切に育てて貰い、感謝こそすれ何の不満も無い。だけど、両親もいつかはこの事を私に打ち明けなくてはならないと思っていたようで、奇しくも従妹の暴走のお陰で私達は事実を共有しながらも親子である事を再確認出来たようだった。だからといって従妹に感謝はしないけどね。


神社は別の叔父のところの従兄が継ぐ事になっているので気にする必要は無いと父は言ってくれた。その従兄本人も神職になる事を希望していて、現在は三重県にある大学に在学中という事だった。私はそんな父の言葉に甘えて高校卒業後は国防大学校に進学した。







いつも『救国の魔法修行者』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。


それでは、君達も次話「とある女性士官の追憶②」にアクセス フラッシュ!

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