第90話 魔法、ゲットだぜ!②
☆フレデリカ視点ー
リュータ教官に連れられ、長い急な階段を登って山の中腹にある公園に至った。そこは木々に囲まれた静謐で、この世ならざる雰囲気の空間だった。
公園の中央を貫く煉瓦敷きの歩道、その両側には美形で耳が長く尖ったエルフ達、私と一緒にここへ来た獣人達が左右に分かれて並んでいる。参列しているエルフや獣人達は見た事のない旗を並べ立て、まるで映画のようなファンタジーな世界に迷い込んでしまったかのよう。そして、歩道の奥にある巨石の傍には最もファンタジーな存在、大きく黒々としたドラゴンが蹲り、グルグルと喉を鳴らしている。
リュータ教官がサラマンダーとドラゴンは違うと言っていたけど、こうして見るとそれに同意せざるを得ない。只々凶暴なサラマンダーと違い、目の前のドラゴンには知性が感じられるし、今も私の事を興味あり気に見ている。魔法が使えるようになれば念話でドラゴンと意志の疎通が出来るとリュータ教官が言っていた。昨日、ドラゴンの子供達を見た時は咄嗟にサラマンダーを思い起こしてしまったけど、今となってはドラゴンとお喋りするのが楽しみに思っている私がいる。
初めて見た魔力交流は驚きだった。私と同じ研修生が次々と手から火を吹き出したり、水を噴射させたりと魔法を発現させていった。
そして次は私の番となる。私も心を落ち着かせ、両腕を伸ばしてリュータ教官に差し出した。赤く輝くリュータ教官の両手が私の両手を掴むと、リュータ教官の手から熱いエネルギーが流れて来るのがわかる。これが魔力!
そうしてリュータ教官の魔力が徐々に徐々に私の中に入って来る。体が熱くなる、ドキドキする。そしてリュータ教官が言うように全員に魔力を巡らせるようにすると、更に全身が熱くなった。
「リッキーの体が白く光っている。光属性だ。両手を重ねて手の平を上に向けて頭上に掲げろ。光が手の平から撃ち出すイメージを持って「光よ、出でよ!」と叫べ。」
はい。わかりました、リュータ教官。
「光よ、出でよ!」
私がそう叫ぶと、重ねて空に向けた両手の平から光線が放たれた。光は頭上の太い枝を撃ち抜き、そのまま空高く飛び抜けて行った?
「凄いぞリッキー。よくやったな。」
「はい、リュータ教官。ありがとうございます。」
私は歓声と拍手、ドラゴンの咆哮の中、遂に魔法が発現した喜びと、リュータ教官が頭をポンポンしてくれた嬉しさで泣きそうだった(でも、もう泣かない)。
☆オスカー視点ー
「光よ、出でよ!」
フレデリカがそう叫ぶと、頭上高く掲げた彼女の手の平から光の球が現れたかと思うと、次の瞬間には光線となって空に向かって放射された。
(凄い!)
俺はゴクリと口中の唾を飲み込んだ。あの光線はレーザーのような物なのか。フレデリカから放たれた際に頭上の枝を撃ち抜き、大きな枝が落ちて来た。その枝は一瞬で炎に包まれて消滅して事無きを得たが、おそらくリュータが魔法で燃やしたのだろう。
魔法。本当に凄い、素晴らしい物だ。このように魔法が使えたならば、モンスターと戦っても三年前のように遅れを取るような事はない。むざむざ戦友を失う事は無い。
俺の番となり、差し出した俺の両手をリュータの赤く輝く両手が掴む。その途端、カッと熱くなる俺の両手。それは火で熱せられたような熱さではなく、自分が内から燃えるような、それでいて決して不快でも苦痛でもない、そんな熱さだ。
その熱さは徐々に手から腕、そして体幹へと伝わって行く。そして全身に巡らせてみろ、とのリュータの指示に従うと、全身が熱くなり、特に下腹の臍の辺りでは熱が渦を巻いているような感覚を覚える。
「オスカーも魔力が赤いから火の属性が強い。手の平から火が出るようイメージして「火よ、出でよ!」と叫べ。人に向けないようにだ。」
俺がリュータの指示通りにすると、果たして頭上高く重ねた手の平から直上に向かって火炎放射器のような炎が噴き出た。この力、魔法を遂に手に入れる事が出来た瞬間だった。
「やったなオスカー。凄いじゃないか!」
「ああ、リュータ、ありがとう。」
参列した周りの人々が送る歓声と拍手、ドラゴンの咆哮響く中、俺は友人にして偉大なる魔法の師であるリュータと強く手を握り合った。
☆トッド視点ー
フレデリカ、オスカーと続き、魔力交流をクリアして俺にも魔法が発現した。
リュータは俺の魔力が緑色だったから属性は風なのだと言う。俺は前の二人同様にリュータの指示に従って風を起こすイメージを抱き「風よ吹け!」と叫ぶと、手の平から前方に向かって一迅の疾風が吹いた。
まあ、俺は元々が能力者だ。魔法の発現を疑う事は無かった。そしてその思惑通りに魔法が発現した訳だが、その威力はフレデリカに、オスカーに比べて弱いもうだった。彼等も能力者であり、俺と条件は全く同じであるはずなのに、この差は何故なんだ?
元より研修初日のガイダンスで指導官であるサイトウという男から魔法は発現しても当然個人差が出ると聞いていたが、あの二人は桁違いだった。
まあ、それは良い。取り敢えず最初にして最大の難関は突破したのだ。俺の任務は飽くまで対象エルフ姉妹を祖国へ連れ帰る事であり、魔法使いになる事は副次的なものだ。ならば、ここは気持ちを切り替えて素直に自らの魔法発現を喜ぼう。この新たな力は任務遂行にも大いに役立つ筈だ。
リュータ、お前はなかなかいい奴だ。出来ればもっと違う形の出会だったら良かった。そうすればお前とはいい仲間、いい友人になれたかもしれないからな。だが、今の俺には俺の立場があるんだ。
あの美しいエルフの少女がお前の女である事はなんとなくわかっていたが、これは俺が自由を取り戻すための任務なんだ。俺はお前がくれた魔法をも利用し、お前の女を祖国に売り飛ばす。俺の奪われた自由と引き換えに。悪く思わないでくれ。
いつも『救国の魔法修行者』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。
それでは、次話も読んでくれないと、また暴れちゃうぞ!




