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第85話 イニシエーション

魔法というものは誰でも使えるというものではない。魔法なんて存在しないと暗示がかけられているこの世界の人間は当然使えないし、異世界であってもヒト族や獣人族は皆が皆魔法を使える訳ではないらしい。そのためヒト族は魔法に親和性のある他種族に対抗し、また、誰もが魔法の恩恵に浴せるように魔法を研究するようになったという。獣人族は身体能力に最も秀でた種族であったので、あまり魔法への拘りはないそうだ。


魔法研修を引き受けるに当たり最大の課題が「どのようにすれば研修生に魔法を発現させられるのか」という事だった。俺はエーリカと、斉藤はユーリカと魔力交流を行なってあっけなく魔法が発現して現在に至っている。その後、俺が舞と真琴と雪枝にも魔力交流を施すと彼女達も魔法が発現しているので、その頃は魔力交流すればこの世界の人間でも誰もが魔法使いになれるのだと考えていた。


だが、実際には違っていた。満峰神社の避難民を守るため残っていた特殊部隊員達に求められて俺は彼等に魔力交流を施したが、その中で魔法が発現したのは15人中7人と半分以下の結果となったのだ。もし、魔法研修でこれと同じような結果となれば目も当てられないし、研修生の派遣元からも懐疑の目で見られてしまう。また、魔物や魔王国軍と戦う上で魔法戦闘が出来る魔法能力者は一人でも多く欲しいところだ。


そこで5回目の研修の前に先だち、みんなで魔力交流対策について話し合いを持つ事となった。この件についてああでもない、こうでもないと議論は続いたが有効な案は出なかった。なにせ魔法についてはわからない事が多すぎる。


そして意見も出尽くした感が漂い始めた時、この話し合いを聞きつけて面白そうだからと半ば強引に参加した妹巫女の渋谷香菜さんがしたちょっとした質問が膠着状態を打ち破る結果となった。


香菜さんは俺と斉藤がどのようにエーリカとユーリカに出会い、二人のエルフからどのようにして魔法が発現したかという事に興味を示し、俺と斉藤がその経緯を話すと「じゃあ、それを再現すればいいんじゃないですか?」と提案したのだ。


香菜さんが言うには、俺と斉藤はこの世界の人間で初めて魔法に接し、且つ初めて異世界の魔法を修得した者という事になる。ならば、その時の俺と斉藤の一連の行動を分析し、そこから魔法発現に関係有りそうな部分を抽出して再構成する。そしてそれを魔力交流に組み込んでみたら効果があるのではないか?という事だった。


「それだ!」


香菜さんの提案に斉藤が激しく反応した。


「香菜さん、君は天才だ。」

「いやぁ、それ程でもないですよぉ。」


俺は初めて誰かを絶賛する斉藤を見た。


モンスターアタックが起こった時、俺と斉藤はまずゴブリンと遭遇し、間も無く戦闘となりゴブリンキングと複数のゴブリンを錬気術後で倒した。その後、まだ生き残っていたゴブリンウォーリア2体と対峙していた時にエーリカとユーリカが光の矢でこの2体を倒した。(接触編)


次いで俺はエーリカと、斉藤はエーリカとそれぞれ魔力交流を行い、魔法が発現した。本来ならば魔力交流とは単に互いに魔力を送り合う行為に他にらない。異世界では上手く魔法を発現させられない子供に対して行うものだそうだ。この世界の人間にも体内に魔力(=気)があるのだが、この魔力交流を異世界の魔法使いから魔力を伝授された、という解釈に置き換える。(発動編)


すると、異世界との接触(視覚的)から魔法発現へ、という一つの流れが出来上がった。では、どうにかしてこの流れを魔力交流に組み込んでみよう、という事となった。


また、時系列的にこの辺りで話し合いに途中参加した権禰宜の黒沢さんから「だったらこの流れを魔力交流に組み込んで魔力交流自体を儀式化したらどうだろうか?異世界っぽい演出にして。」との提案がなされた。要は洗礼のようにすれば良い、と。なるほど「三人寄れば文殊の知恵」、エルム大森林ならば「皆で話せばアブダラーシャの実となる」のことわざの如く、難しい問題は皆で解いた方がより早く解けようといものか。それにしても、第三者からの客観的な意見ってとても大事だね。


そうして魔力交流の儀式化が推し進められた。儀式化については何と言ってもここにはプロの宗教家が何人もいる。更にエーリカ達の祖父であるサバール村前村長のワルターさんにも助言を仰ぎ、エルフ文化と神道の色が濃い儀式化された魔力交流の形式が作り出された。


そして、5回目の研修に先立ち、満峰山に常駐若しくは長期滞在する各省庁からの出向者達から協力者を募って渋谷式新魔力交流の実験を行う事となった。被験者は数名でよかったのだが、魔法使いになれるチャンスと殆どの出向者が我も我もと応募してきた(その中に発案者である香菜さんもいたのは驚いた。魔法が習いたかったら言ってくれればいいのに)。更に噂を聞きつけた宿坊で働く狼獣人達も希望したため、被験者は総勢20名にまで増えたのだった。


渋谷式新魔力交流は、実験してみると被験者の20名全員が魔力交流後に魔法の発現が見られる結果となった。大成功と言えよう。その後、俺は個人的にこの被験者達に魔法を教える事となった。折角魔法が発現したのに実験成功しました、ご協力感謝します、で終わらせたら何か悪いしね。


渋谷式新魔力交流を取り入れた第5回の魔法研修では研修生全員が魔法を発現する事が出来た。勿論、以降の研修でも研修生全員が魔法の発現を見ている。


今日は研修の初日で、午前中は研修生達には研修全体に関するガイダンスを受講してもらい、午後には魔法のデモンストレーションを見学してもらった。明日はいよいよ魔力交流だ。研修生達には満峰神社から少し場所を移動して貰い、県境を越えた山梨県側にある広瀬湖畔のサバール村まで歩いて貰い、サバール村の特設会場で魔力交流を施す予定だ。外国人に魔力交流を施すのは初めてだが、外国人どころか異世界の異種族にも効果があったのだから大丈夫だろう。多分。



いつも『救国の魔法修行者』をご贔屓にして頂き、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、氷菓、感想など宜しくお願いしますす。失礼、噛みました。

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