表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【SQEXノベル大賞受賞】私を殺す攻略対象と、赤い糸でつながっているのですが!?  作者: 新 星緒


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/56

6・3 エメリヒの婚約事情

「あ!」とエメリヒが声をあげた。「この箇所はもしかして」

 赤い糸に関する記述があったのね。

「私にも見せて」とエメリヒに体を寄せる。

 彼の指が押さえているところを見ると、確かに古語で『赤い糸』と書いてある。

 久しぶりの記述発見だわ。


「すごいわ。よく見つけたわね!」

 書物から視線を外して、彼の顔を見上げる。と、思いの外至近距離に彼の顔があった。

 心臓が跳ね上がる。

 菫色の瞳に自分が映っているのが見えるほど、近い。こんな距離はコンラッドとだって経験したことがないわ。


「おふたりさん、なにをしているのかな?」

 からかうような声がして、飛び上がった。

 いつの間にそばに来たのか、アルバンが閲覧机の傍らに立っている。


「お前には関係ない」とエメリヒが一蹴する。

「関係あるさ。ラウラの結婚相手に名乗りを上げているんだからな」

「お断りしたはずです」

「ん――。それじゃ、亡命させてあげられないって言ったよな?」

 エメリヒが私を見る。

「こういう王子がいる国は候補から外すべきだ。無論、亡命なんて必要ない状況にするけどな」


 アルバンとエメリヒで睨み合っている。このふたりも仲が悪いみたい。

 マンガではそんな描写はなかったはずだけど、実際は顔を合わせるたびにいがみ合っている。

 原因はもしかしたら、成績のせいかもしれない。首席・次席・三席は毎回コンラッド・エメリヒ・アルバンだから。


「ラウラ、君はなにを勉強しているんだ?」

 睨むことに飽きたらしいアルバンが、私たちの見ていた書物をのぞき込む。

「ふうん。古い魔法書の写本か」

「そうだ。だがお前には関係のないことだ。邪魔をするな」

「うるさいぞ、次男(・・)


 アルバンが笑顔をエメリヒに向け、エメリヒはむっとした顔で黙り込んだ。


「アルバン。校則を忘れたの?」

『学内では、どのような身分であれ生徒は全員公平』というのが、王立魔法学校唯一の校則なのよね。庶民が尻込みせずに通い、忖度なく授業に全力を注げるようにするためのものだという。


 アルバンはいずれは隣国の王になる身分。

 一方でエメリヒは公爵家の生まれだけど次男で、成人したらほぼ庶民扱いになる。一応『卿』という位が与えられる。だけれど一代限りで、財産分与も法律上は無しとなっている。

 それでも学園内にいる限りは、私たちは公平なのよ。


「覚えているさ」と微笑むアルバン。「俺は事実を思い出させてあげただけだ。エメリヒは婚約者さえみつからない、庶民だってね」

「失礼ね。彼はみつからないのではないわ。守りびとの職務を優先させるために、敢えてそうしているだけよ」

 マンガではそういう設定だったもの。


「素晴らしい言い訳だ」

 そう言ってアルバンは私の髪をすくうと、口づけた。

「幸せになりたければ俺を選べ、ラウラ」

 

 勝手な言葉を言いおいて、アルバンは去った。

 ようやく静けさが戻り、エメリヒの前の書物をのぞきこむ。

「さっきの記述はどこだったかしら」


 あ、待って。さっきもこうしたら彼の顔が近かったのだわ。どうしよう。

 思い出したら、どうしてなのか顔が熱くなってきた。

 でも、このまま書物を見ていれば、問題はない。うん、きっとそうよね。


「アルバンの言葉は事実だ」

「え?」

 思わずエメリヒのほうを向き、またその近さにたじろぐ。けれど、すぐに彼が苦しそうな表情をしていることに気づいた。


「『公爵令息』の身分がなくなるのは心配?」

 エメリヒは「そうじゃない」と首を横に振る。

「婚約者のことだ。俺は父とも兄とも仲が悪い。独立したあと、後ろ盾となってくれることはないだろう。社交界でもそれが知れ渡っているから、俺に縁談は来ない。来ても申し訳ないから断っている」

「私はそんな噂は聞いたことはないわよ」

「お前の周りにいる者たちは、口さがなくないのだろうな」

「でも女の子たちも『カッコいいけれど、守りびとだからナシよね』とは言っているけど、そういう事情は……」


 もしや、守りびとの時点で、結婚や恋愛の対象から除かれていることが原因? そもそも私の周りでは、精霊姫や守り人たちの話題はあまり出ない。たぶん、私を気遣ってくれてのことだと思う。


「心配でも不安でもないからな。誤解するなよ」とエメリヒ。

 でも、今はいつもの険しい表情だけど、さっきは確かに苦しそうだったのだけど。

「見つけたのはここだ」とエメリヒは書物を指さす。「俺が訳をやるから、お前は書き写してくれ」

「……わかったわ」


 答えて紙とペンを取る。視界に入る赤い糸。

 これはもちろん切る。それが目標。エメリヒなんかと繋がっていたくないから。嫌いな相手だもの。



 だけど。

 だけど――。


 どうしてなのか、彼の力になりたいと思ってしまった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ